謎々
立て続けに訪問者が来たせいで、いつもより疲れてる気がする。
どうやってこの家を特定したのかを調べないと、またやってくる可能性がある。
俺は、気絶してる女の子をじっくり観察してみた。
眼の下には薄っすらと隈が見える。
このぐらいの女の子にしてはだいぶやつれた顔つきに見える。
服装は見たことのない素材で作られており、見た感じでは貧しくは無さそうに感じた。
細い腕には黒い宝石がはめられた腕輪を身に着けていた。
その腕輪に触ろうとすると、バチッと電気が走り、俺の結界内だというのに弾かれてしまった。
ふと女の子の顔を見てみると、何をするんだという反抗的な視線でことらを見ていた。
「......あの人は?」
「あ?あぁ、ここに来た人はお帰りしていただいた。戻ってこられるかは人次第だけどな。」
「じゃぁ、私も帰る。」
女の子はそう言い、急に苦しそうな表情をしたかと思えば泡を吹いて全身から力が抜けていった。
腕輪はピキッと音を立て粉々に砕けた。
俺は急いで口の中を見てみると、奥歯の方にカプセルが割れているのを発見した。
遅かった。
すでにこの子は絶命していた。
俺の結界は魔力系には強いが、最初から仕込まれていたり、魔力を持たないものには非常に弱いという欠点がある。
謎だけが残ってしまったが逆にこの謎を利用させてもらう。
掃除をしてきたナトが戻ってきた。
「師匠、どうしたの?」
「自害された。」
「あぁー。しょうがないね。」
「この遺体はあの研究狂いに持ってくぞ。」
「えー、あの人苦手~。」
部屋でずっと待っててもらうのも流石に失礼かと思ったが、着いてきたきてまた事件が発生したら嫌だから、結界の内容を追加する。
あの結界にはすでに、防音と反魔のエンチャントがかかっているがそこに遅延を付与する。
何を定義するかによって性能が変わってくるが、今回は扱うのがちょっと難しい時間系の魔法を使う。
あの結界内では時間の進みが外の世界に比べ極端に遅くなるだろう。
ついでい遺体にも同じような結界を張っておいた。
防腐を定義した時間系の魔法をかけた。
「流石、師匠。」
「お前もこのぐらいできるようになるんだぞ?」
「ははははー。冗談きついね...。」
未知の勢力と、謎を解明するべく古くから付き合いのある変人のもとに向かうことにした。
あいつは、ここからちょっと遠いが南方のウェリザード港街に住んでいる。
歩きでは一週間は余裕でかかる。走っても途中でナトがくたばるから、結局変わらない。
では、どうするか。
俺は机をどかし、床に取っ手を取り付ける。
「お、アレを使うの?」
「遠いからな。使わないよりも使った方が製作者も喜ぶだろ。」
取り付けた取っ手を引っ張り持ち上げると、地下へ続く階段が現れた。
指先に光を出現させ、ナトに遺体を持たせて階段を下りていく。
しばらく使っていなかった地下倉庫は埃が多く、汚れが目立っていた。
普段だったらナトに掃除させるが、今回は一部の物しか使わないので気にしないことにした。
さらに奥に進み、布がかけられた棚が見えてきた。
埃が宙を舞わないように気を付けながら布を外すと、まるで新品のような状態で維持され続けた一本の杖が出てきた。
それを手に取り魔力を流し込む。
杖の先端に取り付けられた紫色の結晶が光り、発光がゆっくりと収まっていった。
「ポトの杖!久しぶりに見たぁ。」
「長距離の移動にはもってこいの代物だが、必要な魔力量が多すぎて普段使いには不向きの杖だな。」
「ポトさん元気かなぁ。」
「残骸に埋もれてくたばってるさ。」
「否定できないなぁ...。」
”聡明のポーット”、通称ポトとは、まぁ簡単に言うと旧い付き合いだ。
物事の理解が早く、あいつに知識を与えると質問の嵐がやってくるので付き合いずらいやつだが、友達はなぜか俺より多く、人との交流を好んでるやつだ。
そんなあいつが祝いの日に俺にプレゼントしてきたのがこの杖。
この杖は見たこと、行ったことのある景色を取り込んで、その地点まで瞬時に移動することが出来るという便利な杖だ。
だが、先ほども言ったように魔力の消費量が半端なく一般人が使えば、魔力欠乏症となりあの世に足を突っ込むこととなるだろう。
ナトと手をつなぎ杖に港街の景色を流し込む。
身体が少し浮遊した。
地下にいると言うのに、風を感じる。
結晶が再び発光し、俺たちは光に包まれた。
体感3秒ぐらい空中にいたように感じたが、光が収まりあたりを見回すと横から本棚と大量の本が倒れてきたのが目に映った。
その後ろから慌てふためいた様子でこっちに走ってくるデブい男を睨み、そのまま本の波に呑まれた。




