招待状
新たな仕事を引き受けたところで外から何かが動く気配がした。
動物かと思ったが、この家の周りには近寄らないので違う。
家の四隅にそれぞれ気配がする。
「ナト。」
「うん。」
「??」
ナトは分かっているようだ。
「ここシミになってるね。」
「あぁ...、あ?」
前言撤回。
汚れを見つけたナトは布で拭き始めた。
馬鹿野郎。気づいてないのか?
「そこの子、起きてるってことのこと?」
「あぁ...。ん?あぁ。」
危ない危ない。
ほんとだ。気絶してた時とは違い、呼吸に乱れがある。
意識を取り戻していたのか。ナト、今回は引き分けだ。
「あぁ、ついでに言うと対角線上に虫がいるぞ?」
「!ほんとだぁ。」
「あの、どうかしましたか?」
俺たちの会話を不思議がったメイドが聞いてきた。
「いや、ちょっと野暮用を思い出しただけだ。そうだ、ちゃんと寝てるか見てきてくれないか?」
「わかりました。」
メイドを別の部屋に移動させる。
そして、ドアが閉まった瞬間、その部屋に防音結界を張った。
ナトに目配せをして、配置につく。
コンコンとドアを叩く音がした。
俺がどうぞという前にドアは開いた。
立っていたのは見たことのない服装の男。
「やぁ、こんにちは。部下がお世話になったようだ。」
「あぁ、部下というのはこいつのことか?」
「それも含め、君たちと戦った者のことだ。」
「立ち話もなんだ。家に入ってゆっくり話そうじゃないか?」
「ふむ?いいのか。では、失礼する。」
慌てて、若い騎士が初老の男に近寄ってきた。
「ハーツ様。」
「いらん、引っ込んでろ。」
「ですが...ぁ!」
若い騎士は目に見えぬ速さで抜刀され、首を落とされ絶命した。
剣に着いた血を拭き取りながら男は言う。
「失礼した。」
ナトの方をちらっと見ると、額に汗が見えた。
ナトには今の抜刀が見えなかったらしい。
格上の存在はいつも畏怖を放っている。
男はドアを閉め、縛られている女の子の横の椅子に座った。
俺も対面になる位置に座った。
「自己紹介だ。俺はクロナ。こいつは弟子だ。」
「ふむ、鍛錬を怠っていない良い顔つきだ。おっと失礼、私はハーツ。王直属総長、ハーツ・コットだ。よろしく。」
あのメイドから聞いたのは王族直属。
こいつから今出た言葉は王直属。
どこの国の王かは知らんが、戦ったやつの上司にあたる人だというのは本当だろう。
「それで、こんな場所に何用だ?」
「見てわからぬのか?こいつを返しに貰いに来た。」
縛られていた女の子は横に座っている男を見て青ざめていた。
青ざめるどころか、体を震わせ、目の焦点が定まっていないようだった。
「そうだな、条件を付けてもらおう。」
「あぁ、別にいいぞ。メイドとあの女の事だろぅ?構わん。」
「そうか、では...。」
「その代わり、お前さん、俺とちょっと戦ってみねえか?」
「なんだ?あんたの国民は皆戦闘狂か何かか?」
「ハッハッハ!面白いことを言う。」
男が笑い、急に真顔になった瞬間、少し椅子を引き即座に剣を抜刀した。
剣はナトのこめかみ寸前で止まり、ナトは滝汗を流した。
「ふむ、やはり”視えているか。”、お前さん強いな?」
「はて、何のことだか。それよりこいつが怖がっている。それを閉まってくれないか?」
「おっと、すまんな嬢ちゃん。で、俺と戦ってくれねえか?」
意地でも俺と戦いたいようなので、俺は秘策を切り出すことにした。
「ちょっと待ってな。」
俺は立ち上がり、本棚の方に歩いた。
分厚い本で埋め尽くされた棚には一箇所不自然な箱があった。
箱を取り出し、中を開ける。
中にはたくさんの小物が入っていた。
中を漁りあるブレスレットと便箋を取り出す。
「これ知ってるか?」
赤くて吸い込まれそうな丸みを帯びた宝石のブレスレットを見せる。
「いや、知らんが。それが何か?」
「そうか。”関係者”ではないのだな?」
「何の話だ。」
ブレスレットを箱にしまい、再び席に着く。
「良いだろう。戦おうじゃないか。」
「ほう。ではさっそく...。」
「の前に一つ、いいか?」
「あぁ。」
箱から取り出しておいた便箋魔力を込めて男に渡す。
「これは...!?」
「招待状だ。これを達成したら俺と戦おうじゃないか?」
男は受け取った瞬間、紙に浸食されるように飲み込まれていった。
女の子はそれを見て再び気絶した。
今渡した招待状は”ある人”から貰ったものであと、8枚手元にある。
魔力を流し込むことで効果が発揮する、呪いのアイテムだ。
発動した状態の紙に触ると、紙に描かれた魔物の巣窟に飛ばされる。
今渡した紙には、3種類の魔物が描かれていた。
”破魔、ベリル”、”墓荒らし、スーリ”、”黒白、ラックト”
どれもかなり手強い魔物だ。
魔物の名前についてる名前はその魔物の特徴を表すもので確か禁忌指定生物に指定されていた魔物だったと思う。
「ナト、外にいる虫を叩き落としてこい。死体は森にでも置いとけ。」
「...はい。」
話の通じる奴にはこの手に限る。
卑怯だとは言わせまい。人の家の前でゴミを出したんだ。
常識のない奴には罰を受けてもらわなければな。




