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第11章 バミューダ占領作戦

第11章 バミューダ占領作戦


1.



 12月26日に、重巡4を主力とする第3艦隊がミッドウェーに攻撃を仕掛けた。 

中継空母の雲鷹,沖鷹を引き連れて敵機を零戦で駆逐した後に重巡の艦砲射撃を

おこなった。 

守備隊は補給を欠き、糧秣不足とハワイ,ミッドウェイ,パナマ,サンフランシスコ,

ロサンジェルス,サンディエゴと電撃的に占領されて士気は著しく低下していたため、

即座に降伏した。


 ミッドウェーが攻略できたので航空機は硫黄島~南鳥島~ウェーキ~ミッドウェー~

ハワイ~中継空母~ロサンジェルスというルートが確立し、今までミッドウェー沖に

展開していた中継空母が不要となった。 

そこで、不要となった中継空母2隻は第二艦隊に配属されることになった。


 一方日本ではフォン・ブラウン博士が日本の電子部品技術に歓喜していた。 

初歩的ではあるがICすら出来ていたのである。 

 陸軍からは日本にいながら米国を攻撃できる多段式ロケット弾と人工衛星打ち上げ用の

ロケットの開発を要求していた。 それはフォン・ブラウンの夢である宇宙旅行に一歩

近づくことになる。 フォン・ブラウンは昼夜を忘れ研究に没頭していた。 

多段式ロケットで宇宙旅行するのは彼の夢だったからである。 

この段階でフォン・ブラウンの頭の中にはV2号は完成しており、図面を作成中で

あった。

 彼はV2号の図面が完成すれば日本の要求する多段式ロケットの開発に着手する

つもりでおり、V3号の早期開発という日本に来た目的をすっかり忘れていた。


 12月27日、東条は国民にハル・ノートの内容公開と米英蘭への宣戦布告及び緒戦の

戦果を発表した。


 「このハル・ノートは米国の事実上の最後通告であります。 もし、ハル・ノートを

受け入れるならば食料すら輸入している帝国の国民の半数は餓死する事になります。 

我が帝国は米英蘭に対し、開戦に至る以外に道が残されておりませんでした。

 開戦は12月8日です。 宣戦布告と同時にハワイ,シンガポール,ジャワ,

ボルネオ,グアム,ウェーキを奇襲、これを占領し その後もティモール,

ミッドウェイ,パナマ,カリフォルニア,ロサンジェルス,サンディエゴを

占領しました。

 また、米太平洋艦隊,米豪蘭連合艦隊,英東洋艦隊を撃破しております。

 しかし、我が帝国は侵略国家ではありません。 

これら占領した国は独立を認め、帝国と自由な貿易と今時大戦における中立を

約束してます。


 私は、緒戦において帝国の戦死者及び帝国以上に多くの米英蘭の戦死者に対し、哀悼の

意を表し7日間の喪に服します。 

米英蘭の将兵は命令されて帝国と戦ったのです。 彼らには恨みはありません。 

いや、むしろ米英蘭の死傷者は帝国の奇襲の予想すら教えず国の指導者によって派遣され

戦死したのです。 

彼らは指導者に殺されたと言っても過言ではないでしょう。

 強制は致しませんが、国民のみなさんも帝国の戦死者以外に米英蘭の戦死者にも哀悼の

意を表して頂きたい。」


 この演説で17年の正月は戦勝で沸き立つ史実と違い、静かな正月となっていた。 

だが、それも松の内だけで、国民の士気は大いに盛り上がり、政府,特に海軍には

こぞって寄付をした。


 東条のこの演説は新聞にも掲載され、米英の特派員も本国に打電したため日本に対する

風当たりが弱まってきた。 

麻生の提言により検閲を撤廃し外人記者への規制もゆるめていたのであった。

ひとえに敵国民を味方に付けるという戦略に沿ったものであった。



 年が明けてから始まった国会ではカンカンガクガクの論戦が行われ、毎日新聞紙上を

賑わせていた。 

論点は急増するユダヤ人難民についてであった。 

既に国内では収容しきれないほどの難民がおり、さらに増える傾向にあったからで

あった。 

米内内閣時代の難民救済法案が効を奏していた。

東条の人道的意見に対し、国粋主義者の排斥論が火花を散らしていた。


 ついに東条が樺太を割譲するという爆弾法案を提示した。


 「樺太は元来、我が国固有の領土ではない。 日露戦争で勝利して我が国の領土と

なったものである。 

従って樺太を別の国家として誕生させることで我が国固有の領土が無くなるわけでは

なく、日露戦争前の時点に帰ると思えば良いだけである。

 さらに安住の地を無くした民が我が国を頼ってきたのである。 人道的に領土を与える

事ができるのであれば与えるべきである。」


 だが、国粋主義者は国力の低下,世界の歴史を見ても前例がない等と反論し、議会が

紛糾、乱闘騒ぎの様相を呈した。


しかし、この日は東条が画策した天覧国会であった。 

一時中断となる前に、東条は陛下のご意見を伺うという作戦に打って出た。


 陛下は一言 「与えよ。」 と言われた。


 陛下の鶴の一声で樺太割譲法案は可決の方向で収束していった。

 後に残された問題はすでに移住した住民の保証問題等の細かなことであった。 

こうしてユダヤ人の悲願である自分の国---約束の地---ユダヤ共和国が誕生した。


 このニュースは逐次、外国の特派員によって本国に伝わっていたので世界中が

驚愕した。

特にイギリスでは東条首相の人道的法案に拍手を送る議員は少なくなかった。 

チャーチルですら


 「自国の領土を割譲し新しい国家を作るという発想は我々欧米人には出来ないことで

ある。

欧米人が数世紀に及ぶユダヤ人問題を解決できなかった事を、後進国と見ていた日本が

わずか数日で解決したことは、日本という国を見直す必要がある。」


 と述べていた。 


 このチャーチルの発言以後、イギリスは日本に対し積極的な攻撃を仕掛けてこなく

なった。 

その訳はドイツの東部戦線の急進撃によりソ連がドイツに屈服するかもしれない状況に

なってきており、次の標的はイギリスという憶測が強く、日本と戦うどころではない

状態であった。

 また、東洋艦隊は失ったものの、ペナン島の数万人の敗残兵を間接的に救った日本軍の

行動をみて、こちらから手出ししなければセイロン方面は安泰であるという予想が立って

いたからであった。

宗主国のイギリスが日本に手を出さなくなったので豪州の対日講話の機運はさらに

高まった。


 このニュースで一番苦々しい思いをしたのがルーズベルトであった。 ソ連に日本への

参戦させる工作がやりにくくなったからであった。 ソ連を参戦させようとすると侵攻

途中にユダヤ共和国がある。 ソ連は地形的に樺太に渡り、まずユダヤ共和国を占領する

事は簡単に予想できるので国内のユダヤ人が猛反対するだろう。 

彼らはマスコミの中枢を握っており、反戦の大キャンペーンを展開することが予想

された。

ルーズベルトは迂闊に工作できないのであった。


 また、ニューヨークタイムスの社説では


 「先の我が国への宣戦布告発表といい、年末の植民地国の独立化援助政策といい、

今回の樺太割譲といい、日本は一貫して弱者を救助する政策を取っている。 

日本の主張は正しいしその実践も着実に行っている。 はっきり言って正義は日本に

ある。

 我が国はそのことを認識しなければならない。 

今回の戦争は我が国に正義はなく、利する事すらない。 1日も早く日本と講話すべき

である。」


 この社説が引き金になって反ルーズベルト勢力は日本との講話を議会に提出したので

あった。

だが、ルーズベルトは拒否権でこれに対抗し、対日講話はなかなか進まなかった。 

しかし国内世論はユダヤ人勢力が対日講話のキャンペーンを展開し、急速に対日講話に

傾いていた。


 また、激怒したのがヒトラーであった。 彼にとって殲滅すべきユダヤ人をかばい、

更にユダヤ人国家を作った日本は許し難い物であった。 

予め木戸外相から


 「ユダヤ難民の処理に苦慮しているのでユダヤ人への圧政は止めてほしい。」


 という要請は受けていた。 

しかし、激怒したヒトラーは即刻 リペントロップ外相に命じ、三国同盟の破棄の通達を

してきた。 

ヒトラーにとってソ連が弱体化した為に日本は利用する価値がなくなったのである。

 

 日本に対し宣戦布告すらしようとしたヒトラーを止めたのは以外にもリペントロップ

外相であった。


 「総統閣下、日本にユダヤ人国を作らせておけばいいのです。 

帝国内でのユダヤ人狩りはユダヤ人どもが巧妙に隠れて探し出すのが難しくなってきて

おります。 

 帝国内でこの有様ですから諸外国のユダヤ人を駆り出すのは至難の業です。 

ユダヤ人国家ができれば奴らはこぞってそこに集まるでしょう。 

日本の大使がユダヤ人に優先的にビザを発行するのも目をつむりましょう。 

集まったところを一網打尽にするのです。


 日本は作戦遂行上では寄与しませんがまだまだ利用価値はあります。 例えば、日本に

いる開発陣によるV1号の命中精度や速度の向上、さらにはV2号も完成間近です。 

電子部品の優秀な日本に開発陣を派遣したから出来たことです。 我が国にいては完成は

もっと遅くなっていたでしょう。


 また、ソ連に侵攻している兵士に携帯させている糧秣の中で、軽くて栄養価の高い

乾燥納豆は必需品です。 この乾燥納豆は日本しか生産しておりません。

 さらに、技術提供を受けた酸素魚雷はUボートに使えます。」


 この言葉でヒトラーは宣戦布告を思いとどまった。 なにせ地球の裏側である上に

海軍力が乏しい為だったが、ソ連を制したら次の標的は日本に決めていた。 

ヒトラーにとって侵攻途中にある中国など眼中になかった。


 史実でもソ連侵攻に当たり、ドイツ科学陣は携帯糧秣の開発を行っていた。 

その結果、軽くて栄養価の高い納豆に目を付け、乾燥させたものを日本から輸入し兵士に

携帯させていた。


 欧州ではユダヤ人にとって命のビザが日本大使館で大量に発行された。 

ユダヤ共和国への国際ルートは日本経由しかなかったからだ。 欧州,ソ連に散らばる

ユダヤ人達は自分たちの国が出来たので、リペントロップの言う様に次々と

ユダヤ共和国に集まっていった。


 三国同盟の破棄の通告はドイツだけでなくイタリアからも通告してきた。 

この通告を受けて、東条は密かに蒋介石と中国共産党との密談をする手はずを始めた。


 また、イギリスにも講話工作を働きかけた。 講話条件は、

1.中国問題の不干渉

2.アジア,太平洋地域の新興国家の独立と承認

3.対日経済封鎖の解除

であった。


 イギリスにとってはセイロン以東はあまり重要ではなく、三国同盟も解消された日本と

戦うメリットがなかった。 また、日本軍はラングーン方面には全くやってこず、石油,

ゴム,錫等の物資輸送の為のシーレーン強化に勤めているだけであった。 

さらに、これらの資源は軍隊による略奪や強制徴収ではなく正常な経済行為で入手

していたので、議会も対日感情が柔らかくなり講話を検討していた。

 さらに東条はイギリスも講話成立後は、正常な経済活動による資源の購入は束縛しない

という通達をしていた。 議会では日本の要求をのんで、東南アジアのゴムや錫を貿易で

入手し、対ドイツ戦に備えるべきだという声が出始めていた。



2.



 第25師団がカリフォルニアに到着してからは占領維持を第18師団と交代し、

第18師団は再び輸送船に乗い込んで、第一艦隊と行動を共にした。 

第一艦隊は準備が整うと深夜密かに出撃、一路パナマを目指した。


 米軍の統合参謀本部では大西洋艦隊を使いパナマを奪い返す作戦を練っていたが、

なかなか良い案が出てこなかった。 

それというのも、もし失敗すれば日本軍による閘門の破壊は必至であり、閘門が破壊

されれば太平洋側への物資輸送は困難を極めるからであった。

 それに、パナマを警護している阿蘇型重巡の誘導ロケット弾の推定射程が200km

前後と予想され戦艦が近づく前に一撃をくらうし、落下傘部隊を使おうにも対空

ロケット弾と零式対空弾で輸送機は撃墜されるであろう。 

また、ハルゼー艦隊をおそった謎の海中兵器の存在もあり、うかつに近寄れないと言う

結論しか導き出せなかった。

 

 1月17日に第一艦隊がパナマを通過、リモン湾に集結中という情報が統合参謀本部に

届けられた。 

大西洋艦隊を差し向けて撃破しようと言うところまではすんなりと決まったが、問題は

この第一艦隊が何処を狙っているかと言うところであった。 

ともかく、足の長いP-38ライトニングを索敵に使いその進路を見極め、大西洋艦隊を

急行させると言うこととなった。 


 キューバの近くまで南下している大西洋艦隊の位置は探査衛星により麻生,山本,

小沢の知る所となっていた。


 大西洋艦隊は実質的に第19任務部隊と第20任務部隊からなっていた。 

第一艦隊が何処へ向かうか判らない為、第19任務部隊はキューバ沖,第20任務部隊は

ニューオリンズ沖に展開していた。 

特に第20任務部隊の戦艦ノース・カロライナとワシントンは完成したばかりの新鋭艦で

訓練もそこそこに出撃してきたのだった。


 艦隊編成は

第19任務部隊 司令官 トーマス・C・キンケード少将

 空母 ワスプ,レンジャー 

 艦載機 F4Fワイルドキャット 80機

     SB2Uヘルダイバー  54機

     SBDドーントレス   18機

 戦艦 ニュー・メキシコ,ミシシッピー,アイダホ

 重巡 クインシー,ビンセンス

 軽巡 オハマ

 駆逐艦 22


第20任務艦隊 司令官 ウイリス・A・リー少将

 戦艦 ノース・カロライナ,ワシントン

 重巡 ウイチタ

 軽巡 アトランタ,ブルックリン,フィラデルフィア,サバンナ

 駆逐艦 21


今回もハルゼーは艦船不足でお預けを喰ってしまっていた。


 「まず、空母の部隊を叩きましょう。 こちらは敵の位置が判っていますから、

200海里まで近づいて攻撃機を発進させましょう。

 こちらが近づいていく間はレーダーで敵の索敵機を見つけたら直ちに対空ロケット弾で

撃破して、こちらの位置を悟られないようにします。

 零戦が先行して敵の上空支援機を蹴散らし、急降下爆撃で敵空母の甲板を破壊します。

 戦艦には800kg爆弾を水平爆撃で攻撃し、雷撃機で空母,戦艦にとどめを

刺します。

それからマゼラン海峡を廻ってきた大和,武蔵に新鋭戦艦の部隊を攻撃させます。」


 「ひょっとして小沢中将は戦艦同士の砲撃戦がやってみたいのですか?」


 「うむ、この機会を逃すと戦艦同士の砲撃戦はできなくなるからな。」


 麻生は戦艦大和が生涯で311発しか主砲を撃っていなかったことを思い出した。

それに、これが最後の米艦隊との決戦となるかもしれない。 そう思うと麻生は大和に

砲撃戦をやらせてみたくなった。


 「いいんじゃないですか。 大和,武蔵は共に耐46センチ装甲ですから16インチ

砲弾なんかにはビクともしないでしょう。」


 こうして、大和,武蔵,信濃が間に合うように第一艦隊の出撃は3日ほど遅らされた。


 1月20日に第一艦隊がリモン湾から出撃した。 

第一艦隊出撃の情報はすぐさまキンケイドとリーの両提督に知らされたが、どちらに

向かっているかは判らなかった。 

第一艦隊はキューバ沖に向かっていたが、ニューオリンズ沖に阿蘇型重巡が向かって

おり、ニューオリンズからの索敵機を打ち落としていたのだった。


 キンケイドの艦隊から200海里まで迫った時点で第一派攻撃隊218機が発進した。

小沢中将お得意のアウトレンジ攻撃であった。 キンケイドはこの時点で第一艦隊をまだ

発見できていなかった。

零戦68機が先行し上空で警戒していたF4Fワイルドキャット 13機を瞬時に

たたき落としていた。


 キンケイドは一糸乱れぬ急降下爆撃機,水平爆撃機,雷撃機の攻撃を見て、恐怖のため

金縛り状態になった。 しかも、敵機は重たい魚雷や爆弾を抱えているというのに

戦闘機すら追いつけぬほどの俊足で迫ってくるのである。


 キンケイドの座乗しているワスプは回避運動を繰り返し何とか逃げ出そうとしたが、

最初に急降下してきた九九式艦爆9機の800kg爆弾を甲板に4発命中、至近弾5発も

くらって航行不能になった。

 レンジャーも3発の命中弾を受け、甲板がめくれ上がり航空機の発進が出来なく

なった。 

雷撃隊18機がこの2隻の空母に魚雷を投下、側舷に4発うけたワスプは傾きながら

沈んでいった。

 レンジャーにも3発の魚雷が命中した。 

内1発は機関室直下で爆発し、機関室の床に大穴があいて動けなくなってしまった。 

艦首にも大きな穴があき沈没は時間の問題になった。


 ニュー・メキシコ,ミシシッピー,アイダホには800kgの鉄甲爆弾をかかえた

九七式艦攻が9機づつ水平爆撃を敢行した。 

ニュー・メキシコは第1砲塔と第2砲塔の間の装甲を突き抜け、火薬庫で爆発し、

大音響と共に弾薬が誘爆、第1砲塔が空中に吹き飛んだ。 

また、艦尾にも命中し艦尾に大穴があき、海水が大量に流れ込んできた。

 ミシシッピーは艦首,左舷に命中し艦首がちぎれ、浮力がなくなり見る見るうちに

前のめりに沈んでいった。 

アイダホも艦橋下部,艦尾に命中し航行不能となってしまっていた。


 残った艦爆,艦攻は重巡,軽巡めがけ攻撃を開始した。 上空支援のない艦隊の

末路は悲惨であった。 

空母,戦艦,重巡,軽巡は沈没。 駆逐艦も残存が15にまでなっていた。 

残存の駆逐艦にも第二派攻撃隊157機が襲いかかり、第19任務艦隊は全滅した。

第19任務艦隊の全滅の報告を聞いてハルゼーは


「キンケイドの様な腰抜けに日本艦隊を迎撃させるのが間違っているんだ!」


と毒づいた。 また、航空機が戦艦を撃沈させたことで、自分の航空機主戦論が正しい

事が証明されたとして空母の増産をキング大将に直訴した。



 第19任務艦隊を葬った第一艦隊は暫くして大和,武蔵,信濃と合流し

ニューオリンズ目指して進路を取った。 

ニューオリンズ沖では阿蘇型重巡が敵索敵機を次々にたたき落としていた。

 阿蘇型重巡にとって第20任務艦隊は敵ではなかったが、麻生は大和,武蔵に最初で

最後になるであろう戦艦同士の砲撃戦をやらせる為に攻撃を控えていた。


 24日に阿蘇型重巡と合流した第一艦隊は、第20任務部隊から200海里の所で、

大和,武蔵だけが第20任務艦隊に向かっていき、本体はニューオリンズ攻略のため

進路を変更した。


 この時、リー少将はキンケイド戦死の報告を受け、キューバ沖に向かっていた。 

レーダー室から、山のような物が2つ近づいてきているという報告にリーは噂の大和級

戦艦と直感し、命令を下した。


 「新装備のレーダー射撃の威力を見せてやる。 総員戦闘配置に着け!」


 一方、大和に座乗した小沢は


 「先に敵に撃たしてやろうではないか。 こちらの射程の方が長いのだが、1発も

撃たずに沈めてはかわいそうだからな」


 と余裕であった。


 やがて、お互いの姿が認められると、


 「たった2隻の戦艦で我が第20任務部隊とやり合うなど身の程知らずと言うことを

教えてやろう。 射程に入り次第、砲撃開始せよ!」


 ガガーン,ガガーン,ガガーン,ガガーン,ガガーン

 ノース・カロライナとワシントンの主砲が火を噴いた。 主砲弾の内、1発は武蔵に

命中するコースを取っていた。


 ブオオオオオオオオオオ

 対空機銃が超音速で飛来する主砲弾に向かって弾幕を張ったが、鉄鋼弾には効果が

なく、武蔵に命中した。 しかし、武蔵の分厚い装甲は砲弾をはじき飛ばしていた。


 距離が15000メートルまで接近したときに小沢が攻撃命令を出した。


 ガガガーン,ガガガーン,ガガガーン,ガガガーン,ガガガーン,ガガガーン

 大和,武蔵の各砲塔からは少しずつ時間間隔を開けて砲撃が始まった。 

轟音と共に発射された砲弾は4発がノース・カロライナに、5発がワシントンに

命中した。 

ノース・カロライナは第1砲塔,第2砲塔,艦橋,第4砲塔に命中した。

外れた5発の内3発は海中を魚雷の如く進み、喫水線の下に命中した。

次の瞬間、ノース・カロライナの穴という穴から炎が吹き出した。

大音響と共にノース・カロライナは大爆発を起こしあっという間に海に消えたのだった。


 ワシントンも艦首,第1砲塔,第2砲塔,第3砲塔,艦尾に命中し、炎を吹き上げ

大爆発を起こした。


 大和,武蔵の1撃でノース・カロライナ,ワシントンは早くも轟沈してしまった。

対艦艇用の一式鉄鋼弾の威力を目の当たりにした小沢は、その威力に声もなかった。

 

 残った重巡,軽巡,駆逐艦にも容赦なく主砲,副砲が浴びせかけられ、第20任務

部隊はわずか20分で全滅してしまっていた。 

ここに大西洋艦隊も壊滅し、米国に日本の艦隊を阻止できる艦艇は無くなっていた。

第20任務部隊を撃破した大和,武蔵は第一艦隊と合流すべくニューオリンズへと

急いだ。


 ノース・カロライナとワシントンに対し、一式鉄鋼弾が初めて実践で使われた。

この一式鉄鋼弾は零式対空弾を鉄鋼弾にしたものである。 命中した砲弾は水では

消せない高温の炎を発し、子弾は艦内の全てを切り裂くのである。 1発命中すれば、

たとえ沈没しなくても、敵艦の戦闘力を奪い、ただの箱にすることができるのであった。


 第一艦隊を阻止すべくP-40ウォーホーク 20機,P-39エアコブラ 28機が

迎撃に来たが、零戦の敵ではなかった。 

零戦による制空権の奪取、艦爆,艦攻による航空基地,要塞砲の爆撃、戦艦による

艦砲射撃、第18師団上陸と一連の定石を行いニューオリンズは2日で占領されていた。

 無論、テキサスへ通じる鉄道,主要幹線は破壊され、油田は日本軍が占領していた。 

即日、占領された航空基地には陸攻,重爆,零戦,震電が配備された。


 テキサスの主要基地は13日で制圧された。 

テキサス州知事は徹底抗戦を叫んだが、鉄道は寸断され米陸軍の戦車部隊のM3は日本の

75ミリ砲戦車と歩兵の携帯型成形ロケット弾の前にあえなく撤退してしまっていた。 

また、小沢がテキサスの各都市にメッセージの紙を九七式艦攻でばらまいた。


 「ルーズベルト大統領は石油の禁輸をし、我々が開戦せざるを得ない状況を作り

出した。 

我々が要求するのは石油,資源,食料であり領土ではない。 

我々は市民に銃口を向けるつもりは更々無いので理性ある行動を取って欲しい。 

奴隷制度を追放した米国民の理性に我々は期待する。」


 このメッセージはテキサス住民のみならずアメリカ国民に対日講話の機運を醸し

出した。


 パナマに香港を攻略した第38師団が転戦してきて、陸戦隊は輸送船の乗船し、

駆逐艦の護衛のもと第一艦隊のいるニューオリンズに向かった。


 2月6日に陸戦隊を引き連れて第一艦隊はバミューダに向かった。 


 マイアミ沖で米軍はA-24 54機,F4Fワイルドキャット 45機,

SBDドーントレス 34機,TBDデバステーター 44機,SB2Uヘルダイバー

46機という大編隊で乾坤一擲の賭に出たが、レーダーでその位置を知られ零戦の

待ち伏せにあい、バタバタと叩き落とされていった。 

 運良く零戦をすり抜けた機も、零式対空弾,対空ロケット弾,高角砲,対空機銃の前に

ついに1発の爆弾も落とすことも出来ず全滅してしまった。 

これで大量の航空機を失った米軍は航空機不足に悩むようになるのである。


 12日にはバミューダを無血占領した。 

米軍側も黙って見ていたわけではなく、集められるだけの航空機を集めたが、バミューダ

まで到達できる戦闘機はP-38ライトニングだけであった。

 それでもようやく76機が集まったので、バミューダに向かわせたが性能,技術に勝る

零戦の敵ではなく、かえって損害を増やす結果となった。 

潜水艦も出てきたが、阿蘇型重巡の優れた対潜監視網にかかり、魚雷を発射する前に

発見され、尽く海の藻屑になっていた。

 占領後ただちに、バミューダにも陸攻,重爆,零戦,震電が配備された。


 バミューダへの補給は米潜水艦の攻撃を避けるため、齒獲した対潜索敵能力の優れた

駆逐艦を輸送船の護衛に当てていた。 少なくとも見た目は米輸送船団に見えるので

見間違えて攻撃して来ない可能性もあった。 

何回か米潜水艦に遭遇したが、改造された駆逐艦には対魚雷防御用爆雷も搭載されて

おり、輸送船に被害はなかった。


 更に二式大艇にレーダーと磁気探知機を装備させ、バミューダ,パナマ,

ニューオリンズに配備し、米潜水艦を駆り出していた。 

これにより米潜水艦は効果的に封じ込まれた。


 太平洋側のカリフォルニアへは伊300型輸送潜水艦が補給に当たっていた。 

補給と言っても石油は油田から取れるし、弾薬もカリフォルニアの工場で作らせる事が

でき、糧秣も現地から購入できるので航空機の備品やレーダー,対空機銃,特殊な誘導弾

ぐらいなものであった。 

簡単な航空機の修理などはカリフォルニアの工場で行っており、兵站,兵器の補充は

心配することが無くなってきていた。


 バミューダを爆撃するために、B-17フォートレス 23機,B-24リベレーター

15機がかき集められた。 

大量の零戦に守られている為、昼間の爆撃は断念し夜間爆撃を敢行した。 

しかし、零戦よりも高性能なレーダーを搭載し、夜間戦闘も可能な震電の前に爆撃は

失敗し、生還できた機は皆無という惨憺たる有様であった。


 バミューダを占領した第一艦隊は大和,武蔵,信濃を遊撃隊として分派し、この3隻が

大西洋岸に点在する海軍工廠,軍事施設の砲撃,爆撃を行い、内陸部はロサンジェルス,

ニューオリンズ,バミューダと東西南から油田,軍需工場に向け爆撃機で攻撃する作戦が

開始された。 当然、阿蘇型重巡が2隻、防空対潜警戒に付き添った。


 この時期、米軍で日本軍を迎え撃てる航空機は500機足らずであり、それも経験

不足のパイロットが操縦するものであった。 

その500機もカリフォルニア方面,テキサス方面,大西洋岸に配備せねばならず、

必然的に敵航空機による制空能力は薄まっていった。


 しかも、圧倒的多数でなければ零戦を撃退できないので、「零戦に会ったら逃げろ」

といわれる様になっていた。 ドイツ空軍に『双胴の悪魔』と呼ばれた

P-38ライトニングでさえ零戦の前にはかたなしで、蜘蛛の子を散らすように

逃げまどうだけであった。

これらの迎撃機の任務は零戦と格闘するのではなく、爆撃機を撃墜もしくは爆撃コースを

そらす為であった。 従って5隻だけの遊撃隊といえどこれを迎え撃つ敵がいなかった。


 戦艦大和,武蔵,空母信濃は大西洋岸の海軍工廠,軍事基地,航空基地の砲撃,爆撃を

行い、製造中の船舶はことごとく破壊されていった。 

竣工間際の空母がドックの中で破壊されたことは、何度もお預けを喰ったハルゼーに

とって大変なショックだったにちがいない。

 米軍もだまってやられてはおらず、この5隻の遊撃艦隊を潜水艦で撃退しようとしたが、

重巡阿蘇の優秀な対潜警戒網にかかり、魚雷を発射できる位置に近づく前に撃沈され、

被害を大きくしていた。

阿蘇型重巡にスクリュー音は存在しないので、米潜水艦は敵が近づいた事すら判らず、

誘導魚雷が発射されて初めて敵の存在を知るので回避すらできないのである。


また、艦砲射撃の届かない内陸部の軍事工場,油田は重爆,陸攻機が連日、爆弾の雨を

降らしていた。 

あくまでも都市には攻撃をせず、徹底的に軍需工場,備蓄基地,軍事施設,交通網,

油田を破壊する作戦を採っていた。


 麻生の提案により、カリフォルニア,テキサス,バミューダを制圧した日本軍は、

現地のラジオ局に昨年行ったルーズベルトの対日政策と経済封鎖、ハル・ノートの

真意説明し、早期対日講話実現の要求を連日のように行った。

 このマスメディアを使った大衆への訴えは次第に大きな反共を呼び始めた。 

特に、新聞社,ラジオ局の責任者,経営者にユダヤ人が多く、ユダヤ共和国を建国した

日本に対し好意的になっており、ルーズベルトの政策を厳しく批判した。



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