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第五十話「エルバルト港攻略戦」

 レイディルは操縦席のシートに深く身を預け、閉じた瞼の裏で、やけに鮮明な鼓動の音を聞いていた。

 呼吸の間隔が、刻一刻と過ぎる時を教えているかのようだった。


 静寂は、戦場においては毒に近い。

 身体を休めているおかげで感覚が鋭敏になっている。


 そのせいか何もしない数分がひどく長く感じられる。

 自分が止まっている間に戦況が動いているのではないかという焦燥感が、じりじりと胸を焼いた。


「……落ち着け。これも必要なことだ」


 自分に言い聞かせるように、何度も深く、長く息を吐いた。



 やがて、十分に身体を休めたと判断し、レイディルは目を開けた。


 ハッチを開ける。木々の合間から覗く日の傾き加減でおおよその時間を計算した。


「……一時間くらいは休んだか……?」


 レイディルは小さく伸びをし、肩を鳴らした。

 固まっていた身体がパキパキと音を立て、ほぐれていくのを感じた。


 「さて」と一息付き、動力へとバイパスを繋げるため、ヴァルストルムに魔力を流し込んだ。


 魔力に呼応し、命を吹き込まれるかのように、巨人はすぐさま起動する。


「起動ついでだな」


 レイディルはそう独り言を言うと、そのまま解析魔術をヴァルストルムへと走らせた。


 「……駆動系、異常なし。足元のスパイクも歪んでいない」


 ただ、長い戦いを経てきたのだ。

 エルバルト港を解放したらメンテナンスが必要かもしれない、とレイディルは考えた。


「……武器は弓、残弾数なし。

剣の耐久値は大丈夫。片手斧は、少し心配だな。あとは槍……あぁ、さっき回収し忘れてたな」


 使用可能な武器類をチェックする。

 

 機体全体に魔力を流していると、ある部分にふとした違和感を覚える。


 そこは今まで単に装甲だと思っていた部分だ。

 だが、返ってきたのは、装甲として想定されるものではなかった。


(これは……)



 ヴァルストルムの状態を一通りチェックし終える。


「……よし。悪いな、ヴァルストルム。待たせた」


 レイディルは機体に呼びかける。

 そうして、ハッチを閉め操縦桿を握りしめた。


 ヴァルストルムが再び、静かに立ち上がる。



------



 エルバルト港の一角。

 街の西に灯台がそびえ、その対岸となる東の断崖を削って、港を背にするように湾岸要塞は築かれていた。


 その要塞の司令室に、一人の男が立っていた。

 エルバルト港防衛を任された司令官──クルト。


 彼の前で、一人の部下が報告を続けている。


「報告によれば、巨人は中型(メディウス)ギガスを次々に撃退。妨害部隊も撃破された模様」


「ふむ……しかし、削れてはいるのだろう?」


「恐らくは……」


「恐らくか……構わん。ロデリック様が授けて下さった案と、ドレアド元帥の案……巨人に対し妨害を徹底する。それが我々の役目だ」


「しかし持久戦では決定打が……」


「巨人と言えども人間が操縦していると聞く。

耐えていれば疲弊し、やがて勝機は必ず来るだろう。それに……切り札があると上から聞いている」


「き、切り札……とは」


「……それは俺も聞かされてはいない」


「ロデリック様の大型(マグヌス)でしょうか?」


「あの方は今、謹慎中だ。

我々を気にしてか、わざわざこの港に滞在しておられるが──」


──その時だった。


 司令室の空気が、震えた。


「……?」


 低く、腹の底に響くような振動。

 次いで、遠雷にも似た轟音が、港全体を揺らす。


「何だ」


 クルトが問いただすより早く、扉が乱暴に開かれた。

 息を切らした伝令兵が、雪崩れ込むように室内へ飛び込んでくる。


「し、司令官! 巨人です!」


「……来たか」


「ヴァルストルムが、正面突破を開始しました!

山道砦を無視し、街へ──!」


 一瞬、司令室が静まり返った。




------




 山道縁の崖から街へ。

 ヴァルストルムが重厚な音を響かせ着地をする。


「どうやら一番乗りみたいだな」


 レイディルが街に配備された中型ギガスを見据えた。

 調べによると、街の建物に住民は皆無のようだ。


(要塞の中か?)


 住民の所在は気になる。だが、戦場(いくさば)に住民を巻き込む心配がないことに、レイディルは胸を撫で下ろした。


(それでも、やたらめったらに建物を壊すわけにもいかないけど……)


 ヴァルストルムの存在を認識し、迫るギガス。     

 鎧を纏った姿──には変わりなかったが、そのシルエットに大きな違いがあった。


「なんか、厚いな……」


 ギガスは頭まで鈍色の鎧を着込んでいた。

 分厚い胸板はいかにも頑強そうだ。


(なるほど、山道のものよりもこっちに資材を投入したわけか……)


「槌、両手斧、槍……相変わらず、レパートリーに富んだ品揃えだな」


 そう呟くレイディルは、左手の斧を振りかざし、迫り来るギガスに叩きつける。



 だが、鈍い音と共に斧が弾かれた。 


「くっ! 硬い!」


 どうやら従来の鎧よりも厚く頑丈なようだ。

 重装甲ギガスと言ったところか。


「だけど、隙だらけだ!」


 ヴァルストルムは、ギガスの鎧に覆われていない関節部を狙う。


「師匠譲りの、とは言えないけど……

鎧通し・(モドキ)!」


 勢いよく振られた斧が、鎧の隙間、がら空きの中型ギガスの右肘を関節部から砕く。


 レイディルがなおも追撃をしようとした瞬間、横から新たなギガスが割って入る。

 それはまるで庇うような──


 さらに先程、肘を砕かれたがその隙に乗じて後退を開始した。


「なんだ!?」


 レイディルが推察する間を与えず、次のギガスが数体迫る。


------



「第三中型(メディウス)、損耗率一割。戦闘継続可能」

「第四、右腕部破損!」


「慌てるな! 予定通り、少しでも損傷したギガスは下がらせろ。

全損さえしなければ、再構築し、また前線へ送れる」


 クルトは、冷静に命令を下す。



------



 ヴァルストルムが迫るギガスを退けること数度。

 レイディルが確認した以上の数の中型ギガスが幾度も前に立ちはだかった。


 そのうちの一体にレイディルは目をこらした。

 胸甲の左上。そこだけが、不自然に歪んでいた。


(この鎧の傷、最初のやつか!)


 斧を弾かれたときに生じた、浅い凹み。


「クソッ! まるで部品交換みたいだな!」


 少しでも破損すれば下がり、新たなギガスが代わる代わるヴァルストルムの前に立ちはだかる。


「壊れたら下がる。直して、また前に出てくる……

一撃で戦闘不能にしなきゃ、堂々巡りだ」


 だが、その“一撃”を、分厚い鎧が許さない。


「面倒だけど、鎧が壊れるまで叩くしかないか……!」


 レイディルは愚痴のように言葉を零した。




------




「上手く行っているようだな」


 クルトは戦場と化した街の様子を慎重に見定める。


 しかし、その胸には言い知れぬ不安が渦巻いていた。


(なにか……見落としがある……

アルバンシアには、まだ“なにか”いたはずだ……)


 門からも砦からも、報告の上がっていない存在。

 クルトがそれに思い至った、その時だった。


「司令官! 西側です!」


 新たな伝令が、声を張り上げる。


「街の西、灯台のさらに外!

 通常ルートではありません!」


 クルトの視線が、即座に地図へ走った。


 街の西。

 断崖と岩場に挟まれた、道とも言えない一帯。


「……馬鹿な、人間がそんな場所から現れるなどと!」


 そこは、人が通ることすら想定していない場所だった。


「敵部隊、出現!

数は五十──しかし、動きが異常に速い!」


 報告が続く。


「先頭に立つのは……指揮官らしき男!

リ、リオルド・アルドヴァレアです!」


 クルトは、そこでようやく悟った。


「最初から……二体の化物による二正面だったと言うのか!」



------


「チッ! 想定より早く気付かれたか……!」


 本来ならば、要塞付近までは強襲を悟らせたくはなかった。

 だが、少数精鋭とはいえ、この規模だ。発見は避けられない。


「へっ! これ見よがしに要塞なんぞおったてやがって! おかげでいい目印だ!」


 背に大剣を背負い、槍を振るうリオルドが帝国兵を薙ぎ倒しながら、要塞を目指し、西の街路を直進する。


 山道は正規の部隊に任せ、リオルドたちは、おおよそ踏破不能な道を選んだ。

 温存した最大戦力を、直接港へ叩き込むための作戦である。


 彼らが通ってきたのは、一見すると道とすら呼べない獣道と山岳、そして断崖。

 だが、そこには――ほんの僅かに、人が通れる可能性のある筋が存在していた。


 曲がりくねり、ひとたび踏み外せば、

 引き返すことも、前へ進むことも叶わぬ死地へと変わる道。

 だが、その全てを、ベイルは違えず記憶していた。


 そして、それを乗り越えられたのは、ひとえにリオルド自らが選び抜いた精鋭であったからに他ならない。


「最高に最低な道でした!」


 リオルドに追従する騎士の一人が、迫る帝国兵をメイスで殴り飛ばし、悪態をつくように言う


 その言葉を受け、リオルドは笑い飛ばした。


 リオルドたちが通ってきた道は、港が帝国に占領される際、ベイルが命からがら逃げるために通った道だ。


 だが、逃げるために選ばれ、記憶されたその道は、今や反撃の刃として、この港へと突き立てられている。


「――街に入る前に置いてきたベイルに、笑われるような真似はするなよ」


 リオルドの声に応え、精鋭たちは迷いなく前へと踏み込んだ。


 ぞろぞろと防衛のための小型のギガスが、リオルドたちの前に立ちはだかった。

 そのどれもが武器を手にし、鎧を着込んでいた。


「岩の人形に贅沢なこった……!」


 リオルドが毒付く。


 四人一組となった、前衛の騎士たちが小型に剣戟を浴びせる。

 しかし、それは鎧によって阻まれた。


 前衛が防御結界(プロテクション)を削り、魔術師が仕留める。

 常に取ってきた戦術であったが、今回のギガスは勝手が違った。


 纏った鎧が、第二の外皮のごとく、防御結界(プロテクション)を削るのを許さない。


 削りきるための手順が一手多い。

 それは戦場では、致命的な遅れに等しかった。



「お前らは帝国兵を押さえろ! 小型は俺が引き受ける!」

 

 リオルドが槍を背にしまうと、代わりに大剣を抜き放った。

 大剣は飾り気もなく、いかにも無骨で叩き潰すといった粗野な作りだ。



「いいか、中型が近づいてきても無視だ――ヴァルストルムが何とかする! 俺たちが目指すのは要塞だ!」


 怒号とともに、精鋭たちは一斉に動き出した。



 リオルドの大剣が、五メートルはある小型の肩を易々と砕く。


 巨体が反射的に退いた。

 その瞬間、横薙ぎの一閃。

 鎧ごと弾き飛ばされたギガスは、建物へと叩きつけられる。


 起き上がる暇はない。


 追撃の一撃が落ち、上半身と下半身が分断された。


「ん、コイツ、今下がろうとしたな?」


 リオルドは一瞬だけ目を細め、すぐに口角を上げた。


 指示を受けた様子もない、不自然な挙動だった。


 それでも、確かに――後退しかけた。


「……あー、なるほどな」


 リオルドには、思い当たる節があった。

 その答え合わせをするように踏み込む。


 小型ギガスの群れへ突入し、間合いに入ったもう一体の腕を叩き折った。

 そのまま、後退しようとした個体の進路を塞ぐように、巨体の懐へ滑り込む。


 狙いは、関節でも頭でもない。


 ――鎧だ。


「逃げるってことは、直されに行くってことだろ」


 両手を添えた大剣が唸りを上げる。

 人の身では扱えぬはずの重量が、しかし一切の淀みなく振り下ろされた。


 鈍く、重い衝撃。


 砕け散ったのは、胸部の装甲だった。

 岩の身体ではない。後付けされた鎧だけが、無残に弾け飛ぶ。


 小型ギガスが、ぴたりと動きを止める。

 防御結界プロテクションは、まだ残っている。  だが、第二の外皮を失ったその姿は、もはや剥き出し同然だった。

 ――それでも、ギガスは下がらない。


「……やっぱりな」


 リオルドは、確信を笑いに変える。


「壊れた“身体”じゃねぇと、自律式の退却条件に引っかからねぇ」


 次の瞬間、横薙ぎの一撃。

 岩の胴体が、今度は綺麗に断ち割られた。

 崩れ落ちる巨体を見下ろし、リオルドは視線を前へ向ける。


「まぁ、めんどくせぇに変わりはねぇか」


 リオルドは、吐き捨てるように呟いた。



------



 ヴァルストルムが振り抜いた戦斧が、中型ギガスの鎧にヒビを入れると同時に、限界を迎えて粉々に砕け散った。


「……思ったより早い!」


 ギガスの鎧の頑強さに、事前に解析した耐久値よりも早く片手斧は限界を迎えた。

 手元に残ったのは、無残に折れた柄の部分だけ。


 だがレイディルは即座に判断を下し、それを捨てなかった。


 斧の衝撃に、たじろぐ中型ギガスの懐へ、ヴァルストルムをさらに一歩踏み込ませる。


 ギガスが武器を持つ右肩の鎧、そのわずかな「隙間」。

 そこへ、折れた柄の鋭利な先端を逆手に持ち直し、渾身の力で突き立てた。


 岩の身体を強引に破壊する感触が伝わる。仕留めるには至らないが、敵の動きが確実に止まった。


 レイディルは間髪入れず、ヴァルストルムの巨体を捻った。

 突き刺さった柄へと真っ直ぐに足を突き出し、重い蹴りを叩き込む。


 轟音と共に突き放されたギガスが、右肩を砕かれ、手にした巨大な両手斧(バトルアックス)を取り落とした。



 両刃の斧が街路を砕き、地面へと突き刺さる。


「……貰うぞ!」


 地面に刺さった巨大な獲物を、ヴァルストルムが掠め取るように奪う。


 ヴァルストルムはそれを両肩に担ぎ、右腕をかけるように構えた。

 鉄塊のような重みが、機体越しに伝わる。


 先程までの片手斧とは重心も重さも違う。

 本来は、ヴァルストルムよりも明らかに大きな存在のために作られた武器だ。

 

 だが、今のレイディルにとってそれは、この場を切り拓くための十分すぎる「牙」だった。



 右肩を砕かれたギガスは他のギガスを盾にするように、紛れ交代していく。


 その様子を冷静に見据えながら、レイディルはヴァルストルムの右腕を強引に突き出し、奪った両手斧を一振り、横に薙いだ。


「――っ!?」


 凄まじい遠心力がヴァルストルムを襲う。


 中型ギガスの力を凌駕するヴァルストルムの力、それ自体はこの鉄塊を振り回すのに十分すぎるほどだ。


 だが、想定外の重量物に、操縦者であるレイディルの、重心制御が上手くいかない。


 身体を大きく持っていかれ、巨人の足元が、石畳の上でたじろぐように火花を散らした。


「なるほど。これは使いにくい……」


 二振り目。今度はその「持っていかれる力」を逆手に取り、腰から機体を捻り、反対方向へ無理やり引き戻す。

 

 ガクン、と機体が軋む。

 だが、三振り目にはもう、ヴァルストルムはその巨大な円運動を自分のリズムへと組み込んでいた。

 

 慣れぬ武器を、力尽くで「支配」していった。


 レイディルは操縦桿に指をかけ直し、包囲を縮めようとする中型ギガスたちを見た。


 その視界の端、西の区画で土煙を上げ、要塞へと着実に進行していくリオルドたちの影を捉える。


(兄さんが門に辿り着くのが先か。オレがこいつらを片付けるのが先か──)


 そんな思考を断ち切るように、槌を携えた中型ギガスが正面から肉迫した。


 ヴァルストルムは即座に反応し、振り回していた両手斧を右へと薙ぎ払う。

 巨大なハンマーと正面からかち合った瞬間、凄まじい衝撃が空気を震わせた。


 だが、次の瞬間には決着がついていた。

 ヴァルストルムの膂力が槌の衝撃を上回り、ハンマーは根元から両断される。

 そのままの勢いで、あの分厚い鎧ごと、ギガスの胴を砕き割った。


 足に力を込め、さらに踏み込む。

 返す刃で、側面から迫ったギガスを、腰から肩へと右斬上に斬り裂いた。


 後退などさせない、有無を言わせぬ一撃。



------



 その戦場を俯瞰する者に、動揺はなかった。

 司令官クルトは、中型ギガス撃墜の報告を受けても、表情一つ変えなかった。


「堕とされるものが出てきたか……」


 部下の報告に対し、短く言い捨てる。

 予想はされていたことだ。

 それが遅いか早いかの違いでしかない。

 だが、クルトは続けた。


「引き続き中型(メディウス)は巨人に当てろ。

中型(メディウス)でなければヤツの足止めすら出来まい」


 そう言って双眼鏡越しに、西区画を見やる。

 包囲をものともせず、なお迫り来るリオルドの姿。


「噂に違わぬ、と言ったところだな。

西区画に迫る敵は、小型(パルヴス)と兵で抑えろ。

魔術師も増員だ! ここで出さねば突破されるぞ!」


 そして、わずかに声を落とした。


「ただし余力は残せ。

この後はアルバンシア本隊が来るっ……」


「はっ」


 部下が踵を返し部屋を出た、その時だった。

 入れ違いに別の部下が報告に入ってくる。

 彼は息を整える間もなく、クルトへと告げた。


「……なに!?」


 思わず漏れた声に、クルト自身、眉をひそめた。

 


------



 

 手を焼いていた中型ギガスの数は、着実に減り始めていた。


 押し切れないはずの戦線が、少しずつ、しかし確実に動いている。


 ヴァルストルムは位置取りを繰り返し、気付けば戦場は、街の東側へと押し流されていた。


 すでに八体目の中型ギガスの身体と鎧を切り裂くと同時に、持っていた両手斧も役目を終えたとばかりに砕けた。



 レイディルは周囲を見渡す。


「他に中型は──いない、か」



 辺りには、瓦礫と鉄屑と岩の怪物の破片。

 先程までとは打って変わり、不自然なほどの静寂に満たされていた。


「追加は……なしか?」


 港へ戦力が集結しているというのなら、この程度の数で済むはずがない──そう、レイディルは心構えていた。


 しかし、新たな岩石の兵が現れる兆候がない。



 レイディルは、その静けさの裏に、拭いきれない違和感を覚えた。


 静寂が支配する街で、一つ、小さな音が響いた。


 ガシャリ──


 背の高い建物が連なる路地、その瓦礫の影から音がする。


 ガシャリ──


 街路を形作る磨かれた石と、金属が擦れ合うような──


 ガシャリ──



 ヴァルストルムが振り向いた先の地に、影が伸びていた。


「……人……いや……」


 四肢を持ち、威風堂々と佇む人影。


 レイディルは、頬に冷や汗が伝うのを感じた。


「こいつは──」



 人ではない。

 その大きさはヴァルストルムと同じ。

 ──鎧が、光を反射していた。



 そして、それは──



 ヴァルストルムと同じく、巨大な騎士の出で立ちをしていた。

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