開拓は辛いよ~生きているだけで有り難いと想え~
土地を買った次の日。
今日から俺は此処を開拓する訳だ。
とりあえずINしてから直ぐに『バケツ』と『小樽』を買ってきた。
所持金が大分寂しい事になってきたが、あえて無視する。
まず最初にやる事だが、鋤で地面を起こす所からだな。
鋤っのは西洋風に言えばスコップだが、スコップと違うとこが『鋤』はスコップのように土を掬う事はしにくい。
ただ地面に突き立てて、踏んで刺して、土を掘り起こすのが役目だ。
「ふん!」
突き立て
「ほい!」
蹴るように踏んで
「そいや!」
手前に引いて掘り起こす
ちなみに、この作業で起こせるのは、大体20~30cm程度だ。
そして荒地のサイズは4反。
つまりは田んぼ4つ分程度の大きさだ。
分かり辛い?
大体63m四方って感じだ。
ちなみに1反31・5m四方な?
大体20cm起こせるとしよう。
端っこまで行くだけで315回同じ事をしなければならない。
しかも1回で終わる訳じゃないのだ。
横も63mである。
つまり、約2万回近くも同じ事を続ける事になるのである。
「・・・・これ終わるか?」
~2時間後~
「はぁはぁ、ぜぃぜぃ。」
未だに土を起こす作業をしています。
つか単調な作業だが、もの凄く重労働なのだ。
まず荒地なので土が堅い。
小学校などのグランドにある踏み固められたトラックのように堅い。
軽く突き立てようとしても刺さりにくい。
次に踏んで起こす時、堅いせいで重いのだ。
しかも丁寧にやらないと鋤から折れそうな手ごたえが返ってくる。
折れたら買わなければならないが、今からの出費は御免被る。
最後にやらなければならない土地の広さ。
2時間フルでやってまだ半分位なのだ。
鍛冶で鍛えたSTRとVITが無かったらと思うとゾッとする。
むしろこれでも早い方なのだ、と思う。
まだまだ先は長い。
井戸から汲んだ水を飲みながら俺は肩を落とすのであった。
~さらに3時間後~
「これで最後じゃぁぁあ!!」
荒地でオッサンが吼えていた。
・・・・まぁ俺の事なんだが。
途中、休憩を挟んで荒地を全て起こしきった。
最後に起こした後、大の字に倒れる俺。
気温は小春日和なのに重労働をしているせいか、暑くなって服を脱いだので上半身がマッパなので、乾いた土が背中に刺さるようだが、今はどうでも良い。
「アメリカ人のフロンティアスピリッツって言葉、舐めてたぜ。」
非常に疲れた。
鍛冶してる時より疲れた。
汗と砂で身体がドロドロだが、眠りに付きそうな程の多幸感がある。
・・・・多分、アドレナリンのせいで興奮してるからだろう。
・・・・・自分がドMじゃないと想いたい。
さて、掘り起こしたら、次の作業。
水撒きだ。
え?最初に撒け?
阿呆か。
堅い荒地に水撒いても表面の方しか吸い込まんわ!
今は土を起こして、中まで吸い込み易くしたのだ。
そしてホースや散水機なんて無いのだ。
バケツで荒地の横に増設した用水路から水を汲み、小樽に移す。
小樽が満杯になったら、担いで荒地に水を流す。
小樽といっても樽自体の重さと、水の重さで40kgはくだらない重さなのだ。
それを担いで荒地に流す。
重労働過ぎるわぁ!!!
奴隷か俺は!?
むしろ映画なんかで見る奴隷より悲惨な事になってるのは気のせいなのか・・・・。
しかも命令されてじゃなく、自分から進んでやってる辺り性質が悪い。
・・・・・・・・・アレ?可笑しいなMじゃない筈なんだが。
そして半分まで水を流した辺りで、俺のスタミナが尽きた。
リアルも数値も。
「・・・・・・・・やべぇ・・・・動けん。」
水を流してたせいで土が泥に変わってるのだ。
本当の意味で泥だらけだが、指1本すらまともに動かしにくい。
「・・・・ステータ・・ス・・・ウィンド・・・・・・ウ」
目の前に現れたステータス画面の健常度の項目を確認する。
スタミナとは別で自動回復が微々たる量、しかも食事や休憩を取らないと回復が始まらないものだ。
その疲労度が残り10%まで落ちているのだ。
0になると『餓死』か『過労死』のペナが発生するような事態なのだが、自分の意志で過労死寸前とか救いようがないぞ。
「・・・・やべぇ・・・ディ・モー・・・・ルトやべぇ。」
こんな時にでもネタが出てくる辺り、まだ余裕自体はある証だろう。
「イン・・・ベン・・トリ」
アイテムインベントリからノロノロと携帯食料を取り出して、齧る。
そして、倒れた時にぶちまけた小樽の水、その小樽に僅かに残った分の水を飲んで、少しだけ寝る事にした。
・・・・・これ現実世界だったら死んだ人扱いだろうな。
そんな事を想いながら。
天道「さぁ皆も後に続け~!!」
一同「ふざけんなやドMが!!」
・・・・多分、こんな感じ




