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「これを読んでいる君へ」

それから何年かの月日が流れたが、神聖学園は相変わらず聖なる地だった。



「あっアーベル!なんか落ちてる」

「なんだコレ?」


まだ幼い少年二人が、学園の僻地で見つけたのはどうやらもう使われていない焼却炉だった。

こんな所に何故こんなものがあるのかと興味深々の子供たちが、無謀にも黒い口を開けた焼却炉に顔をつっこんでみると、白いものがひとつ落ちているのを発見した。

少しだけ茶色く焦げたそれはどうやら封筒のようだ。

長い黒髪の少年が躊躇い無く封を開けた。


「てがみ?」

「うん、手紙。えーと…“これを読んでいる君へ”…だって」

「それっておれたち?おれたちの事?」

「エー…」


赤みがかった茶髪の少年が黒髪の少年の後ろからその手紙を覗きこむ。


「名前は…ディー…タ…かな?」

「全然聞いた事ない名前。エルヴィンは?」

「………」


何故か黒髪の少年は押し黙って首を傾げた。


「あれ?おかしいなー…何処かで聞いた事あるような…喉まで…なんか出そうなのに…」



「人違いじゃない?」

「んー…?」

「で?何書いてあんの?」


エルヴィンと呼ばれた少年は首をかしげながらも文字を目でおった。


「えーと…“もしあなたが道に迷う事があったら、僕に手紙をください。僕もさんざん道に迷ったけど、お話しぐらいは聞けます。手紙は時間も場所も越えて、人に想いを届けます。だからきっと…あなたの言葉は僕に届きます”…って」

「なんじゃそりゃ」

「さぁ…?」


アーベルと呼ばれた茶髪の少年は興味無さそうに空を仰いで伸びをした。


「あー、そういえばまた母さんから手紙返ってきてたんだった。毎回手紙返さないとうるさいんだよなー」

「いいな、アーベルは。ぼくも手紙送りたいのに」

「じゃあエルヴィンが代わりに手紙書いてくれよ」

「そんなんすぐバレるよー。だって月一で手紙送っては返ってくるじゃん」

「面倒くせー…」


それでもエルヴィンは羨ましいと思った。

故郷を知らないエルヴィンは手紙を一度も書いた事が無かったから。



生徒達は皆定期的に故郷に手紙を書いては返事をもらって一喜一憂している。

だからこのディータという人に、手紙を書いてみたいなと少し思ったが、そう言えばアーベルに笑われてしまうかもしれないと思ったから黙っていた。


「時間を超えるってどういう意味かな…」

「さー…言いたい事あるなら直接言えっての。大きくなってもどーせエルヴィンとは一緒だろうしなぁ」

「どーせって言うなよ」

「だって学園入ってからいつもいっしょにいるし…」

「まぁ、そうだけど…」


手紙を見つめながらそれでもきっとそうなんだろうな、とエルヴィンは思った。

未来はわからないが、何故だかアーベル達と道を違った未来は想像できない。

漠然ときっとずっと友達なんだろうな、と感じていた。

空を見上げて手紙の主の事を少しだけ考えながら、早くそんな未来になれば良いのにと思った。




明日になれば、大事な友達の事を全て忘れてしまうのだと言う事を知らずに。

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