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第13章 ドイツ宣戦布告

第13章 ドイツ宣戦布告


1.



 アメリカが降伏した事で中国,英国,豪州との対日講話が進み、独立をしたアジア

諸国を中国,英国,豪州が承認した。 オランダは既にドイツ軍に降伏しており承認を

保留した。 

対日講話条件には米軍撤退があり、マッカーサー率いる陸軍は全てアメリカに

引き揚げた。

 また、英国はすぐさま不足するゴム,錫を大量に買い付けた。


 アジア諸国は平和的な独立が果たせ、独立に協力し、米国を撃ち破った日本への

信頼度は高まっていった。 日本海海戦でロシアを撃ち破った時以上にアジアの小国は

日本贔屓になったのであった。

 ここに麻生の目的の1つであるアジアの信頼の獲得は達成された。 

後は、軍の政治への発言権を弱め、日中戦争や二・二六事件の様に軍部の独走を押さえる

制度の構築が必要であった。


 また、米国も失った国力を取り戻すべくアジア方面の貿易に参加していき、

アジア諸国は特需で潤い始めていった。 

これを見ていたヒトラーは今更ながら三国同盟を破棄したことを後悔した。

もし、三国同盟を破棄していなければ米大陸の半分は手に入れられていたかも

しれなかったのだ。

 今ならば日本に負けたアメリカは国力が無くなっているので制圧できると判断した

ヒトラーは戦艦ティルピッツを旗艦とした大西洋艦隊を編成し、アメリカ制圧に

乗り出した。


その陣容は


独大西洋艦隊

 艦隊司令長官 リュッチェンス中将

 戦艦 ティルピッツ

 巡洋戦艦 シャルンホルスト

 装甲艦 リュッツォウ,アドミラル・シェーア

 重巡 アドミラル・ヒッパー,プリンツ・オイゲン

 駆逐艦 12


 とドイツ海軍の大半であった。 

肝心の空母グラーフェツェペリンはこの時点で潜水艦建造優先の為、建造を中断していて

ドイツ海軍に空母は1隻もなかった。

ナルヴィク作戦も中止してリュッツォウ,アドミラル・シェーアも参加させていた。


 慌てたのはチャーチルである。 

海軍の壊滅した米国はドイツの上陸を許してしまうであろう。

そうすれば米国に頼っていた石油が届かなくなる。 

また、米国に頼っていた北アフリカの防衛もおぼつかない。 

そうなると、紅海-スエズ運河-地中海-ジブラルタルの輸送ルートも分断されて

しまい、補給ルートが無くなってしまう。 

自国の艦隊で阻止したいが、既に地中海のマルタ島への輸送作戦に従事しており

急行できる艦艇がなかった。 

仮にあったとしても独大西洋艦隊に太刀打ちできる艦隊を早急に編成できる時間が

なかった。 そこで思いついたのが、まだ大西洋にいる日本艦隊を利用することだった。


 大急ぎでルーズベルトを呼びだし日本と軍事同盟を締結するように迫った。 

同時に東条にもアメリカとイギリスの危機に立ち上がって欲しいと懇願した。


 東条は麻生の予言したとうりの展開に驚きもせずアメリカとの講話と米英日の

三国軍事同盟を締結した。 

すぐさま山本は未だバミューダに停泊してた八八艦隊に米大陸防衛を命じた。

この時、第二艦隊はハワイへ向けて帰投中であり、第一艦隊もパナマにさしかかって

いた。

すぐに迎撃できるのは八八艦隊しかなかったのである。


 八八艦隊率いる草鹿仁一中将は独大西洋艦隊と一戦交える事ができるので小躍りして

喜んだ。

第19,第20任務部隊を破った第一艦隊の活躍を聞いて、小沢中将をうらやましがって

いたのだった。 なにしろ、草鹿中将が八八艦隊の司令官となった時には、既に米国に

戦える艦艇が無かったのである。


 このアメリカとの軍事同盟に激怒したヒトラーは日本に対し宣戦布告を通達した。 

イタリアも追随して宣戦布告をしてきた。 


 ドイツ・イタリアからの宣戦布告の記者会見で東条は次のように演説した。


 「我が帝国は不幸にもお互いの理解が得られず、英・米と開戦いたしましたが、

日本国民の努力が実り英・米と講話の調印にまで来ることが出来ました。 

敵兵を釈放し、塩を送り、アジアの独立という我々の主張は認められました。

 しかし、ドイツでは駆除という名目で罪もないユダヤ人が毎日数万名もガス室に送られ

殺されています。 

この様な残虐行為は許されてはなりません。 我が帝国がユダヤ人救済のため樺太を

彼らの安住の地として割譲しました。 

そして、その事がドイツの我が帝国に対する宣戦布告の原因となりました。

 国民のみなさんはどう考えますか? 

国を奪われた民に安住の地を与えた我々と、流浪の民を根絶やしにしようとする

ドイツと、どちらが正しいと思われますか?

 我が帝国はドイツの様な残酷な政策は許せません。 英・米との戦いでは相手国民にも

理解を求めるために手加減をしましたが、今度は手加減無しに全力を持って戦います。 

国民のみなさんにはもうしばらく辛抱していただいて、新しくできた隣人を守ろうでは

ありませんか。」


 ドイツ・イタリアからの宣戦布告が通達される前にドイツから引き抜いてきた

ワルター博士やフォン博士たちは秘密の実験施設に移され、外界のニュースを遮断し、

軟禁状態にされていた。

もっとも、今まで研究していた場所よりも設備が良く研究に没頭しやすい環境になって

いたため、本人達は軟禁されている事に気づかなかった。


 彼らは種子島に建設された秘密研究所に移されていた。

 フォン,テッヘル両博士は誘導ロケット弾の分析で他のことに気を配ることが

できないほど熱中していた。 

この二人がV1,V2の完成度,命中率を飛躍的に向上させたのであるが、それは

100km先の直径100mの標的に命中させる程度であった。 しかし、誘導ロケット

弾は250km先のコインに命中させることができるのである。

彼らにしてみれば宇宙旅行用のロケットを作成するためには、目標に狂いもせず到達

できる誘導ロケット弾の技術が必要不可欠であった。


 ワルター博士は伊400型潜水艦の主力兵器である100センチワルター魚雷の解析を

していた。 ワルター博士にとって魚雷にワルター機関を使われているとは思っても

みなかったことであった。 コンパクト化され、推力も自分が手がけた伊200型

潜水艦のワルター機関よりも大きいかもしれないのである。 

ワルター博士は小型化のノウハウを得るために魚雷を分解して研究中であった。


 アインシュタイン博士はこの研究所の電力供給源であるトリウム原子炉の研究を

していた。

もともと、戦艦用の原子炉を持ち込んだのであるが、アインシュタイン博士の目には

原子力の平和利用の答えを見ている様に映っていた。

トリウム原子炉はウラニウム原子炉に比べ、装置が大きくなり爆弾には使えないが、

廃棄物にやっかいなプルトニウムを出さず自然に帰せるのである。

アインシュタイン博士はこのトリウム原子炉の小型化を研究していたのだった。


 ヒトラーはSSや秘密警察を使い、引き抜かれた科学者達を取り戻そうとしていたが、

何処に移されたのか皆目見当がつかない状態であった。



 米大陸攻略に関してヒトラーと海軍の重鎮、エーリッヒ・レーダー大将との間で

一悶着起こっていた。


 「すると君は我がドイツ海軍は世界一弱いと言うのかね?」


 ヒトラーはベルサイユ体制の締め付けの中で、海軍を立て直したレーダー大将に

詰め寄った。


 「いえ、そうは言いませんが、日本海軍の実力は世界一です。 八八艦隊は米太平洋

艦隊の齒獲船で構成されていますが、改装が行われており、かなり手強い相手となって

います。

 また、その陣容も我が方に比べて巨大で、特に5隻の空母にある約380機の航空

兵力は侮りがたい物があります。

 八八艦隊を退治するには我が大西洋艦隊にも敵航空兵力を阻止できる空母と艦載機が

必要です。 航空機の傘が無い艦隊は負けて当たり前です。」


 「だが、空母を作っていると米国の国力が回復してしまうではないか。 敵空母は

潜水艦で殲滅せよ! その為に手持ちの潜水艦を全て投入してもかまわん!」


 結局ヒトラーの決意は変わらない為、作戦参加できる手持ちのUボートを八八艦隊の

空母殲滅に裂くことになった。 そのUボートの数は独海軍の手持ちの大半であった。


 米国の統合参謀本部の面々はこれまで散々煮え湯を飲まされてきた日本艦隊が味方

としてドイツの脅威から守ってくれるとあって、複雑な面もちだったが米国民の期待は

大きかった。 

なんと言っても大西洋側の海軍工廠は戦艦大和,武蔵、空母信濃によって壊滅しており、

艦隊を編成できるのは2年後とさえ言われていたのだから無理もなかった。 

それに米大西洋艦隊は駆逐艦,哨戒艇等の数隻しか残っておらず、貧弱と言われる独海軍

すら防衛出来ない状態であった。


独大西洋艦隊とUボート艦隊に対する八八艦隊は

 指揮官:草鹿仁一中将  旗艦:ネバダ

 空母   エンタープライズ(84),レキシントン(81),サラトガ(76),

      ヨークタウン(78),ホーネット(75) (搭載機数)

 戦艦   アリゾナ,ウェストバージニア,オクラホマ,カルフォルニア,ネバダ,

      テネシー,メリーランド,ペンシルバニア

 巡洋戦艦 ニューオリンズ,サンフランシスコ,ソルトレイクシティ,ノーザンプトン,

      チェスター,シカゴ,アストリア,インディアナポリス

 軽巡   フェニックス,ローリー,デトロイト,ホノルル,セントルイス,ヘレナ

 駆逐艦  47隻

 その他  15隻


である。 全ての船舶が全速30ノット以上の高速艦艇に改装されていた。 しかも、

只でさえソナー等を備え、潜水艦キラーとしての性能の高い米駆逐艦に海上レーダーまで

装備されており、潜水艦にとっては天敵となっていた。

 更に伊200型潜水艦 12隻も大西洋に配置していた。 また、バミューダ,

ノーフォークでは二式大艇,零式水偵にも哨戒させUボートを駆り出していた。


 二式大艇,零式水偵がノーフォークに配備され、対潜哨戒の任に付くと米海軍はその

性能の素晴らしさに驚いた。 海軍総司令官キング大将は研究用として日本軍の水上機は

それぞれ1機づつ購入せよと命令したぐらいであった。 

米海軍にもPBYカタリナ等、有名な水上機はあったのだが、技術面では劣っていた。

なにしろ、水上機は日本の独壇場であり、その技術はただでさえ世界を数歩リードして

いる上に、麻生が改造したので尚更である。

特に水上偵察機とはいえ戦闘機,攻撃機,爆撃機としても使える零式水偵は航空技術

センターの研究員にハンマーで脳天を殴られたぐらいの衝撃を与えた。



2.



 探査衛星では潜水航行するUボートの発見は出来なかった。 そこで、海上航行して

いるUボートを発見すると艦載機を飛ばして迎撃に出ていた。


 麻生も伊400型潜,阿蘇型重巡をベーリング海,喜望峰,マゼラン海峡に1隻づつ

配備し、残り5隻を大西洋に分散配備させてUボートの撃退に当たっていた。 

伊400型潜,阿蘇型重巡には超音波アクティブ・ソナー,超長波海中レーダーが備え

られており、敵潜水艦や駆逐艦に悟られずに敵を発見できるのだった。

 特にジブラルタル,キール,ブレストに伊400型潜を配置させて、港から出てくる

ところを撃退させる為に急行させていた。 

だが、独大西洋艦隊の出撃が一足早かった為にUボート撃退が主な任務になった。


 探査衛星で独大西洋艦隊の出撃を確認した麻生は草鹿中将に予想航路を連絡した。


 「敵艦隊には空母がありませんから戦艦同士の砲雷撃戦もできるかもしれませんが、

ここは潜水艦隊でもって攻撃されてはいかがでしょう。 

敵艦隊の位置は判っているのですから待ち伏せして暫滅戦が可能です。」


 「ふむ、大和が行った様に戦艦を敵艦隊に突入させて砲撃戦をすることは

できないのかね?」


 「大和と比べ齒獲した米艦艇は防御が弱いですから、当たり所が悪ければ砲弾が1発

命中しただけで沈没してしまいます。 とても大和が行った戦法は真似できません。

 ここは英東洋艦隊を撃滅した時と同じ様に、航空機と潜水艦で同時に攻撃し、

生き残った艦艇に対して砲雷撃戦を行うのが良いと思います。 

最も、生き残った艦艇といってもこちらも相当の被害を覚悟しなければならないと

思いますが。」


 「ふむ、その手でいくとするか。」


 草鹿中将はてっきり主力艦同士の砲撃戦になると思っていたのが否定され、いささか

不抜けた返事をした。


 八八艦隊は輪型陣を組み、独大西洋艦隊に会敵すべく大西洋を東に向かった。 

八八艦隊の左右の斜め前方には阿蘇型重巡2隻がUボート哨戒に着いていた。 

Uボートを発見した場合すぐさま急行して誘導魚雷で撃沈していた。 

敵艦隊と接触するまでに実に34隻ものUボートを沈めたのだった。

草鹿中将は阿蘇型重巡の対潜索敵能力に舌を巻いていた。


 草鹿は独大西洋艦隊が相対距離210海里に所まで近づき、伊200型潜の包囲網に

入る事が確実になったのを確認し、攻撃隊380機を発進させた。

通常は上空支援機を数機待機させておくのであるが、独大西洋艦隊に空母はなく、

敵航空機の攻撃が考えられなかったので全ての艦載機を出撃させた。



 「敵機来襲!」


 「総員戦闘配置に着け!」


 旗艦ティルピッツの艦橋では号令が飛び交っていた。 総員が対空迎撃のため空に

神経を集中させている時、ほぼ円状に包囲した伊200型潜の12隻から必殺の酸素

魚雷が発射されていた。 

合計120本の魚雷は敵艦のスクリュー音を目標にあらゆる方向から向かっていった。


 最初に水柱を上げたのは最前線に位置していた駆逐艦だった。 

艦尾に魚雷が命中し舵が吹き飛んでしまっていた。 

それからも独太平洋艦隊に次々と魚雷が命中していき、空からの攻撃を受ける前に

プリンツ・オイゲン,リュッツォウ,駆逐艦6隻が撃沈していた。


 対潜警戒をする暇もなく、九九式艦爆の急降下爆撃,九七式艦攻の雷撃が行われた。 

独艦隊は必死の対空攻撃を行うが、次々に被弾していった。


 航空機が去った後には半死半生の独大西洋艦隊しか生き残っていなかった。 

生き残った船は戦艦ティルピッツ,巡洋戦艦シャルンホルスト,装甲艦アドミラル・

シェーアの3隻でいずれも大破しており、10ノットしか出せなかった。 

ノロノロとブレストへ帰港しようとしている所へ、7時間後に圧倒的な戦力の八八艦隊が

現れた。 


 敵艦隊発見の報告に艦隊司令官のリュッチェンスは内心救われたと思った。

このまま帰投したのでは総統から厳しい制裁が待っている。 できれば一戦交えてせめて

1隻でも道ずれにしようと思ったのであった。 また、Uボートもまだ近くに数隻いる

はずだから何とかなるだろうと思い、八八艦隊に突撃を命じた。

しかし、近くのUボートが伊400潜によってことごとく撃沈され、独艦隊のそばには

1隻もいなかったのである。 それに、独艦隊には満足に砲撃できる砲門が少なく、

それぞれ2門~5門位しか残っていなかったので、八八艦隊に打撃を与えられる状態では

なかった。


 「あれだけやられていながらまだ向かってくるとは大した闘争心だ。」


 と草鹿中将は敵を誉めた。


 「ここで手を抜いては相手に失礼だ。 ここは敬意を表し全力を出して攻撃する。」


ガガーン,ガガーン,ガガーン,ガガーン,ガガーン,ガガーン

 8隻の戦艦の主砲から巨弾が発射され、生き残っていた独艦隊に炸裂した。 

10分後には独艦隊は海上から姿を消していた。



 八八艦隊はもう一つの任務である米陸軍を北アフリカへ輸送すべく進路を東にとった。 

北アフリカに着くまでにUボートの執拗な攻撃があったが、阿蘇型重巡と八八艦隊の

駆逐艦の対潜警戒網を破ることができず、北アフリカに着いたときは合計86隻もの

Uボートを沈めていた。

草鹿中将にとってこのスコアは信じられない数字であった。 Uボート迎撃は自分の

艦隊の駆逐艦も参加したが、発見したのは阿蘇型重巡である。

改めて、第十三独立遊撃艦隊に山本長官が入れ込んでいたことに納得したのだった。


 北アフリカ輸送作戦は成功し、サハラ砂漠の狐と言われるロンメル大将に圧倒されて

いた米軍は体制を立て直すことができた。

 八八艦隊の帰路にもUボートが現れたが、さすがに被害の大きさから頻繁に出没しなく

なったが、それでもバミューダに帰投した時には未確認も含め104隻ものUボートを

撃退していた。

 Uボートの被害は八八艦隊だけではなく、作戦を終了してブレスト等の母港に帰投中の

ものや母港から出港しようとしたものまで伊400型潜の餌食となった。 

このおかげUボートはほとんど無くなってしまっていた。


 この敗戦でレーダー大将は更迭された。



3.



 ヒトラーは海軍総司令官のリッペから敗戦の原因の報告を受けていた。


 「第1に、敵の対潜警戒網は完璧でありUボートは敵空母に近づくどころか敵艦隊から

遠ざからねば撃沈されてしまいます。 

それは102隻ものUボートが撃沈された事が良い証拠です。

 第2に、敵の攻撃は実に巧みであり、航空機で監視の目を上空に向けている間に

潜水艦の攻撃を受けています。 

潜水艦の攻撃を受けて陣形が崩れたところに航空機が攻撃してきて、大ダメージを

受けています。

 第3に、敵航空機は優秀で爆撃,雷撃の命中精度は我が空軍に勝るとも劣らぬ物が

あり、艦隊護衛の空母無くしては艦隊を守れません。」


 「ではどうすればあの八八艦隊を仕留められるのかね?」


 「まず、艦隊編成は日本海軍を見習い、空母を主力とした艦隊編成にし、戦艦は

敵艦隊の息の根を止めるときと艦砲射撃による陸上施設の攻撃に切り替えるべきです。

 次に、敵の対潜警戒網の範囲外から攻撃できるような潜水艦を開発すべきです。 

敵の戦艦にはV2に似た小型のロケット兵器がありますが、この様な兵器を潜水艦に

搭載すればUボートの被害は少なくなります。

 最後に、空軍の協力が必要です。 艦載機は空軍随一の実力者と優秀な機体をもって

当たらなければなりません。 性能の劣る艦載機では米大西洋艦隊の二の舞に

なってしまいます。」


 「よし、グラーフェツェペリンの建造を急がせろ。 他にもイタリアやフランスからも

使えそうな船は全てかき集めるのだ。 

それとUボートも改造し、船舶搭載できるV2も開発せよ。 

戦艦には大口径の主砲を開発させよ。 空軍には儂から海軍に協力せよと言っておく。」


 「はっ! ありがとう御座います! ハイル・ヒトラー!」


 こうして復習に燃えるヒトラーは海軍力の強化に勤めたが、元々通商破壊しか役に

立たない海軍を強化するにはかなりの時間を要した。


 チャーチルは独大西洋艦隊の壊滅とともに、Uボート102隻の撃沈に小躍りして

喜んだ。

イギリスはUボートの群狼作戦に補給を欠き、息も絶え絶えの状態であった。 

早速、女王陛下から草鹿中将に勲章を授ける旨の電報が東条に打電され、東条は快く

了解した。

 しかし、Uボート壊滅の影の功労者は第13遊撃艦隊の阿蘇型重巡と伊400型潜で

あることは言うまでもない。 しかし、麻生は影の役に徹するつもりで栄誉を草鹿中将に

譲ったのであった。



4.



 八八艦隊がバミューダに帰ってきた時に、山本五十六はアーノルド陸軍航空隊

総司令官とノーフォークで会っていた。


 「実は、折り入ってお願いが御座いましてやって参りました。」


 「連合艦隊司令官直々のお願いとはいったいどの様なことですかな?」


 「我が国は米国と違い、基礎工業力が不足しています。 従って高性能な兵器を大量

生産する事が難しいのです。 

そこで、この持参しました図面の航空機を作って頂けないでしょうか。

幸い、カリフォルニアとテキサスの工場は無傷ですので、ここの軍需工場を使って

生産して欲しいのですが。」


 アーノルドは訝しげに図面に目を通し驚愕した。


 「こ・・これは! ジェット戦闘機ですな!」


 「はい、既に帝都防衛のために配置していますが、エンジンの量産が難しくなかなか

数が揃わないのです。 この機体は陸海軍共通の次期主力戦闘機ですので、どうしても

まとまった数が欲しいのです。」


 「陸海軍共通と言いますと艦載機としても使えるのですか?」


 「ええ、戦闘機,急降下爆撃機,攻撃機,夜間戦闘機としての性能を持って

いますので、これ1機種あれば他に必要な艦載機種は索敵機ぐらいなものです。 

陸海軍共通にすることで開発の国力が少なくて済みますしメンテナンスもやりやすい

のです。」


 アーノルドはこの震電改が世界で最も先端の技術を使われており、性能も世界一で

ある事を即座に理解した。 そして、現在開発中のXP-51やXF6Fなどが既に

時代遅れとなっている事を認識した。

現在戦争中のドイツは大戦直前にジェット戦闘機の開発に成功しているのである。

アーノルドは、もうプロペラ機の時代は終わり、ジェット機の時代になったと考え

始めていた。 さらに、日本に敗戦したのは航空機性能が劣っているためだと思って

いたので、挽回するためにはライセンス生産しかないと考えた。


 「判りました。 お引き受けいたしましょう。 ただし、条件があります。」


 「条件とは?」


 「この機体をライセンス生産させて欲しいのです。 我が軍もこの最先端の戦闘機は

ぜひ揃えたいのです。 我が軍もこの戦闘機を陸海軍共通にする様に検討します。」


 「それは願ってもない事です。 日米が同じ機体を使うのであれば量産効果が

期待できますし、なにより共同戦線を行った時の最前線での整備が楽ですからね。」


 こうして、高性能すぎて生産量の上がらない震電改は米国に委託生産される事と

なった。



 ルーズベルトはアーノルド陸軍航空隊総司令官から事の顛末とドイツ機のみならず

自国で開発中の航空機性能をも大きく凌駕する震電改の性能の説明をうけて、

カリフォルニア,テキサスのみならず復旧した五大湖や大西洋沿岸の軍需工場にまで

震電改の生産を命令した。

 また、陸海軍の次期主力戦闘機は震電改に統一する事を命令した。 

しかし、ジェットエンジンを開発したことのないアメリカは当初エンジン製造に

試行錯誤を繰り返し、思うように生産が進まなかった。

そこで、日本から製造のノウハウまで供与してもらいようやくアメリカお得意の

大量生産が可能になった。 

だが、肝心の電子部品の方はアメリカで生産できず、日本から輸入せざるを得なかった。


 「アーノルド君。 私は降伏勧告を受けた時、草鹿提督から日本の科学力はドイツ人と

ユダヤ人の科学者がいるので進んでいると聞かされたが、この震電改の性能はそれを

実証するものだな。」


 「はい、正に天才の開発した芸術品です。 惜しむらくは生産するための基礎工業力

不足ですが、もし日本に基礎工業力も充実されるとその術力とあいまって世界一強力な

軍隊になるでしょう。」


 「うむ、しかし東条首相はその基礎工業力の強化は部品の分野で行っており最終製品の

部分は昔ながらの職人芸にすると言っておったよ。」


 「どういうことでしょう?」


 「つまり、ネジや電子部品などは高品質で大量生産出来るようにするが、それらの

部品を使って航空機やラジオ等を大量生産する様にはしないのだそうだ。 

日本国民の気質は大工場に勤めると歯車になって個性が埋没してしまい、優秀な人材が

出て来なくなる為、アメリカ式生産は向かないと言っておったよ。」


 「そうすると、高性能な兵器の開発は出来るが大量生産出来ないのでは世界一強い軍隊

にはなれませんな。」


 「そういうことだ。 我々は日本が開発した高性能な兵器をライセンス生産すれば良い

だけなので、時間が経てば我々が最強の軍隊になることが出来る。 

そうすれば再び世界の警察として帰り咲くことも可能だ。 

その時に私は今度こそアメリカを正義の使者にするつもりだ。」


 「それでこそ我が大統領閣下です。 国民もこぞって賛同するでしょう。」




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