誤解しないで
小屋、というか家に着いたのでナトにお茶を出させる。
「ナト、客人だ。お茶を用意しろ。新茶でな?」
「は、はい!」
女性たちを中に入らせ、くたばってる少女を椅子に括り付けておいた。
「木造の家、少し埃っぽいですが雰囲気のいいお家ですね。」
「なんだ?文句があるならこいつに言え。掃除をさぼるな。」
「すみっまっせん!っち。」
「聞こえてるぞ。逆らうな。」
お茶を持ってきたナトの頭を軽く小突く。
ナトは不満げな態度になったが、その様子を見ていた女性たちはくすっと笑っていた。
「さて、肉でもつまみながら話すとしようか。」
「奥様、ここは私が。」
「任せたわ。」
「では、単刀直入に言おう。お前たちは何者だ?」
この問いに一瞬口ごもるような素振りを見せたが話してくれた。
「私たちはニュードラウ王国領所属、タルーナ家の者です。」
「聞いたことが無い土地名と家柄だな。」
「質問良いでしょうか。ここはどこですか?」
「あぁ、ここは...。」
なんといえばいいか。
僻地も僻地な場所だからな。
普通の人はここには近づかない。
説明が難しい(面倒)からそのまま言うことにした。
「ここは、辺境、ビション街だ。聞いた音があるだろ?」
「もしかして、あの”世界危険地帯TOP5”に入ってた場所ですか!?そんな遠くに...。」
「その本は知らんが、危険なのは間違ってない。恐らくそうなのであろう。」
そう言うと、女性たちは黙り込んでしまった。
「何が書かれてたのかは知らんが、ここでは人、生物、魔物、全てが無法だ。規則、ルール、法律は存在しない。」
「血に溺れた街という二つ名の通りですね。」
まてまて、なんだその異名は。血なんて残さんわ。
「まぁ、ここと近くの街はこの地帯の中でも安全な方だ。ここにも俺の結界は張ってあるしな。」
「ナトが毎日監視してますので!」
ナトは一旦無視だ。
「それで、なぜあの男から逃げていたんだ?」
「!.........。あいつは我が家と家族同然の仲間と土地を焼き尽くした悪です。夫と仲間、帰る場所を奪われました。」
「そうか。で、王族直属魔戦士長、”戦争のチャールド” だっけか?と、ドン・ココンという男の関係について何か知ってることは無いか?」
あまりにも興味無さそうに答えてしまった。
「貴方には感情が無いのですね。」
「なんだ?同情してほしいのか?俺は俺の知りたいことだけを知れればいいんだ。」
「奥様!落ち着いてください。」
「おい、メイド。何か知ってるか?」
子供を抱えてる女性の方は、動揺が激しく情緒が怪しくなってきたので奥の部屋で休むようナトに案内させた。
「私が所属していた国は、ニュードラウ王国。その王国を護る最強の軍隊の指揮官が5人います。
その内の一人が先ほどの王族直属魔戦士長、”戦争のチャールド”。
貴方が探してるドン・ココンというのは同じく、王族直属万能士長、”万物のドン”という人物でしょう。」
「ほう、そのドンは冒険者か?」
「はい、冒険者であり、二つ名持ちの特殊な者です。」
「なるほど。今回の仕事の依頼主はそのドンなんだ。」
「!?」
「提示してきた条件は二つ。
あの子供を攫い、達成したら金。もしくはナトを差し出す。
こいつはどうやら報酬という意味を知らないで生きてきたやつらしい。
なぜ、依頼を出したら、依頼主に富が入ると思うんだ。馬鹿馬鹿しい。」
「馬鹿ですね。」
「あぁ、俺達に喧嘩を売ったということになる。」
「つまり?」
「俺達はその王国と依頼主を殺す。嘘の仕事を流したやつも殺す。お前たちには迷惑をかけた。その国は亡ぶことになるが、せめて帰るべき場所には送ってったやる。どうだ?」
「いいでしょう。私たちにとってはメリットでしかありません。奥様とお嬢様を護るためなら、私は覚悟を決めます。」
「何の覚悟かは知らんが、お前たちは道案内をしてほしい。行くといっても、どこかも分からないとちだからな。まぁ、新しい仕事だ。頑張らさせていただくとしよう。」