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元魔王の村娘は銃と魔法の世界で返り咲く

作者: 結城 からく
掲載日:2026/01/29

 聖剣が首にめり込む。

 焼けるような痛みが襲ってきた。

 刃が皮膚を炙り、肉を切り裂き、骨を砕き割って通過していく。


 激しく回転する視界。

 首の断面から血を噴き出す己の胴体と、光り輝く聖剣を振り抜く勇者が見えた。


「次は……次こそ、は……」


 そこで俺の意識は途切れた。




 ◆




 次に目覚めたのは、頭部に弾丸を受けた瞬間だった。

 仰け反った俺は床に倒れる。

 額から流れ出した血で視界が赤く染まっていった。


「……っ」


 両手を伸ばす。

 細く小さな手だ。

 落ちていた鏡の破片を拾い、己の顔を確かめる。

 そこに映ったのは、金髪碧眼の少女だった。


(俺は魔王アベル……だった。今は違うようだが)


 勇者に殺された俺は、この平凡で無力な村娘に転生したらしい。

 頭を撃たれた衝撃で奇跡的に前世の記憶――すなわち魔王アベルとしての人格が蘇ったのだ。

 普通はありえない現象だが、魔王の魂は不滅に近い。

 こういったことも発生しても不思議ではなかった。


「脆い肉体に微弱な魔力……よりにもよって人間に転生するとは……屈辱でしかないな」


 ぼやく俺は魔術で頭部を再生させて立ち上がる。


 目の前には軍服を着た人間の男がいた。

 手には拳銃を持ち、ズボンを膝まで下ろして下半身を露出させている。

 男は間の抜けた顔で驚いていた。


「えっ、なんで……」


「略奪先の小娘を犯そうとしたが抵抗され、怒り狂って射殺……清々しいほど醜いな、人間」


 俺は指を鳴らす。

 その瞬間、男の全身は黒い炎に包まれた。

 男は絶叫する間もなく死に絶えてバラバラになって崩れる。


 俺は自分の腕を見やる。

 術の行使によって指先から肘までが炭化していた。


「ふむ、いつもの一割未満の出力でも耐えられんか」


 かなり手加減をしなければ自滅しそうだ。

 肉体の脆弱ぶりに感心しつつ、俺は腕を再生させて建物の外に出る。

 そこでは敵兵が村人達を虐殺していた。


 俺は魔力を練り上げながら告げる。


「頭が高いぞ、人間」


 極小の炎を散らして敵兵だけを焼き殺していく。

 村人に被害を出さないように意識するのは手間だが、俺にとっては造作もないことだった。

 そうして周辺一帯の敵兵部隊を殲滅すると、村人達は涙を流して感謝を伝えてきた。


(……ほう、悪くない気分だ)


 俺は村人達を適当にあしらいつつ、今後について考える。

 せっかく前世の記憶が蘇ったのだ。

 やることはただ一つである。


 ――こうして再び魔王に返り咲くための戦争が始まった。

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― 新着の感想 ―
こんにちは。 何かとんでもない長編小説のプロローグといった感じですね。 こうやって、どんどん配下を集めて、領土を持ち、広げていくのでしょうか。 勇者はとっくに死んでいて、「次がない」事に気付いたら、怒…
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