余裕をもって
ナトが街のお茶屋さんから茶葉を買って戻ってきた。
俺はその間に今回の仕事の持ち物を準備していた。
明後日と言っても、今回の仕事は何か裏がある、絶対長引くと予想しているので穴が無いようしっかりと準備しているのだ。
小銭が入っている小袋、カバー付きの短剣と黒く小さい円柱の棒2本、前に狩ったイノシシで作っておいたジャーキー、空の瓶と魔力が込められた魔水の瓶をそれぞれ2本ずつ、後はそれらが入る中ぐらいの背負い袋を用意すればいい。
「師匠!もう準備しているのですね!茶葉も持っていきます?」
「いらん。そこの棚に置いといてくれ。余った小銭は貯金しとけ。」
「わーい。ナトも準備しなきゃ。」
「軽めにしとけよ?」
「えーっと、これと、それと...あとこれも!」
そう言ってナトが持ってきたものを机の上に並べてみた。
まだ乾燥しきっていないジャーキー、埃を被った布、使い込んで変色してるカバー付きの短剣、火打石、紐、着替え、洗い残しのある瓶などなどだった。
俺はため息をついた。
「おまえは旅行にでも行くのか?早く終われば2、30分程度。万が一長引いたとしても半日ぐらいだろ。大体何に使うんだその火打石と紐は。後、もう一回洗っとけその瓶。」
「えへへぇ。確かにそうかもぉ。その二つはいざという時の火起こしセット!瓶は...あれ、汚れてた。」
「着替えもいらん。動きやすくて、最低限......と1個まで余分な物を持っていくのを許可しよう。」
「あれれぇ?師匠も何か持っていきたくなったの?例えばお人形さんとか...?」
「馬鹿言え、遊びで仕事をやるんなら、お前を置いていくぞ。」
「冗談ですよ~あはは...。」
「そろそろ夕飯だ。どうせ街に茶葉を買いに行ったとき、余分な物も買って来たんだろ?」
「な、なぜそれを......!」
「今晩はそれを食べようか。」
ナトが後ろで隠してた、見え見えの袋にはパンが入っていた。
「ナトの、お菓子がぁ...。」
「隠すんだったら、もっと努力しろ。食べるから、手洗ってこい。」
「はぁーい。」