番外編~とある殺人鬼の話~
なななんと!
日間ランキング213位に乗せてもらえました!!(低いとか言うなw
皆様のおかげです。
本当に有難う御座います。
「くそがぁ!死ねよバケモンが!」
罵声と共に振り下ろされる白刃。
最近の僕にとって、『コレ』は日常茶飯事であり、驚くに値しない。
いや内心では驚いているのかもしれない。
『何故、この人達はこんなにも弱いのだろう?』
僕の運命は生まれた時から決まっていたらしい。
『廃れつつある古武術を伝承する』それが僕に与えられた運命の1つ。
何度も地を転がった。
何度も胃の中身をぶちまけた。
何度も血を吐いた。
何度も地に這い蹲らされた。
何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度もナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモ。
辞めたいと何度想った事か。
死ねば楽になれるのかと何度自問した事か。
気づけば『友』など呼べる人間は無く。
『狂気』のみが傍らにあった。
そんな狂った日々がどれ程続いたか僕は覚えていなかった。
そんなある日、いつも通りの稽古と言う名の拷問の時間は唐突に終わりを告げた。
起こった事は簡単な事だが、あえて簡単に言うなら『売られた』のだ。
さる富豪の一人娘のお付きが欲しい、そんな内容だったか。
そして『彼女』と出合った。
まるで太陽のような笑みを周囲に振りまくお嬢様。
それが僕が仕えることになった女の子。
何時も明るく振舞う癖に、内面は臆病で寂しがりや。
その割りには結構際どい真似もするお転婆な面もある女の子。
彼女との馴れ初めは置いておこう。
実際、彼女と僕の関係は『飼い主』と『犬』だったのだ。
事件は彼女の15歳の誕生日に起こったのだ。
親戚や得意先の重鎮を招いた豪華な誕生日パーティー。
それがテロに巻き込まれた。
地獄
そうとしか言えない惨劇がそこにあった。
銃を乱射する男、死んだ子を抱えるようにして泣き叫ぶ女・事切れた老人の絶望に染まりきった顔
彼女の父親と母親はその惨劇の中で真っ先に狙われたようで、すでに燃えている。
燃やされたのか火が移ったのかは分からないが、僕は『飼い主』を守る事で精一杯だった。
銃を撃ち・ナイフを振り・首を折る。
結果として、奇跡的に僕は『飼い主』を守りきる事に成功した。
代償として、僕の『右腕』と『両脚』はズタボロと言うのが可愛い表現と言えるまで機能が無くなってしまった。
右腕は途中で千切れ飛んでいたから知っていたけど、彼女と僕が『保護』された後、脚も切り取られていたのには驚いた。
何でも、保護される直前に落ちてきた瓦礫に潰されそうになった彼女を押し退けて逃げれずに潰されたとの事だ。
保護された後、1週間近くも眠り続けていたと知った時は流石に驚いたが、出血死寸前の状態の僕の手術を執刀した医師は「これはもう、何で手遅れじゃ無いのか分からないんだが?」と見た瞬間に呟いたという。
自分の身体の有様を見て、僕は『これでお役目御免になちゃったかな?』とか思ったんだけどね?
彼女は僕を見るなり、泣きながら胸を叩いてきた。
逃げようにも両脚が無いし、腕もギブスで固定された左腕しか無いので甘んじて受け入れるしかなかった。
まぁそれでまた死にかけたのは笑い話にしていいのか判断に困るんだけど。
結論として、僕は解雇される事はなかった。
むしろ義足と義手を問答無用で取り付けられ、今でも彼女の一歩後ろを歩んでいる。
話が逸れてしまったね。
まぁ僕の身の上話なんて犬も食わないもの誰も読まないだろうけどね?
そんな彼女が投資したゲーム会社が作ったゲームが『モンスレ(コレ)』なんだけどね?
まぁ敵が弱いのなんのって・・・。
最初は普通にPVPっていうプレイヤー同士の戦いをやれていたんだけどね?
僕は久々に自分の身体を思い通りに動かせる事に感動しすぎていたのかも知れない。
途中から挑戦者が居なくなってしまったのだ。
こっちから挑戦しても受けてくれない。
手加減を忘れていた代償なのだろう。
最終的には、首都へ向かうプレイヤーを殺す『PK』と言われるレッテルを貼り付けられた。
まぁそれ自体は問題ない。
アウトロープレイだろうが、聖人君子プレイだろうが人それぞれプレイスタイルがあるのだし。
問題は手にしているナイフなのだ。
初期装備を貰えなかったので素手でモンスターを狩っていたのだけど、流石にナイフくらいは欲しいと考えて武器屋NPC買ったナイフだ。
基本、武器のステータスという物は『鑑定』『解析』『見識』といったスキルが無ければ見ることが出来ない。
でも切ってみると分かるのだ。
『ナマクラ』だと。
彼女に相談してみた所、プレイヤーメイドの品が最近、少しずつだけど出回り始めているらしい。
とりあえず武器屋NPCの売ってる物よりは良い物が多いそうで、適当に買っても当たりなんだとか。
そのアドバイスを受けてプレイヤーの露天を練り歩いてみてはいるのだけど、中々自分好みのナイフが無い。
確かに切れ味は良いんだろうけど、ただ単に作られただけの作品でしかない物には心が揺さぶられないのだ。
練り歩いていると路地裏から慌てて大通りへ走ってきたという風の人達を見つけた。
「何アレ?街中限定のユニークボスかなんか!?」
「何にせよ、俺達程度じゃ無理だ。」
そんな会話が聞こえてきた。
面白そうだ。
そう思って路地裏に入っていく。
しばらく歩いていると、MAPにプレイヤーの露天のマークが出ていた。
「わざわざこんな辺鄙な所に出さなくても・・・。」
そう思ったけど、ユニークボスの情報知らないかな?と思って見てみると・・・・。
スキンヘッドにタオルを被った中年風の男プレイヤーが居たんだけど・・・・。
笑顔が怖い。
どれくらい怖いかっていうと新種生物を見つけた解剖学者に近い顔をしている。
腹を空かせて獲物を前にした肉食獣でも逃げ出すんじゃないか?そう思う程怖い。
本人はにこやかに笑ってるつもりなんだろうけど、どう見ても獲物(買い物客)を狩ろうとしている店員(肉食獣)である。
どうやらこの位置は死角らしくしばらく見ていたが、惨敗もいいとこであったようだ。
ちょっと面白い人だな。
その時の僕はそうとしか思って居なかったんだ。
あの瞬間までは。
ちなみに、1話としては1番長くなったという。
何で番外編が1番長いんだという苦情やツッコミは却下します^p^




