第1話 ラブリーチャージ
この物語は…魔法少女の物語である。
精霊界に異変が起きた、精霊界と魔界を隔てる結界が崩れたのである、その結界とは、人間界…。
人間界は聖なる魔力と、邪悪な魔力の狭間に存在する浄化の世界。
魔界では魔王が復活し、その邪悪な魔力が人間界を侵食、精霊界の草花は枯れ、精霊界を守護する女神の力が薄れる。
女神が最後の力を振り絞り、優秀な精霊に自らの力を授けた、その精霊は人間界へ行き、邪悪な魔力を浄化する使命を与えられた。
しかし、人間界では精霊は魔法が使えない、その精霊は、この女神の力を人間に貸すことで、魔法を使える人間を生み出し、邪悪な魔力の塊であるカンシャークを倒す事を決意した…。
その精霊の名は『キリコ』
女神の右腕として精霊界1の魔力を持つ精霊、人間界に溶け込むため、見た目は人間界に住まう一般的な小動物『猫』の姿に変えている。
キリコは女神の力をを授けるに値する人間を探す…しかし人間は皆忙しそうにしていた。
多くの人に話かけたが全て断られた、皆『がっこう』『しごと』『ほいくえん』なる物に依存していたからだ。
どうやら世界の命運よりも大事な使命らしい…。
しかし見つけた! 運命の出会い!
学校にも行かず! 仕事もしていない!
一日中自宅でゴロゴロ寝転がってアニメを見ている!
彼女の名は『天馬桃子』22歳!
身長168cm、痩せ型、グレーのスウェットに身を包み、背中には、荒々しい筆字で『乙女』と書いてある。
「お願いだ! 僕に力を貸してほしい!」
キリコがそう言うと、桃子は答えた。
「いま忙しいのよ、これから雲の王国見るからゴメンね」
無慈悲! しかし諦めない! 仕事をしていない人間など! もう見つけられそうにない!
「お願いだ! この世界を救いたいんだ!」
必死の懇願!
「やっぱ冒頭のさ? このシーンで『ノアの方舟』ってのがどういう物なのか子供でもなんとな〜く理解できるのが凄いよね〜 さすがF先生だよね〜」
無視!
仕方がないので、キリコは最終手段に出る。
「僕の目を見てっ!」きゅるるんっ☆
つぶらな瞳! キラキラの目!
なんとも愛らしい目! しかしその目は!
洗脳の魔眼!精霊が人間界で唯一使えるスキル!
「あれ? なんか世界救いたくなってきたんだけど」
洗脳完了!!
午後14:00
公園で、黒髪リーゼントで短ランとボンタンの男子高校生が学校をサボっていた。
彼の名は『イツキ』16歳、身長165cm、筋肉質だが着痩せするタイプ。
なにやら口に咥え、その先からフワフワと何かが出ている。
小学3年の子供の前で、ウンコ座りをして大きな声を出す。
「ほーら見ろタカシ! 俺のがデケェ!」
「うわー! 兄ちゃんすっげー!」
2人でシャボン玉を飛ばし、どちらが大きいかを競っていた。
「まぁ俺は高校生だからな、出来て当たり前だ」
「高校生すげー! 僕も高校生になったらもっとデカいシャボン玉作れるかな!?」
「おう! その前にタカシは勉強しねえとな、まだ学校行ってねえんだろ?」
「あ…うん…」
「大丈夫だ、そん時ゃ俺が勉強教えてやるよ」
「マジで!? じゃあいっか!」
その時だった。
公園の入口でなにやら不穏な物体が動いている、ソレは、体長2mほどの人型のナニカ。
人型としかわからぬ風貌、邪悪なオーラを身に纏い、目が怪しく光り、のそのそと歩きながら公園に入ってくる。
「ににに兄ちゃん!! 何あれ!」
「ん? ってなんだあのバケモンは!!」
そのバケモンがイツキに気づき、猛スピードで襲って来た!
「うおお!やっべ! タカシ!逃げんぞ!」
イツキはタカシ少年を抱え、一目散で逃げる!バケモンが拳を振り下ろし、攻撃を仕掛けてきた!
なんとかその拳を避け、イツキは逃げる!
その拳で地面がえぐられた!
「なんだあ!? ありゃ!! マジモンじゃねぇか!」
そのバケモンは、しつこくイツキを狙い追ってくる!
と、その時!
「待ちなさい! カンシャーク! あたしが相手になるわ!」
その声、その見た目! まさに、魔法少女!
小柄ながら勇敢な瞳! ハートをあしらったステッキを持ち! ピンクのヒラヒラ衣装が魅力的!
ジャングルジムのてっぺんで!体制を低くして震えている!
魔法少女はジャングルジムからゆっくりと降りた!
怖いなら、登らなければいいのにっ!!
「さあ! 天の川銀河を守るわよ! 悪徳と野心、頽廃と混沌をコンクリートミキサーに入れて〜! ぶちまけるわよ☆!」
タカシ少年が目を輝かせる!
「うおー!兄ちゃんアレ! 魔法少女じゃない!? すっげー!」
「魔法少女だあ!? んなことより今はお前を逃がす!」
イツキは走った! 猛スピードで走り、タカシ少年を家に送った!
タカシ少年の母親から、手づくりクッキーを貰い! お互いを褒めちぎる! 世間話をして笑いあった!
そして、公園に戻った!
「どうなったんだ? さすがにもう倒したか? 」
否っ!!
魔法少女は疲弊していた、、
「は!? まだ戦ってんのか、何してんだよ放送時間大丈夫か?」
魔法少女が、カンシャークに向かってパタパタと走りだす!
「やー!」
魔法少女がカンシャークにぶつかり、ポヨンと弾き返された。
「ふんっ…やるわね!」
イツキは愕然とした、弱い、弱すぎる。
その手に持っているステッキはなんだ。
コンクリートミキサーに入れてぶちまけるのではなかったのか。
その時、魔法少女の傍らに居る猫が喋りだす。
「必殺技だ! さっき教えた通りにやるんだ!」
好機!魔法少女が必殺技を放つ!!
「いいわ!終わりにしてあげる! ラブリーチャージっ!」
魔法少女が手に持つステッキにハート型の光が集まり出す。
ステッキをカンシャークに向け、詠唱を開始すした。
「愛した男の血しぶきが、私の身体を濡らす時、憎き女の絶叫が、私の歓喜を呼び起こす、処女を捧げた亡骸に、口づけするは愉悦と傷心、香る硝煙、回転する赤い光り、こだまする警報は!終焉の象徴!!
ひっさぁぁぁあああつっ!
プリティ・ラブ・ビーーム!!」
魔法少女から放たれたハート型のビームが!カンシャークを襲う!どデカいハートの光線が!カンシャークに直撃する!
そして! ポフンと消えた!
効果は無いようだ!
イツキは走った!キリコも走る!猛スピードでカンシャークに向かった!
イツキは飛んだ!キリコも飛んだ!イツキはカンシャークの頭部を両手で掴み!自らの膝を打ち込む!
キリコは身体を高速回転させながら!カンシャークの後頭部に向けて蹴りを放つ!
そして同時に叫んだ!
「効かねーんかいっ!!」
イツキとキリコの蹴り技が!カンシャークの頭部を破壊する!カンシャークは倒れて動かない…。
いや、ピクピクしている!
魔法少女がその隙に、ステッキでカンシャークの頭を叩く。
ポカンっ!!
カンシャークの身体が煙のように散っていく。
桃子は右手で額の汗を拭い、こう言った。
「ふぅ 任務完了!☆」
「「完了じゃねーよ!」」
イツキとキリコは同時に突っ込む。
「なに私がやりましたみたいな空気出してんだよ!ビーム弱えーよ!」
「愛した男の血しぶきって何!? そんなの教えてない!」
イツキが魔法少女に追い突っ込みをし、キリコは疑問をぶつけた。
桃子が自慢気に答える。
「気合いを入れたのよ、ムカつく過去を力に変えてんのっ」
「ラブリーチャージどこ行ったんだよ」
「あぁ…それが原因かぁ…」
イツキが更に突っ込み、キリコが謎を解く。
ここで魔法少女が吠える!
「ああっ!!」
「うぉ!?」「なななに?」
イツキとキリコがちょっとビックリする。
「いっけな〜い! 帰ってペールゼン・ファイルズ見なきゃ、じゃあ私帰るから」
桃子はパタパタと遅いダッシュで帰って行った。
「あいつ…さてはSFオタクだな?」
イツキは思った。
「この世界終わったわ、、」
キリコは思った。
イツキは、とても疲れた
「えっと…猫? なんか…頑張れ」
キリコは泣きそうになった
「うん…頑張る…」
そしてキリコは哀愁を漂わせ、トボトボと、桃子の自宅へと帰って行った。
イツキも帰る事にした、公園から家までの道のりを、ため息をつきながら歩き、イツキは家の前に着いて今日の事を振り返る。
「はぁ…なんかドッと疲れたわ、今度タカシに教えてやろう、魔法少女には近づくなって。 ただいまー」
玄関を開けたイツキが驚愕する!
そこには、目をまん丸くして硬直する1匹の猫!
そう! キリコである!
「よ、よう猫…まさかだけど…あの魔法少女って…」
そう!天馬イツキ! 天馬桃子の!弟である!
さて!いったい!どうなる!
読んで頂き感謝です( *・ω・)
そんなあなたの今日の運勢は大吉です( *・ω・)