第15章 終戦
第15章 終戦
1.
麻生の艦隊改装は、まず阿蘇型重巡の8隻の改装が終わった。 阿蘇型重巡の改装は
主砲の仰角を70度、高角砲の仰角を90度まで上げられるようにする事だけなので他の
戦艦より早めに終わったのであった。 これで主砲を電磁砲に切り替えて飛来する
敵砲弾の迎撃が可能となった。
戦艦は防御力を強化し、長距離誘導ロケット弾と大口径の主砲を搭載することに
なった。
大口径の主砲の搭載は兵器開発コンピュータの『ブレインズ』によるものであった。
主砲設計の折りに麻生は『ブレインズ』のマッドサイエンティストぶりを認識するので
あった。
「101センチ100口径!?」
麻生はすっとんきょうな声を出した。 麻生が驚くのも無理はない。
101センチ100口径ともなると砲身の長さが101mにもなるのである。
「そんな山のような大砲を搭載できるの? 重すぎて砲塔を旋回させたり砲身の仰角を
変えたりできないんじゃないの?」
「私ができないものを提案したことがありますか?」
「う~ん・・・。 確かにできないものは提案しなかったな。」
「作れますし、阿蘇型重巡の主砲と同じように使えます。」
「わ、わかった。 じゃあ作ってみてくれ。」
とはいったものの麻生は半信半疑であった。 実際に戦闘に使用してみてはじめて
その出来映えに舌を巻いたのである。 この時、麻生は『ブレインズ』には大艦巨砲
主義の志向がインプットされているなと感じたのであった。
改装工事の最中は伊400型潜水艦が大西洋のUボート狩りを行っていた。
とくに、キール等の有力な海軍基地の近海に潜み、帰投または出撃するUボートを
血祭りに上げていた。
ドイツ海軍も黙ってはいなかったが、独駆逐艦の性能ではスクリュー音を持たず、
各種電波,音波を吸収する伊400型潜水艦を発見することは出来なかった。
逆に雷撃で撃沈されるという被害が続出し、Uボートどころかほとんどの船舶が港から
出ることが出来なくなった。
この不甲斐なさにヒトラーは激怒したが、有効な対抗手段が無いため独海軍はもっぱら
戦力増強に努めていた。
この潜水艦による海上封鎖は日米の潜水艦隊も協力していた。 米潜水艦の協力と
言っても対日戦で生き残った数隻の潜水艦のみであったが、他の艦隊支援のため
伊400型潜水艦が戦線を離れなければならない場合のピンチヒッターには十分で
あった。
更に、地中海のマルタ島の攻防でも伊400型潜水艦は大活躍をした。 誘導ロケット
弾でもって独伊の航空基地を攻撃し、敵航空勢力を効果的に封鎖した。
イタリア艦隊にも雷撃で痛打を浴びせその動きを封鎖し、援英物資の輸送を容易ならしめ
たのだった。
この活躍により、独アフリカ戦線は補給路が断たれた格好になった。
また、イタリアは喉元に合い口を突き付けられた格好となり、身動きが取れなくなって
いた。
大西洋,地中海と日米英は優勢に立ったが、中国大陸のウランバートルにおける
独機甲師団と日米陸軍の激突は双方大損害を出しながら膠着状態に陥っていた。
作戦参謀の辻が懸念していた戦車の劣性が損害の原因であった。
当初、ようやく補給に目処のついた独機甲師団は日米の戦車の性能が良くないことを
知り、怒濤の如く進撃してきた。
日米の戦車は果敢に立ち向かったが、敵戦車をくい止められないと知ると慌てて撤退を
始め、敵戦車に叩きのめされた格好となった。
危うく壊滅しそうな所を砲戦車が敵戦車を牽制し、塹壕に隠れていた歩兵の携帯
ロケット砲でくい止めたのであった。
戦車は歩兵が群がると弱いという一面がある。
携帯ロケット砲を使うことにより優秀な敵戦車を齒獲出来たのであった。
もっとも齒獲出来ても砲弾の規格が合わないため、あまり役には立たなかった。
結局、双方とも戦力が整うまでウランバートルでにらみ合いが続く事となった。
だが、中満両国の爆撃機は休むことなく独機甲師団の補給路を断つべく爆撃を繰り返し
敢行しており、補給力の差が徐々に出てき始めた。
また、すでに11月になっており厳しい冬が予想され、独機甲師団の補給はさらに
困難になっていくのであった。
2.
「おお! これはすごい!」
「まるで山の様ですな!」
米内光政と山本五十六は九六式陸攻の中で感嘆の声を上げていた。
改装が終わった阿蘇型重巡8隻に安土型戦艦2隻と紀州型戦艦2隻を極秘で視察に
来て、その大きさに目を丸くしていたのだった。 麻生から巨大航空戦艦と聞かされて
いたが、実際に目の当たりにすると戦艦大和が駆逐艦並に見えそうであった。
実際、戦艦といっても差し支えのない阿蘇型重巡が小さく見えるのである。
その雄大さは絶大であった。
米内,山本にも知らされていないその諸項目は
戦艦 安土型(宇宙駆逐艦を改造)
製造済み艦船名:安土,三河
全長:410m
全幅:59m
排水量:125000トン
速度:90ノット(水上)、35ノット(水中)
武装(全てレーダー連動、自動発射可能:各個レーダー装備)
主砲:55.88センチ(22インチ)55口径3連装砲塔5基
射程:85000m
電磁砲に切り替え可能(射程:150000m)
副砲:32.48センチ(12インチ)55口径3連装砲塔6基
高角砲:16.44センチ(6インチ)55口径2連装20基
対空砲:10.8センチ(4インチ)90口径単装8基 射程高度:22000m
機銃:40ミリ3連装機関砲50基
収納型対空回転式機関砲:20ミリ5銃身単装50基
収納型対空電磁砲:単装40基 射程高度:10000m
対空ロケット弾発射口:20門
収納型誘導ロケット弾発射装置:2基
艦首魚雷発射管:8門(150センチ魚雷)
艦尾魚雷発射管:4門(150センチ魚雷)
側舷魚雷発射管:24門(150センチ魚雷)
V字型後部飛行甲板
艦載機射出装置
艦載機:75機
宇宙空間航行能力,大気圏突入・離脱能力,大気圏飛行能力,海上・海中航行能力を
有す
装甲:完全防御型 対56センチ防御装甲を3重構造
戦艦 紀州型(宇宙巡洋艦を改造)
製造済み艦船名:紀州,薩摩
全長:750m
全幅:107m
排水量:25万トン
速度:94ノット(水上)、38ノット(水中)
武装:(全てレーダー連動、自動発射可能:各個レーダー装備)
主砲:66.04センチ(26インチ)70口径3連装砲塔6基
射程:140000m
電磁砲に切り替え可能(射程:260000m)
副砲:40.64センチ(16インチ)70口径3連装砲塔8基
高角砲:17.78センチ(7インチ)70口径2連装40基
対空砲:12.7センチ(5インチ)110口径単装16基
射程高度:29000m
機銃:52ミリ3連装機関砲90基
収納型対空回転式機関砲:30ミリ6銃身単装90基
収納型対空電磁砲:連装100基 射程高度:10000m
対空ロケット弾発射口:40門
収納型誘導ロケット弾発射装置:4基
艦首魚雷発射管:10門(150センチ魚雷)
艦尾魚雷発射管:6門(150センチ魚雷)
側舷魚雷発射管:32門(150センチ魚雷)
爆弾投下口:1基(飛行時に使用)
V字型後部飛行甲板
艦載機射出装置
艦載機:140機
宇宙空間航行能力,大気圏突入・離脱能力,大気圏飛行能力,海上・海中航行能力を
有す
装甲:完全防御型 対66センチ防御装甲を3重構造
主機関はタキオン反応炉で副機関に縮退路を使っているのである。 宇宙で使えば
銀河中を疾駆できる性能をもっているのであった。 更に、砲弾装填装置と転送装置を
結合し、弾薬庫を無くし、砲弾を砲身の中に直接転送させることにより、主砲,副砲の
射撃間隔は1秒以内となっていた。
「ううむ、これなら敵列車砲なんぞビクともしないな。」
「同感ですな。 しかも正規空母並の艦載機を搭載しているので、この艦隊だけで
上陸作戦の決行が可能ですな。 機動打撃艦隊とでも言うべき破壊力を秘めて
いますな。」
この時、麻生からの無線が入った。
「この戦艦を使いもう一度ドイツの列車砲に挑みます。 今度は戦艦だけで
行いますので、上陸部隊の編成はもう少し待って下さい。」
「どうしてだね? どうせ艦砲射撃を行うのであればついでに上陸部隊も
上げるべきではないのかね?」
「ええ、常識的に考えると橋頭堡を築くのは大切なことですので上陸部隊は必要
なのですが、どうもいやな予感がするのです。」
「というと?」
「こんなに早くは完成しないと思うのですが、史実においてドイツは81センチ
列車砲を開発するのです。 万一これが完成していると紀州型戦艦といえど只では
済みません。
また、22インチ列車砲も多数生産されているでしょうから、予め敵戦力を削減させて
から上陸作戦を行うべきです。」
「そうか、撃たれ強い戦艦でなければ難しい話だな。 がんばってくれたまえ。」
「ところで、震電改をイギリスと中国大陸に配備して、敵航空機と戦車をくい止める
必要がありますが、生産の方はどうなっています?」
「ああ、当初米国の生産が軌道に乗らず心配していたが、今では順調に生産されて
いるよ。 来年初頭には第一艦隊の航空機は全て震電改に入れ替えができる予定だ。
また、米国ではB17を代表とする爆撃機の生産も順調だよ。 英国はB17で
敵国深くまで爆撃を敢行するつもりらしい。
さらに、国内で生産した震電改は随時満州に配属されている。」
「そうですか、これで中国大陸の機甲師団も粉砕できますし、ヨーロッパの制空権
奪取も容易になりますね。」
3.
戦艦 安土,三河,紀州,薩摩がキール沖に終結したのはそれから10日後であった。
4隻の戦艦は成層圏を飛行し北極を越え、密かに着水しキール沖まで航行していったの
だった。
4隻の戦艦はその高速性をもってキールに突進し、造船所,工場などを砲撃した。
独空軍も反撃に来たが、主砲の零式対空弾の前に壊滅的被害を被った。
それでも生き残った数機のユンカースやメッサーシュミットが紀州をはじめとする戦艦に
肉迫したが、針の山の様な対空兵器に全機撃墜されていた。
ヒトラーはキールに侵入を許した海軍と空軍に激怒したが、敵戦艦を追い払うのが先と
考えて列車砲をキールに急行させた。
この攻撃でグラーフェ・ツェッペリンは最終兵装が完成する前にドック内で破壊され、
建造中の他の空母や戦艦も尽く大破あるいは破壊されていた。
やがて22インチ列車砲弾の雨が4隻の戦艦の周りに降ってきた。 麻生は4隻の
戦艦に敵砲弾を迎撃しつつ、弾道を逆算し発射地点を割り出して反撃をするように
命令した。
反撃の砲撃を始めた直後、敵22インチ砲弾よりも低い弾道で音速の4倍の高熱源体を
探知した。 迎撃の為の照準すら合わせられず戦艦薩摩に命中した。
敵砲弾は薩摩の第2砲塔の天蓋に命中し、第2砲塔に大穴が空いた。 敵砲弾は3重に
なっている装甲を貫き砲塔内部で爆発したため、第2砲塔は使用不可能になって
しまった。
即座に敵の兵器を推測するとやはり81センチ砲弾であった。 直ちに紀州の主砲が
81センチ砲弾の発射地点に向けて火を噴いた。 敵の81センチ砲弾はこの1発のみで
反撃が終わった為、4隻の戦艦はキールを離れ北極に向かった。 修理のため、北極海
から地下基地まで飛行するのである。
麻生は、4隻の戦艦のみならず、阿蘇型重巡,伊400型潜水艦も飛行できることは
米内,山本にすら秘密にしていた。 なぜなら、宇宙船と言っても米内,山本の理解の
範疇外であると考えていた。 また、決定的な戦力差を見せつけて、戦後、再び日本が
孤立化する事を恐れたのである。
81センチ列車砲の出現の報告はすぐに麻生から東条,米内,山本にもたらされた。
「やはり麻生君の予感は当たったのか。 これで欧州上陸作戦は根本的に見直さ
なければならないな。」
「でも一番やっかいな81センチ列車砲はこれでしばらくは出てこないでしょうが、
1ヶ月も敵に時間を与えると復活してきますよ。」
「22インチの列車砲も大多数が破壊されたようだからもう一度考えてみるか。」
4.
やがて、日米合同のノルマンディー上陸作戦が計画された。
日本側は八八艦隊,第一艦隊の中で被害の無かった船をかき集め、米陸軍を輸送する
任についた。 これには修復の終わった重巡阿蘇以下の同型艦4隻が参加した。
輸送船を率いた大船団が東進してくることは直ぐにドイツのスパイに察知されたが、
迎え撃つ船がないため、ヒトラーは生き残った列車砲とV2と陸空軍に期待するしか
なかった。
そのヒトラーの元に、アジア方面に向かった機甲師団は震電改と米陸軍,関東軍の立体
攻撃により、壊滅という報告が入った。 更に、間を置かず北アフリカのロンメルも
震電と米陸軍により壊滅したという報告が入った。
さらに、追い打ちをかけるように、ロンメル機甲師団を撃ち破ったパットン大将は、
マルタ島経由でイタリアに雪崩れ込みムッソリーニが降伏するのも時間の問題と
なっているという報告も入ってきた。
ヒトラーはこの報告を信じられなかったが真実と知るや激怒した。
だが、ヒトラーには長く激怒している暇がなかった。 すぐに空襲警報がベルリンに
鳴り響いたのだった。 ベルリンには誘導ロケット弾の雨が降ってきた。
襲ってきたのは兵器の改修がようやく済んだ薩摩型戦艦の薩摩,水戸と瑞穂型戦艦の
瑞穂,土佐であった。
戦艦 薩摩(宇宙重巡洋艦を改造)
薩摩,水戸
全長:1300m
全幅:193m
排水量:50万トン
速度:98ノット(水上)、41ノット(水中)
武装:(全てレーダー連動、自動発射可能:各個レーダー装備)
主砲:81.28(32インチ)85口径3連装砲塔7基 射程:200000m
荷粒子砲に切り替え可能(射程:380000m)
副砲:45.72(18インチ)85口径4連装砲塔10基
電磁砲に切り替え可能(射程:70000m)
高角砲:20.32センチ(8インチ)85口径2連装80基
対空砲:15.24センチ(6インチ)130口径単装30基
射程高度:35000m
機銃:57ミリ3連装機関砲170基 (速射砲)
収納型対空回転式機関砲:40ミリ7銃身単装200基
収納型対空電磁砲:3連装250基 射程高度:10000m
対空ロケット弾発射口:60門
収納型誘導ロケット弾発射装置:6基
艦首魚雷発射管:12門(200センチ魚雷)
艦尾魚雷発射管:8門(200センチ魚雷)
側舷魚雷発射管:60門(200センチ魚雷)
爆弾投下口:2基(飛行時に使用)
後部飛行甲板2枚(アングルド・デッキ採用)
艦載機射出装置
艦載機:300機
艦載艇:阿蘇型重巡3隻 又は 伊400型潜3隻
宇宙空間航行能力,大気圏突入・離脱能力,大気圏飛行能力,海上・海中航行能力を
有す
装甲:完全防御型 対81センチ防御装甲を4重構造
戦艦 瑞穂型(宇宙戦艦を改造)
瑞穂,土佐
全長:3800m
全幅:545m
排水量:300万トン
速度:110ノット(水上)、47ノット(水中)
武装:(全てレーダー連動、自動発射可能:各個レーダー装備)
主砲:101.6センチ(40インチ)100口径4連装砲塔8基
射程260000m
荷粒子砲に切り替え可能(射程:520000m)
副砲:55.88センチ(22インチ)100口径5連装砲塔12基
電磁砲に切り替え可能(射程:200000m)
高角砲:27.4センチ(10インチ)100口径2連装160基
対空砲:19.18センチ(7インチ)150口径単装60基
射程高度:40000m
機銃:75ミリ3連装機関砲400基 (速射砲)
収納型対空回転式機関砲:57ミリ8銃身単装600基
収納型対空電磁砲:4連装800基 射程高度:10000m
対空ロケット弾発射口:120門
収納型誘導ロケット弾発射装置:16基
艦首魚雷発射管:20門(200センチ魚雷)
艦尾魚雷発射管:10門(200センチ魚雷)
側舷魚雷発射管:160門(200センチ魚雷)
爆弾投下口:2基(飛行時に使用)
艦首砲:400センチ70口径2基(タキオン砲)
後部飛行甲板2枚(アングルド・デッキ採用)
艦載機射出装置
艦載機:1000機
艦載艇:阿蘇型重巡5隻 又は 伊400型潜5隻
宇宙空間航行能力,大気圏突入・離脱能力,大気圏飛行能力,海上・海中航行能力を
有す
装甲:完全防御型 対102センチ防御装甲を5重構造
これらの4隻は麻生の独断で山本や米内にも秘密に進撃してきていた。 キール沖に
姿を表した超巨大戦艦は、阿蘇型重巡の誘導ロケット弾よりも遙かに射程が長く炸薬量も
多かった。
ほとんど弾道弾といっていいぐらいの誘導ロケット弾を立て続けに発射していた。
ベルリンの総統官邸に誘導ロケット弾の雨が降った。
ヒトラーは防空壕に避難し、電話で列車砲にて4隻の戦艦を迎え撃つように命令した。
同時に空軍にも出撃を要請した。
列車砲の中には撃破したと思っていた81センチ級の列車砲が4台もあったのだ。
合計30台の列車砲は牽引の機関車に引かれキール方向にばく進した。
3時間後に射程圏内に入った列車砲はさながらつるべ撃ちの如く轟音を上げて砲撃を
開始した。 空軍も稼働可能な全ての航空機をキール方面に向かわせたが、艦載機
電竜の対空ロケット弾の迎撃に合い、無線を打つ暇すらなく全機撃墜された後だった。
列車砲の81センチ砲弾をものともせず、戦艦瑞穂の101.6センチの主砲が
凄まじい轟音をたてて砲撃を繰り返していた。
戦艦大和の主砲弾でさえ、直径46センチ,全長2メートル,重量1.46トンである。
戦艦瑞穂の主砲弾は直径101.6センチ,全長5メートル,重量17.8トンもある。
炸裂する毎に巨大なキノコ雲があちらこちらで立ち上がった。
数分間の砲撃の後、列車砲が展開していた陣地は数十メートルのクレーターが無数に
存在するだけの荒野となった。
全ての列車砲が撃破されて、ヒトラーはロンドン攻撃のために蓄えていたV2を
発射する様に命令した。
だが、最初の1発目が発射された時、遙か上空の探査衛星がV2発射基地をレンズに
捕らえていた。 直ちに瑞穂等の4隻から誘導ロケット弾が発射され、V2発射基地を
破壊した。
4隻の戦艦は探査衛星から送られてくる各地の独軍事基地に向け誘導ロケット弾を
発射した。
この攻撃で、ドイツ陸軍の誇る戦車と空軍の航空機のほとんどが失われた。
もはやヒトラーには反抗する術が無いに等しかった。 巨大戦艦からの攻撃は
10日間、休む間もなく続けられた。
瑞穂を含む4隻の戦艦の攻撃が終わってから3日後にノルマンディー上陸作戦が
行われた。
ドイツの航空機による反抗もあまりなく、懸念された水際での反抗も少なく、上陸作戦は
あっけないほど簡単に終了してしまった。
その後のパリ解放にしても散発的な抵抗しかなく、無血占領に近い形であった。
休む間もなくベルリンに向かった米軍は瓦礫と化した総統官邸を目の当たりにした。
やがて、防空壕から拳銃で頭を撃ち抜いたヒトラーと愛人のエバを発見した。
イタリアのムッソリーニはヒトラー自殺の報告を受け取るや、降伏した。
ここに第二次世界大戦は終結したのであった。
5.
大戦終結と共に海軍は第13独立遊撃艦隊の解散と傭兵の解雇を発表し、紀州,
安土型戦艦,阿蘇型重巡,伊400型潜水艦は日本海軍から姿を消した。
艦隊の解散と解雇に猛反対したのが、多大な協力をしてもらった小沢中将,草鹿中将
近藤中将らであった。 特に小沢中将は麻生とその艦隊にすっかり頼り切っていたので
米内,山本は麻生が未来人であることを隠しながら説得するのが大変だった。
麻生は8隻の戦艦,8隻の重巡,8隻の潜水艦をすべて地下工場に撤収させた。
全艦を整備し、再び時空爆弾探査を始める為だった。
阿蘇型重巡,伊400型潜の姿を見た敵は僅かにハルゼー,ニュートン,フィリップス
のみであった。
海軍ですら阿蘇型重巡しか見たことがなく、位400型潜水艦に至っては陸戦隊の一部が
夜間にその内部に乗り込んだので、どの様な艦艇か見たものはいなかった。
第13独立機動艦隊はその赫赫たる戦果と共に、幻の艦隊として語り継がれていくので
あった。
12月12日、麻生は日本のラムウ大使館にいた。 そこで東条,米内,山本と別れを
告げていた。
「麻生君。 ついに君は完全に日本を救ってくれた。」
「いえ、日本を救うのはこれからのあなた方にかかっています。 民主主義をイギリス
から学び、ユダヤ共和国,満州国,朝鮮国,中国と親密な関係を築いて下さい。
決して武力で強制してはいけません。
軍は文民統制で管理し、総合国力を常に考えられる体制を作って下さい。 往々にして、
軍人は国力を無視した作戦や演習をしますが、それはかえって戦力を減少させる事に
なりますし、国力のことを考えていれば戦争を仕掛けるようなことも起こらなくなると
思います。
そして、国民が幸福と感じられる国家を作ることこそが、本当に日本を救うことに
なるのです。
利益至上主義、学歴偏重、政治家と企業の癒着を無くし、何人子供がいても暮らし
やすい国家作りをしてください。」
「なかなか難しい課題だが、不退転の覚悟でやっていくよ。」
「ありがとう御座います。」
「これから君はどうするのかね?」
「まだ未来に帰る方法がないので、人工冬眠をして元の時代に帰れる日を待ちます。」
「そうか。 もし、我々だけでどうにもならない事態が起きた場合、もう君をあてには
できないのか。」
「ええ、しかし月に1日は目を覚まして点検を行いますので、その時にでも連絡を
頂ければお力になれると思います。」
「わかった。 極力我々の手で解決するようにするが、万一の場合は相談するよ。」
「ええ、お願いします。」
それからの日本は電子立国として、ユダヤ共和国はソフトウェア立国として協力して
いく様になった。
この事は、軍の兵器にも影響していた。
陸海軍は協力して強力な新兵器の開発にいそしんでおり、開発された新兵器はまず、
国内で生産された。 そして、量を必要とする兵器は1つ前の世代の兵器をアメリカに
発注していた。 これは、日本で開発された新兵器はすぐにアメリカお得意の大量生産
できない事が多かったからであった。
日本の呼びかけで地球連盟が発足し、世界恒久平和を目指し、その障害となる全ての
事に対し各国から学者を集め、研鑽が続けられた。
この中には、ゴミの問題やエネルギーの問題、地球環境なども含まれていた。
特に、原子爆弾(頭文字をとってA兵器),細菌兵器(頭文字をとってB兵器),
薬品兵器(頭文字をとってC兵器)からなるABC兵器の撲滅に真っ先に取り組んだ。
東条は「国民総幸福論」を発表した。 これは、国民所得の増大や産業の発達が、
国民にとって真の幸福と感じることがなく、真の幸福は家族や地域社会との密な
コミュニケーションでもって感じられるものであるとした。
だから、急速な産業の延びを促す政策はとられなかった。
娘を売らなければならない貧困家庭の多い小作農家救済のために、大規模な農政改革を
行い、小作が地主に払う小作料の上限を制定した。
地主からは大反発があったが、小作料が劇的に安くなるので多くの農家は賛同し、
採決を国民投票にしたため、問題なく可決された。 無論、地主と結託した議員からの
反対はあったが、東条は全国の農民を味方に引き入れたと要っても過言ではなかったので
反対の声は押さえ込まれたのであった。
この改革の副産物として、国営の娼婦館ができた。 どうしても身を売らねばならない
状態に陥った場合の救済措置ではあったが、ここの娼婦は毎月、性病診断されるので、
男どもの人気はあった。 ここでは、コンドームの着用が義務付けられており、通常
ならば鬱陶しくて人気が出ないのであるが、このコンドームが厚さ0.2ミリという
超薄型で、装着感もなく、いぼ付きから3段締めまで色々バリエーションがあり、これが
評判となっていた。 更に、民営の娼婦館には毎月の性病診断を義務付けたが、あまり
厳守されなかったので、国営の娼婦館は更に人気を博していった。
ちなみに、コンドームの製造は陸海軍共同で行っている。
これは、海外派兵の折りに、ハメを外した将兵が性病にかからないために製造していた
のであるが、国営の娼婦館向けにも販売し始めたところ、大好評で軍事予算の10%
以上をコンドームの収益でまかなえたのである。
ここまで好評だと、作る側も乗ってきて、いぼ付きなど様々なバリエーションが
登場したのである。
国会では政府が娼婦館を作るとは何事だという追求があったが、従軍慰安婦廃止の
背景が性病にあったため、陸海軍が性病撲滅に賛同して可決されたのであった。
東条がこの政策に力を入れたのには、麻生からエイズという新しい性病の猛威を
聞いていた為であった。
また、国土自然保護法を制定し、むやみな森林伐採や減反政策はしなかった。
この法案には生産された工業製品は全て自然に帰せるような仕組みを企業に義務付けし、
更に廃液や煤煙等の廃棄物はゼロにするように義務付けした、企業にとっては厳しい
法案であった。
国民にもリサイクル運動を奨励して、極力、家庭からのゴミも出さない様な政策が
とられた。
したがって、史実のような高度経済成長は見られなかった。 ただ、電子部品の
ほとんどは世界市場を席巻し、貿易摩擦のやり玉に上げられたが、日本の電子部品が
遙かに優秀であるため、結局は自国の産業の技術力のなさをさらけ出す上、関税等を
かけると自国の産業に悪影響を与えるため、あまり大きなトラブルは無かった。
なにしろ、メモリーからマイクロプロセッサーに至るまで、日本が世界で初めて開発し、
世界中に特許をもっていたからであった。
これらの電子部品の開発・製造は全て国家が経営しており、得られた収益で道路の
整備や通信設備等にあてがわれ、国民の税負担はかなり軽くなっていたのである。
それだけではない、トリウム原子炉の製造ノウハウは各国に紹介され、火力発電に
よる大気汚染の減少を呼びかけていた。
また、自動車の保有は免許制度と共に保有許可制度と莫大な所有税ががけられ、
個人での自動車の購入は少なく、バスが普及した。
むしろ、国民に手作りを楽しませるような環境にしていった。
自家用車は購入するよりも自分で作成すれば税制面でかなり優遇されたので、自動車,
バイク、はては飛行機まで自作ブームを呼んだ。 これらの自作用のエンジンは、
あまり燃料のくわないハイブリッドエンジンや電気自動車用のモーターであった。
遠隔地への旅行などについては航空機を使わざるを得ないのだが、ここでも国土自然
保護法のもと国内の空港は滑走路がなかった。
滑走路を必要とする国際空港は港湾の側に作られ、国内においては飛行艇の利用が
優遇された。 飛行艇ならば滑走路を作るために埋め立てたり、森林を伐採したり
しなくて済むからであった。
これらは、月1回、麻生に未来の日本で起きている諸問題を予め聞いて、今から対応
しようと東条が考えたからだった。
麻生は月1回の点検で日本の状況を確認し、悦に入って再び冬眠に入るのであった。
彼はこのまま冬眠するのも悪くないと思うようになっていた。
完
あとがき
この小説を書こうと思ったきっかけは、ゲームをしていて自分の設計した戦艦の
戦う場所がなかったためでした。 設計できたときには敵をほとんど壊滅させて
いたので、戦う相手が欲しかったのです。
しばらく悶々としていましたが、「逆襲連合艦隊」読んでから、小説にして大暴れ
させてやろうと思い、一気に主要な前半部分を書き上げました。
あとから色々なエピソードを盛り込んだ為、ギクシャクしています。
特に、ドイツとの戦いは物語を終わらす為にあるといってもいいでしょう。
また、色々なことを詰め込んでしまい、テーマが何なのか書いている本人にも
わからなくなってしまい、反省しています。
ストーリーとしては「紺碧の艦隊」,「逆襲連合艦隊」がかなり影響しています。
しかし、戦略においては、ゲームの「紺碧の艦隊2 パーフェクト」で自分が
ゲーム中で立てた戦略を使っています。(当然、バッドエンディング)
地下工場が何でもありのジョーカーの様な感じになっているのと、地下工場の
コンピュータの性格の書き分けができていないとか、『ルナ』は何のために
出てきたのか判らないとか、『ルナ』と麻生の絡みが全然ない
(アダルトを期待された方、ごめんなさい)、
文章が読み辛い、「てにおは」が間違っているなど、かなり不出来な作品ですが、
そこは初めての小説ですので大目に見て下さい。
(理工学系が作文するとこうなるという見本みたいなものです)
小説を書くためには当然、時代背景などが必要となります。
書いていて愕然としたのは、学校で学んだ近代史はほとんどないということです。
教わった記憶は、僅かに開戦,終戦,原爆投下,オリンピックに万博の年ぐらいです。
臭いものには蓋という訳ではないのでしょうが、この半世紀の間に日本が何をやったかを
教えないのはおかしいのではないでしょうか。
入試問題を作る側からすると近代史は問題を作り辛いのでしょう。
でも、教える側が入試を前提に教えていてはいけないのではないでしょうか。
「紺碧の艦隊」では「教育は国家百年の大計である」とありますが、少なくとも
教育方針は教えた子供が大人にならなければ、その方針が正しかったのか判りませんので
20年ぐらいが最小となるような教育方針(計画?)を考えなければいけないと
思います。
その様な目で、国会の中継や新聞などを見ると、
「だから、国民はどうあるべきなの?」「10年後、20年後はどうなっているの?」
と言いたくなりますし、場当たり的なことばかりやっていて、国民の政治離れも当たり前
と思います。
新聞を読んでも、政治家と官僚と一部の企業の為の政治しかしていないとしか
感じられません。 万民のためどころか天下国家のためという意気込みすら政治家から
感じられませんので、政治家=不正や汚職や弱い者虐めをして嘘をつく人、
と子供達に教えて、政治家は反面教師になるしかないのでしょうか?
それはあまりにも悲惨な考え方ですが、理念を抱いていると感じられる政治家が
いないと言うことは、日本の将来に不安を掻き立てます。
最後に、ここまで読んで頂いたみなさまに、あつくお礼を申し上げます。
また、参考にさせていただいた各ホームページの方々にもお礼を申し上げます。
参考文献
紺碧の艦隊 荒巻 義雄 著
旭日の艦隊 荒巻 義雄 著
逆襲連合艦隊 大村 芳弘 著
ナチ・ドイツの特殊兵器 小橋 良夫 著




