謎だらけの
土埃と飛散物、衝撃波が落ち着いてきた。
俺が張った結界も機能している。
周りを見てみるとまだ若干、爆発が続いている所もあったが最初の大爆発に比べれば気にしなくてもいい程度だった。
「いやはや!こんなお芝居にこれほどの魔法を使うことになるとは!私も成長が足らないのでしょうかね。」
男の周囲には可視できる半透明な結界が張られていた。
先ほどの魔法は発動者を巻き込むタイプの魔法だったのか。
戦争魔法、面白そうだな。今度時間が有ったら研究してみるか。
「あー、さっさと殺して国に帰らなくては。お腹もすいてきたし、今夜は何を...、ぐっ!」
「ばれちゃった。」
男の腹からは短剣が飛び出ていた。
大がかりな魔法の後には大きな油断と慢心、隙が生まれる。
ナト、しっかりと勉強できてるじゃないか。うんうん。
男の口と腹から大量の血が溢れる。
それと同時に男の周囲にあった結界も砕け散った。
「な、なぜ?」
「あれが魔法?ふざけるな。蝋燭の灯かと思った。」
「蝋燭...。」
「さっさと死んで!」
ナトの手に力が入り、さらに短剣がめり込む。
「ナヴィー、そこまでだ。一旦俺に任せろ。」
「やだ。」
「やだじゃない。命令だ。」
そう言うと、ナトはふてくされた顔で短剣から手を放し、後退した。
あのままでは死んでしまう。情報はあればあるだけ良い。吐かせてから殺すというのを学んでもらわなくては。
「この結界は俺が張った。後ろにいたやつらはここにはいない。質問に答えてもらうぞ。」
「...、拷問です...か。私は......強いですよ?」
「ドン・ココンという名に聞き覚えは?」
「”選定者”...?」
「その二つ名は聞いたことが無いが、今回、ドンに依頼された。」
「なる...ほど、嵌められた......訳です...か。」
「弟子が迷惑をかけたな。あちらにいる女性達は預からせてもらう。」
「ふっ、神に見放されたか。」
「?どこを見てる?」
男は俺の目ではなく、さらにその先を見ていた。
後ろを振り返って見ると、空中に人が浮かんでいた。
その手には巨大な鎌を持っており、先端からは液体が垂れていた。
「回収の時間だ。」
「戦争は、再び...蘇る。」
鎌を投げられ、こちらに飛んできたので迎撃態勢に入る。
結界にあたって弾け飛ぶと予想していたが、予想とは裏腹に鎌は結界ごと俺の体をすり抜けていった。
そして、男には直撃した。
男の体は真っ二つとなり、鎌に液体を吸われ続けていた。
「また、会おう。次は確実に...殺す!」
男は鎌に全て吸収され跡形もなく消え去ってしまった。
鎌を投げた男を見る。
仮面をつけているが、見た目からはナトと同じくらいの年の女の子に見えた。
鎌が再び少女の手に戻ると、鎌を大きく振りかざし俺の結界を割ろうとした。
が、見事に弾かれ、非常に困惑していた。
「ちと特殊でな俺の魔法は。すまんが拘束させてもらう。」
「y d 、t k m r m n k。」
なんて言ってるかよく分からないが、少女の背後にナトが現れた。
ナトは背中に蹴りを入れ、少女を吹き飛ばした。
落ちた衝撃で少女は意識を失っていたが、腕に結界を張り拘束した。
「貴方たちは敵ですか?」
メイドが聞いてきた。
「今は第三者と言ったところか。敵ではないが協力もしない。だが、俺たちの仕事はそこの女の子なんだ。今夜は遅い。ここからさらに歩いたところに小屋がある。すまんがそちらに来てもらうぞ。」
「お嬢様の身の安全のためにもついていった方がよろしいかと。」
「そうね。すごくお強い方だし、抵抗できないもんね。分かったわ、案内よろしくお願いします。」
「ナヴィー、いやナトもいいな?」
「あっ!偽名の意味が無くなっちゃったぁ。」
ナトはすっかり落ち着いていつも通りになった。
ナトの変わりようにメイド達は困惑していた。
結界を解除し、帰路についた。