パラマス号③です
右舷に被弾損傷は軽微、イバライガ、戦艦のバリアー貫通を確認。
左舷バリアー貫通、中微の損傷、自立ブレイカーに影響、戦艦の水平維持はこれ以上の損傷で制御できなくなります。
「イバライガの物理的消去を提案します」
フルアーマーカイザンクを出撃させ、イバライガ除去作戦を提案します──
バウンス美沙子そう艦長に進言した。
しかし、艦長の星崎一世は渋っていた。
その原因は過去に遡る。
まだ地球でパイロット訓練を受けていた頃、シミュレーション講義中の教官・長林治の話を思い出していた。
「宇宙には様々な罠が張られた航海路が存在する。
ここを通る者を試す為だけに作られた航海路。
楽を取るにはそれ相応の代償を払う──代償型航路というものだ。」
プレイルーティスト(遊路家)が作り出した、その代償型航路──
通れるものなら通ってみろ、という遊び心を持った危険な航路だ。
「プレイルーティスト…あれは遊路家だ」
星崎一世は呟いた。
ここでエース機フルアーマーカイザンクの投入は、イバライガに取り込まれる懸念が大きい。
それよりも、パラマス号の操縦と戦艦のバリアーで突破する方が成功率は高い。
パラマス号を取り込むには、その大きさから最低20分は必要だろう。
ケサキレイナが作戦に口を出してきた。
「私のサイコキネシスでも効かない? 短時間なら100倍まで火力上げられるけど…」
星崎一世は一瞬思った。
ケサキレイナの底知れぬ力なら──。
「いいじゃん、いいじゃん、それ!」
横島田光希が、重い雰囲気をぶち壊す勢いでレイナを援護した。
「俺のゼロ・グラも、最大で使えば今10倍までは出せる。
冷凍睡眠でパワーも満タンだし」
「イヤ……おまえ達の力は十二分に知っている。
だが相手はプレイルーティストだ。出撃命令は出せない」
そのとき、バウンス美沙子が提案した。
「では、艦のシステムAIとレイナのサイコキネシスのバックアップを貰えれば、私がこの航海路攻略してみます。」
美沙子の並々ならぬ闘志がうかがえた。
その時、艦の巨大モニターがプレイルーティストによってハッキングされ、シューティングゲームのような画面が映し出された。
そして、ゲームミュージックと音声が流れ──
「我の提案を享受したと受け取った。
さあ、攻略できればここを永久に通してやろう」
バウンス美沙子の目が虹色に輝く。
「これは…AREAGAMEテリトル」
美沙子の得意とするエリアを取っていくゲームであった。
今や彼女は、作戦指揮官としての顔を離れ、
ただ一人のゲーマーとして覚醒したのだった。
星崎一世、横島田光希、ケサキレイナ──艦隊の一同は、
バウンス美沙子のゲーマーオーラに包まれ、まるでゲーム画面の中に配置されたかのようだった。
プレイルーティストも興味を持った。
「その方…もしや伝説のブレイクゲーマー……」
ニヤリと笑うバウンス美沙子の百列タッピングが
前衛ボスを一瞬で消滅させ、中衛ボスのエリアまで攻撃のくさびを打ち込む。エリアは一瞬のうちに青に変わった。
これはその筋では有名な、切り込み方であった。
後手に回るプレイルーティストに対し、後方に配置された戦艦のプレーヤーたちが、
くさび型の陣形で応戦。
ゲームエリアを分断するように、フィールドの中央に一本の断絶が走った。まるで編集画面が強制的に引き裂かれたかのように、プレイルーティストの陣地は縦一直線に割れた。
「これは使い古された手だが、初見同士の攻め方には絶大な効果がある」
バウンス美沙子が挑発する。
「これが決まったら、私は負けたことないのよ。
少々、私を舐めプしたようね。これ以上やっても無駄よ。さっさと降参(白旗)出しなさい。」
美沙子は淀みない操作でゲームを攻略しながら、自陣に幾重もの防御壁を構築していく。プレイルーティストが描こうとする航路の接点をすべて先読みし、進入不可のブロックで埋め尽くしていくのだ。
もう攻撃は不要。防御こそ至極の勝ち筋であった。
バウンス美沙子の百戦錬磨の戦術の前に、プレイルーティストはもはや思考することも叶わなかった。
初手で、ゲームは決まったのだ。
モニターにWINの文字が光る。
プレイルーティストも、無駄な反撃はご法度である。
「我らプレイルーティスト(遊路家)を初手で負かした者は、今まで存在せぬ。お見事であった。
航海路をこれから自由に使うが良い。
そして、我が持つすべての航海路も開通させよう、自由にせよ。
バウンス美沙子、最高の相手であった。」
星崎一世は思った。
「バウンス美沙子も、アイツら二人と同じチートを使えるのか……?」
おわり




