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魔法士

「あぁ!そんなとこに移動してくるからぁ!!」


 本をどかす音が近づいてくる。


「でも結界張らなかったのは偉いぞ!よく覚えていてくれた!嬉しいぞ私は。」

「いいから、さっさと片付けろ!」

「っひ!ごめんよ。読書してたら肘を本棚にぶつけてしまったんだ!そこに君らが移動してきた。

即ち私は悪くない!」

「手を動かせ、重いんだよこの本!」

「この本は!学術系統、第三節『バロックの踏破』ではないか!探してたぞ!!」


 話を聞かないこいつにいらいらが積もって来たので警告をする。


「今からこの本を即刻どかさなかった場合、結界張るぞ!?」

「おっとっと、それだけは勘弁してね!ごめんごめん、ほら、よいっしょ!」


 できれば綺麗な人に救いあげていただきたかったが、俺の手を救い上げたのは、冴えないじじいだった。

それも片手に本を持ちながら、悪気はないと一心に主張してくる野郎だ。

服を正し、埃を振り払う。

ナトもこの本に吞み込まれたらしく、お星さまが見えているようだった。


「ししょー。部屋の中にお星さまが見えますぅー。」

「目を覚ませ。文句はこのじじいに言え。」


 ナトを起こし、じじいを睨みつけた。


「もーう!君らが来るのいつぶりかな?久しぶりの出会いだねぇ。」

「衝撃すぎてもう帰りたいけどな。」

「まぁまぁ、お茶でも飲んで。ほらっ!」


 差し出してきたのは客に差し出すとは思えない色をしたお茶...?

焦げ茶色のお茶に赤い実が入っていた。


「お前、これ何の茶葉と実だ?毒でもいれてるよな...。」

「それは健康茶!オリジナルのブレンド茶!そこに庭で育ててる、カックリの実を入れたの。」


 茶葉についてははぐらかせられたがカックリの実か。

生のままだと魔力を徐々に回復させる貴重な木の実だが、焼いたり、煮たり火を通すと毒性が増し、逆に魔力を奪う危険な木の実でもある。

ちょっとまてよ...。


「ほら飲んで!」

「おい。これ飲んだらダメだろ。お湯の名中に実入ってるじゃねえか、毒だぞ!」

「ほーん、ばれたか。流石にきづかれちゃうか!」


 悪びれない顔でおちょくってくるようにこちらを見てくる。


「はぁ、前にもこんなことされた気がするが、いいや。」

「懐大きいくて私嬉しい!」

「無視。ナト、アレをこいつに見せろ。」

「はぁい。」

「むむ?これは...。」

「見たことないだろ?今日なこれが家に...。」

「あぁ、ニュードラウ王国の量産型の魔法士ですな。」

「ん?こいつについて知ってるのか?

「はい、詳しく説明するので一旦こちらに。」


 急にスンと落ち着き淡々と説明を始めたこいつを見て鳥肌が立ったような気がした。

貴重な本が!とか言ってたくせに本を踏みつけながら廊下を進んでいる。

俺は流石に気が引けたので本が落ちたないところを歩いてついていった。

接待室と書かれた部屋に入り対面するように座った。


「どれについて聞きたいですかな?」

「そうだな、まずこいつは何なんだ?いきなり自害して絶命したからよく分からないんだ。」

「ふむ。これはニュードラウ王国が誇る技術の結晶、量産型魔法士ですな。

その中でもここの部分。」


 指をさしたのは、目の下の隈。


「隈か?」

「いえ、これは識別模様ですな。ちょっとお待ちを。」


 そういって席を立ち、後ろの方にある本棚から一冊の本を取って戻ってきた。

ぺらぺらとページをめくり、あるページを見せてきた。


「これはニュードラウ王国が発行してる技術大全です。

これのここのページ、この魔法士の特徴と一致します。」


 そこにはこの女の子と同じような顔の絵が何体も描かれていた。

それぞれ着ている服が異なり、使用している武器についても詳細が書かれていた。

あの夜見た、巨大な鎌についても説明が書かれていた。


「この鎌を使っていたな。」

「ほう?この魔法士には戦闘モードは搭載されていないはずなんですがね。」

「そういえば、こいつが自害した時、腕輪が一緒のタイミングで砕けたんだよな。」

「もしかして、このような腕輪ではありませんでしたか?」


 本に挟まっていた一枚の写真を見せてきた。

俺が見た腕輪と形は一致していたが、はまっている宝石の色が違かった。


「俺が見たのはこの宝石が黒いのやつだな。」

「黒?知らない宝石ですな。分かりました。こちらで少し調べさせていただきます。そのためにここに来たのでしょ?」

「流石、こういうところは察しが良い。」

「ははは。」

「そもそも、ニュードラウ王国っていうのは何なんだ?」

「ここ最近できた大国ですな。辺境に住んでいたなら知ってるはずでは?」

「いや、知らん。街の人たちからも、情報屋からもそのようなことは聞いていない。」

「もしかすると、昔からある辺境のことをニュードラウ王国の人たちは知らない可能性がありますな。

近づきたくない森に囲まれてる場所ですから、人が住んでるということを認知してないのでしょう。」

「ありえるな。」


 こんな感じでスムーズに会話が進み、ナトがかなり静かにしていたので見てみたら、

今にも倒れそうな青ざめた顔をして斜め上を眺めていた。


「何をやっているんだお前は...?」

「あぁ、ししょー。力がぬけてぇ。」

「お前まさか、あの茶飲んだのか?」

「美味しいお茶でしたぁ。」


 俺は大きなため息をつき、魔力欠乏症になったナトを横に寝かせた。


「茶を出したお前の責任だ。カックリの実を食べさせろ。」

「んー。まさか本当に飲むとは...。ま、私の責任ね!ちょっと待っててね~。」

「ほら、ナトこの数字が見えるか?」


 指で2という数字をつくった。


「ん~?4?」

「こりゃ重症だな。」


 ナトがくたばったので一旦、話は中断して、ナトの回復に専念した。

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