元魔王の村娘は銃と魔法の世界で返り咲く
聖剣が首にめり込む。
焼けるような痛みが襲ってきた。
刃が皮膚を炙り、肉を切り裂き、骨を砕き割って通過していく。
激しく回転する視界。
首の断面から血を噴き出す己の胴体と、光り輝く聖剣を振り抜く勇者が見えた。
「次は……次こそ、は……」
そこで俺の意識は途切れた。
◆
次に目覚めたのは、頭部に弾丸を受けた瞬間だった。
仰け反った俺は床に倒れる。
額から流れ出した血で視界が赤く染まっていった。
「……っ」
両手を伸ばす。
細く小さな手だ。
落ちていた鏡の破片を拾い、己の顔を確かめる。
そこに映ったのは、金髪碧眼の少女だった。
(俺は魔王アベル……だった。今は違うようだが)
勇者に殺された俺は、この平凡で無力な村娘に転生したらしい。
頭を撃たれた衝撃で奇跡的に前世の記憶――すなわち魔王アベルとしての人格が蘇ったのだ。
普通はありえない現象だが、魔王の魂は不滅に近い。
こういったことも発生しても不思議ではなかった。
「脆い肉体に微弱な魔力……よりにもよって人間に転生するとは……屈辱でしかないな」
ぼやく俺は魔術で頭部を再生させて立ち上がる。
目の前には軍服を着た人間の男がいた。
手には拳銃を持ち、ズボンを膝まで下ろして下半身を露出させている。
男は間の抜けた顔で驚いていた。
「えっ、なんで……」
「略奪先の小娘を犯そうとしたが抵抗され、怒り狂って射殺……清々しいほど醜いな、人間」
俺は指を鳴らす。
その瞬間、男の全身は黒い炎に包まれた。
男は絶叫する間もなく死に絶えてバラバラになって崩れる。
俺は自分の腕を見やる。
術の行使によって指先から肘までが炭化していた。
「ふむ、いつもの一割未満の出力でも耐えられんか」
かなり手加減をしなければ自滅しそうだ。
肉体の脆弱ぶりに感心しつつ、俺は腕を再生させて建物の外に出る。
そこでは敵兵が村人達を虐殺していた。
俺は魔力を練り上げながら告げる。
「頭が高いぞ、人間」
極小の炎を散らして敵兵だけを焼き殺していく。
村人に被害を出さないように意識するのは手間だが、俺にとっては造作もないことだった。
そうして周辺一帯の敵兵部隊を殲滅すると、村人達は涙を流して感謝を伝えてきた。
(……ほう、悪くない気分だ)
俺は村人達を適当にあしらいつつ、今後について考える。
せっかく前世の記憶が蘇ったのだ。
やることはただ一つである。
――こうして再び魔王に返り咲くための戦争が始まった。




