一般的に
麗らかな春の日差しのような笑顔の女の子。
スポイトで水を垂らすように泣く女の子。
鈴を鳴らすように笑う女の子。
いつも静かで相手を一番に考える女の子。
目が離せないような愛くるしさがある女の子。
周囲から守られるひ弱で華奢な女の子。
背が低くて細くて色白な女の子。
目が大きくて髪が長い女の子。
そういった女の子が一般的には好意を寄せられる。一方で彼女は全く違う。
劇場のスポットライトのように眩しい笑顔。
満杯の水が入ったバケツをひっくり返すように泣く姿。
口を大きく開けて手を叩いて笑う様子。
いつも明るくて自分の意見を大切にしている。
目を離しても生きていけるたくましさがある。
周囲を守ろうとする力強さと頼もしさを持つ。
背が高くてガタイが良くて日焼けした肌。
切れ長の瞳と短く切った髪の毛。
世間一般の枠をこれでもかと言うほどぶち破っている彼女。
彼女は普通では無い。
誰も彼女を異性として好きにならなかった。
私を除いて。
四季が転々と移ろうように、彼女の感情表現は豊かだった。
嬉しい時は顔がしわくちゃになるほど微笑み、怒った時には髪が逆立つほどの気迫を見せ、悲しい時は雷雨のように号泣し、楽しい時は大きな声をあげて賑やかに笑う。
乙女心が秋の空に例えられるように、彼女の表情もコロコロと変化した。
初めて彼女を見た日、衝撃を受けた。
野良犬をいじめる子供に怒鳴り散らし、そっと優しく野良犬を抱き抱えて走り去っていった。
気になってあとを追うと彼女の家の庭で野良犬を丁寧に洗っていた。彼女は顔を真っ赤にして泣いていた。
「ごめんね、ごめんね、痛かったね。」
さっきまで鬼の顔をして、そうかと思ったら天女のように微笑み、今はホースから出る水とほとんど変わらない勢いで涙を流している。
また日が経って彼女を見かけた。
あの日の野良犬を連れて楽しそうに散歩していた。時々走って、疲れたのか歩き始めて、また走り出す。彼女には何個も顔があるのかと思った。今は直視できないほどの笑顔をしている。
彼女は私を知らなかった。
そのため私から話しかけられた時、彼女は目を大きく見開いた顔をしていた。
「あの、犬可愛いですね。」
勇気を振り絞って出た最初の言葉がこれだった。彼女はすぐに目を輝かせて
「この子クッキーっていうの!触る?」
と私に大切な犬を触らせてくれた。
「私はね、男みたいなんだって」
急にそんなことを言われると思ってなくてすっとんきょうな声が出てしまった。
「女の子はおしとやかで清楚で身勝手なことをしないの。お父さんにもクラスメイトにもいつも言われる。お前は真反対だから男なんだろうって。」
「同じ人間なんですから変わらないですよ。」
気づいたら口に出していた。
彼女は少し困ったように笑って
「ありがとう」と言った。
それから交流が続いて気づいたらプロポーズしていた。
子供の頃によく一緒に話した公園で、きちんとした正装もせず、指輪すら持っていなかった。
「初めて見た時からずっと好きだった。これからも一緒にいてほしい。」
隣に座る彼女は必死に泣くのを堪えていた。
「賑やかな君の表情をいつまでもそばで見ていたい。同じ思い出を今までもこれからもずっと大切にしていきたい。」
私はベンチを降り彼女の正面に立ち片膝をついて黒色の瞳をじっと見つめた。
「私と結婚してください。」
彼女は泣くのが我慢できなくなり途切れ途切れになりながらも言った。
「こちらこそよろしくお願いします。」
彼女がそう言った後に何か気づいたように肩を震わせた。
「どうしたの?」
「いや、だって…」
彼女の表情がどんどん明るくなっていく。
「指輪持ってないのに膝ついたの?」
気づいたら途端に恥ずかしくなってしまった。
「確かに、勝手にポケットに入ってると思い込んでたのかも。」
「なにそれ!意味わかんない」
あまりのおかしさに2人とも顔を見合せて大笑いした。
今でもよく聞かれるのが、何故変わり者の彼女と結婚したのかということだ。
一般的な女の子とはかけ離れている彼女を何故好きになったのかと。
彼女は自然体だった。春のように優しく寄り添い、夏のように熱く励まして、秋のようにすずしく慰め、冬のような冷たさも心地よかった。
彼女の寝顔を見る度にいつも思う。
彼女の普通と世間の普通は全く違う。
彼女は私の中で最も可愛らしい女の子だ。
そう思う私も一般的にはズレているのかもしれない。




