とある未来人の独白
The RYUTistという新潟県のローカルアイドルグループのライブパフォーマンスに魅了された、未来人を自称する男による、中途半端な長さの独白。
注 この作品はフィクションであり、登場する人物名、団体名は架空のものです。
もし現実に存在するものと一致する事例があったとしても、それは偶然による事象です。
ぶっちゃけて言うが、私はいわゆる「未来人」である。
ただし、よく映画の設定とかにあるタイムスリップで2024年に来てしまった、という様な事情とは、幾分異なる。
タイムパラドックスについてはご存じのことと思うのだが、同じ時間線(或いは世界線)で過去に干渉すると、未来世界が変わってしまう、ゆえにタイムトラベルは不可能なのだ。
では、未来人を自称する私の立ち位置というか正体について言葉を少し変えてみよう。
私はいわゆる「異世界人」である。
そう、ラノベでおなじみの、トラックに轢かれるとか、過労死とかした主人公が、次の瞬間、剣と魔法の世界に転生しまうって言うあれね。
そんで女神様だか神様だか、ともかくその世界における人類よりも高次の存在の加護とかですんげえチート能力まで身に着けているという大盤振る舞いのアレ。
ちなみに、私のチート能力は何か、というとそんな物は持っていない。いや全くもって微塵も無い。
いささか回りくどくなって大変心苦しいのだが、三度目の正直というやつで私の正体についてお話しよう。
私は、パラレルリアリティにおける西暦2037年の日本からやってきた未来人であり、異世界(パラレルワールドという意味での)人である。
決して不慮の事故死とかでこの現代日本に転生して来た訳ではなく、並行世界間を移動し得る高度なテクノロジーによって、それ相応の国家権力絡みの組織から、とある使命を与えられて送り込まれて来た、まあ、ある種の侵入者だ。侵略者じゃないだけ穏当だと思って勘弁してもらいたい。
では、その「高度なテクノロジー」というやつを持った、私が本来属している「2037年の現代日本」について、かいつまんで説明を試みてみたい。
とか言っても、私はバリバリの文系の人間(文学部哲学科出身)なので、実際のところ、件のテクノロジーについては、超紐理論とか量子的結びつきとか、いずれどこかで聞いたことのある単語が関わっている量子力学?とか応用物理学?、とかの領域のものである(らしい)ということぐらいしか理解していない。
私を送り込んできた「組織」もいちいち短期雇用のエージェントに、技術的背景とかを説明してくれるほど親切な訳はなく、ちゃんと使命を果たすことを最優先事項に据えているはずだ。
では、私の使命は何か、というと「観察」である。
おいおい、何もかもスマホでネット検索かけりゃあすぐ答えが出てくるこのご時世に、小学生の観察日記レベルの話かよ、大したことないなあ、この未来人って輩はさあ、と思われる向きも多いに違いないが、私は一向に構わない。
むしろ、注目を浴びるより、状況に紛れ込む事が大事なのだ。
少し脱線したので、本題に戻ろう。
私の居た(と言うか居る、本来存在している)2037年の日本は、この2024年日本とは、ちょっとだけ異なる世界であり、その差にしても、10の100乗分の1、といったところだと思う。
まあ往復可能な並行世界同士なのだから、そんなに差はないはず、というかそもそもそんなのに差異が大きな並行世界には、異種現実間ゲート(以降、ゲート)と呼ばれる、2つのパラレルリアリティが重なり合う時空間?が現象として顕れ得ない?ということなのだろう(ちょっと哲学用語っぽく書いてみましたてへぺろ)
そう、ゲート、とは言い得て妙である。
いわば、異なる2つの並行世界の間に出現した(というか、前述したテクノロジーによって出現させた)門を通って、私は、2037年の日本の埼玉県入間市の極秘研究施設内のラボ(長ったらしいなオイ)から2024年の日本の新潟県新潟市(なんか大雑把だなオイ)にやって来た訳だ。
だから、ハイパーテクノロジーによって生み出された青いネコ型ロボットが、どれ一つとっても人類文明を破壊しうる「便利アイテム」を異次元ポケットから次から次へと繰り出して来る、といった悪夢の様な(え?少し不思議な世界の日常を描いた国民的アニメの話だろって?そういう方は認識が著しく誤っている、ってか恐らく国家権力によるメディア操作によって洗脳されてますよアナタ)そう、ものっそい悪夢の様な未来ではさらさらなくて、極端な話、2024年のこちらの世界にいる私自身、も存在している(はず。だって怖いじゃん、それってなんかドッペルゲンガー的な、見たら死ぬ、的なやつじゃん。だから、積極的にこちらの世界の私自身を敢えて探す、ということはしないのだ、いや、絶対に)
ことほど左様に2037年と2024年の日本には差異は存在しておらず、まあ強いて言えば2024年の総選挙で、自民党が下野し、セレスチャル•ビーイングという極右(というか私設武装集団とか名乗ってた時点でテロリストじゃんこいつら)政党が、投票率69.8パーセントという史上最高の投票率の下、国民の圧倒的支持を得て衆議院の387議席を獲得し、首班であるスメラギ•理•ノリエガ(発音は、スメラギ・リ・ノリエガ)(芸能人なので芸名。本名は佐藤野乃子)総理の剛腕独裁政権の指導により、北海道民国と琉球王国を併合した日本国は、女王陛下愛子様を国家元首とする王権民主主義国家「新世紀日本帝国(United Kingdom of Japan)」として生まれ変わり、自衛隊は日本帝国軍として陸海空3軍と宇宙軍へと再編され、中華民主共和国とともにアジアの安全保障を担う経済及び軍事超大国がここに爆誕したことぐらいかなあ、ホラ、大して違いないっしょ?ね?
ちなみに首都は東京から長野に移転している。本来長野都と呼称される予定だったが、南海トラフ震災対策と国土強靭化政策の目玉としてなったこの遷都によって、首都はネオ長野となった。(だって長野都ナガノトってなんか発音しずらいじゃん)
またまた大脱線したので軌道を修正する。
「観察」することの重要性について。
私はゲートを通って2024年に来た。
それでは、2037年の日本にも、異なるパラレルリアリティからの来訪者が存在するのではないか?
その可能性は確認は出来ないが、否定もまたできない。
そしてその可能性のはらむ脅威もまた、現前として存在する、それも世界を震撼させる強度の。
「もしも、異なる現実世界から、我々の現実世界に対して、歴史改変、といった類いの悪意もしくは極めて強い攻撃性を伴う意志を持ってなんらかの行為を行った場合、我々の現実世界に対して影響を与え得るのか?」
これは由々しき問題である。
バタフライ効果、ご存じでしょうか。
巷間よくあるタイムパラドックスに関して、タイムトラベルで過去に戻って、憎いあん畜生の父親を殺害すれば、憎いあん畜生が誕生するという事実は否定されるから、ヤツを抹殺できるゾ、やっちゃえやっちゃえええ案件に関して。
冗談ではない。憎いあん畜生一人どころか、その末代まで影響を及ぼすのである。
それは人口動態に深刻なダメージを与え、100年後には国民が存在しなくなる可能性まで出てくる。
いや、影響がに人類という種だけに限定されるのならまだいい。
件のタイムトラベラーが過去の時空間に出現した瞬間、そこに生えていた雑草を踏みつぶしたとする。
森林が数万ヘクタール消滅するのではないだろうか?
たまたまそこにいた蟻を踏みつぶしたらどうだろうか?
生態系が著しくダメージを受けること必至である。
ことは生物だけに収まらない。
タイムトラベラーが過去の時空間の空気分子1万単位ぐらいを動かしたとする。
地球そのもののエコシステムを含む全環境が劇的に変化し、この青い惑星は生物が生存できない死の星になってしまうかもしれない。
飽くまで可能性の話ではある。しかし、その可能性が存在すること自体を否定することは絶対的に不可能である。
ここで皆さんはお気づきになっただろう。
じゃあ、未来人を自称するアンタは我々の2024年世界を破壊する意図の有無に係わらず、ぶっ壊してんじゃんどーしてくれんのよ本当!!!
そう、私はその可能性を否定できない。
私はこの2024年世界に対して、修復不可能なダメージを与えているのだろう。
しかし、言い訳にしかならないが、私は、私自身がこの2024年世界に与えているダメージを検証する術を持たない。
残念ながら、2037年世界の技術を持ってしても、ゲートを開くことが可能な時空間は限定されている。
それをレンジ、と我々の世界では呼んでいるのだが、以下の通りである。
空間的スケール(地図上での範囲、と捉えていただきたい)としては、2037年埼玉県入間市某所のラボを中心として、半径約500キロメートル。
時間的スケール(時間軸に沿った長さ)としては、2024年9月から2025年2月まで。
なにぶんにも、ゲート解放実験の事例が私を含めて10件しかないので、先ほどの数値は飽くまでも理論上のものであることはご理解いただきたい。
繰り返して言わせていただく。
私はこの世界を破壊している。 そして私は、私の行為がもたらしている影響について、把握というか認識ができない。 絶対に。そう、絶対に。
では、その様な危険かつ横暴なゲート解放実験をなぜ続けているのか?
それは、我々2037年現実世界から以外のパラレルリアリティから、2024年に来訪しているもの
が存在するのではないか、を検証するために他ならない。
ゲートを通過した者は、いわば来訪先の世界においては完全に異質な存在である。
言い換えれば、2037年の人間は、2024年の人間とは異なるオーラを放っている。
では、仮に2050年のパラレルリアリティから2024年に来訪した者がいたとすれば、それも、たまさかに我々と同様の時空間範囲に送り込まれたとすれば、その来訪者もまた異質なオーラを放っていると考えられる。
そして、ゲートを潜った者であれば、その存在を感知できるのではないか?
科学者たちが砂上の蜃気楼の楼閣を100億階層積み上げたに等しい仮説ではある。
しかし、その可能性もまたゼロではない。
そして、もしも他の現実時空間からの来訪者が存在することを確認できるのであれば、我々の2037年世界にも来訪者が存在する可能性を確認することが出来る。
飽くまでも可能性が存在することの検証ではあるが、想定しうる脅威を排除する手段を現有の科学技術では確立できない以上、手順はそこから始めなければならない。
確認が、世界の危機を回避するための第一歩なのだ。
さて、距離にして月の衛星軌道ぐらいの回り道をくどくどと来たのだが、私の正体についての結論を述べさせて頂こう。
私は、異世界からの来訪者に対する人間感知器なのである。それも、気が遠くなるような回数の「もしかしたら」を重ねた前提の上での。
そう、私こそ、世界の破壊を企む者の臭跡を追う獰猛な戦闘犬である。
大変、実に大変遅れて申し訳ないが、ここで自己紹介をば。
私はジェイク高城。
ハーフではない、両親ともに埼玉県出身の日本人です、はい。
だって、ジェイク、とか胡散臭いじゃんとか思わないで欲しいのだが、これは私が2034年から2036年まで兵役で軍の特殊作戦群特務連隊に所属していた時のタック•ネーム(ネットでのハンドルネーム的なやつ)で、愛着があるので、敢えて名乗っております。高城という姓は本名なんだけどね、身バレは怖いかんね。またまたご勘弁の程を。
だが、世界の破壊を企む者の臭跡を追う獰猛な戦闘犬、その役に私こそが適任であると思うが、いかがだろうか?
さて、ここで話はまた大きく転換する。
2024年10月14日、新潟県新潟市古町7番町で私は目撃してしまったのだ。
そう、あの、伝説のアイドルグループ「The RYUTist」を。
前述したが、私は両親ともに埼玉県民で、2004年に埼玉県所沢市生まれの生粋の埼玉県民だった。
2018年までは。
少々こっ恥ずかしいのだが、私と新潟県新潟市古町7番町との縁についてお話しよう。
私の父は、そこそこ大手商社の経理担当という、ごくごく平凡なサラリーマンだった。
2018年8月までは。
でもあの伝説のアイドルグループ「The RYUTist」が2018年5月にリリースしたシングル「蒼穹シグナル」のMVを観た父は、目覚めてしまったのだ、こともあろうかドルヲタに。
父は当時14歳の私に嬉々として語った。
父は新潟市内のどこかの会社に転職するのだ、と。
そして、我々一家は所沢の自宅を売り払って新潟市内の中古物件住宅に引っ越しをするのだ、と。
それもこれも、The RYUTistが毎週ホームグラウンドのライブハウス「柳都カーマインスタジアム」で行っている「Live at Home」を観るために、ただその一点のためだけに、である。
普通なら専業主婦である母が止めるでしょう。
なんで安定した生活を放り投げて、新潟なんかに引っ越すのか、と。
それもアイドルなんかにうつつを抜かして、少しは世間体とか考えられないのか、と。
止めるよね、普通なら。絶対に止めるよね。ホントにね。
でもあろうことか母も目覚めてしまったのだ、そう、ドルヲタに!!
母もまた嬉々として私に語った。
母が「推し」ているメンバーの宇野友絵さんがとにかくちっちゃくてかわいいのだ、と。
特にあのポニーテールがたまらないのだ、と。
そういえば、幼稚園児だったころに言われた記憶がかすかに蘇った。
男の子じゃなくて女の子だったらポニーテールにできて良かったのにねえとかなんとか。
そう、母はポニーテール萌えだったのだ!!
かくして私の両親ともに熱心なThe RYUTistファンとなった。
新たなヲタクカップル爆誕である。それは私にとっては、不幸以外の何物でもなかった。
だって肥満児だったから転校先の中学校でイジメに遭ったもんね。あ、いやな記憶は忘れろ、今すぐ忘れろ、俺。
斯様な経緯によって、いろいろ転職及び引っ越し手続きその他もろもろののち、忘れもしない2018年8月14日、私は新潟市の亀田という土地の住民となった。まあ近所に大手スーパーのヱオンモールがあったから便利ではあったけども。
畢竟、私の不幸の元凶であるThe RYUTistに対して好意を持つはずもなく、むしろ、愛情の正反対であると言われる無関心を貫き通した。
好きな音楽ジャンルも洋楽のロックで、初めて買ったCDはBily Juelの「The Alien」である。以降の「42nd Street」「Nylon House」とか確かオリジナルアルバムは全部持ってる。
好きな曲は前述の「The Alien」「Good Night Nhatrang」「This Is The Time」の3曲で、これはを覚えていて今でも時々口ずさむ。
「Good Night Nhatrang」は不思議と後のグレーター上海での従軍経験にリンクしているのだが、これについては機会があればお話ししようと思う。
そして「This Is The Time」。これほど美しいラブバラードは洋の東西を問わず無いと思う。
そう、例外として挙げるなら、一曲だけ、「薄暮のダイアリー」だろうか。
「薄暮のダイアリー」これ、実はThe RYUTistが2018年10月にリリースした名曲なんです。
ピアノのイントロ聴いただけで泣けちゃうぐらい良い曲なんです。
え?あんたThe RYUTistとかいうアイドル恨んでたんじゃなかったっけ?どゆこと?
と皆さん思われますよね。ごもっともです。
それではお話しましょう、いかにして私がThe RYUTistファンとなったのかを。
そして時空を超えて2024年の世界を来訪してThe RYUTistの卒業ライブを観ようと奔走したのかを。
ここで予備知識として、日本帝国軍とアイドルカルチャーの摩訶不思議な親和性について述べさせてください。
確か21世紀初頭、日本が世界に誇る文化として挙げられていたのが「マンガ」「アニメ」ですよね。
2010年代になるとこれに「アイドル」が加わります。少なくとも2037年世界の私はそう記憶しています。
遠因の一つに2011年に起こった東日本大震災による心的外傷(PTSD)が挙げられています。
激しいストレスに見舞われた人々は「癒し」を希求したことでしょう。充分に納得できます。
その様な背景のもと、2010年代、アイドルがカルチャーシーンの最前面に踊り出て来ます。
「ランチタイム娘。」を筆頭とするHowDoYouDoプロジェクト(通称ハウプロ)の緒ユニット。
「SPR47」を頂点とする47グループと、曲り道グループの緒ユニット。
両者ともに社会現象化してメディアがこぞって取り上げたものである。(いつの間にか、ですます丁寧さん口調になったので、元に戻した、これぞ元軍人の矜持)
時を置かずして、日本全国津々浦々にローカルアイドル(通称ロコドル)が乱立し、アイドル戦国時代が到来、メジャー、マイナー(地下アイドル)問わず1年のうち200組近くのグループが表れては消えて行くという事態に発展した。
アイドルは「消費されるもの」となってしまったのである。
斯様な嘆かわしくも現実的な事情に人知れず小さな心を痛めていらっしゃったやんごとなき方があられた。
それこそは、だれあろう、幼少期の愛子様、そう、後の新世紀日本帝国の女王陛下ご本人であらせられるのである。
ちょっとポカーンってしてるそこ、頭が高いよ!
不敬だよII
秘密警察じゃなくて特務MPに連行されて拷問されんぞ!!!
具体的には古今東西のアイドル関係のライブ動画とか、超有名美少女アイドルがオフで寛いでいる姿(いやそれ仕事じゃん、とか言っちゃダメ、絶対!)とか、候補生メンバーの自己紹介とか、とにかくAIが、逮捕された人物のプロフィールをもとに厳選してくれちゃった、ある意味プレミア映像を72時間ぶっ続けで見せられる事になるのだ。
この洗脳工程を経て、いわゆるドルヲタとして更生したのは統計的に82%、残りは発狂するか、収容所送りになると言う。(情報ソース俺)
さあ、翻って解説しよう、日本帝国軍とアイドルカルチャーの摩訶不思議な親和性についてを。
女王陛下が即位後真っ先に発した勅令こそが、「アイドルカルチャーの保護」ひいては、図らずも消費され搾取され社会のズンドコに叩きこまれてしまった元アイドルさん達(主な年齢層として10代後半から20前半の特に女性)の救済、であったことは、史実として公立私立問わず小中高等の歴史の教科書に載っているのである。
では、徴兵制度が復活し、年齢18歳から35歳までの帝国臣民は最短で2年間軍務に就くことを義務付けられた社会において、軍人は新規入隊時に一体何を叩きこまれるのか。
新世紀日本帝国帝国軍モットー3箇条は以下の通り。
「アイドルは己が血肉を分け合ったに等しい存在であると認識せよ」
「アイドルを護ることこそが帝国を護ることであると認識せよ」
「如何なる状況下においても己が推しを忘れるな」
だから、旧東京都月島にある新入隊員訓練センターでは、一見して骨の髄まで屈強な古参軍人であると解る指導教官であるおに軍曹が開口一番に発するのは、
「総員傾注!これより貴様等ゴミ虫どもに下賜される28式突撃銃を、自分の推しの色のサイリウムもしくはペンライトと思え」
という訓示なのであり、それに対する返礼は
「ヲイ!ヲイ!ヲイッ!」
なのであり、敵陣への突撃の合図となる号令は
「よっしゃ行くゾおおおおおおおッッッ!」
なのである。
とにかく、不敬罪による犯罪者となったルート有り、従軍経験ルート有り、その他複数のルートを経て、一般的帝国臣民は控えめに言って熱心なアイドルファン、歯に衣着せず言うなら筋金入りのドルヲタへと変態(メタモルフォーゼの意味であり、間違ってもニアリー性犯罪者の意味ではない)遂げて行くのである。
そこで読者諸氏はこう考えると推察する。
え?そんな軍隊ってヘタレじゃね?強いワケないっしょ!?
警告するが、もしもあなたが標準的帝国臣民であり、一瞬でもそんなことを考えようものなら、およそ5分後にはまたぞろMPがあなたの住居のドアを過剰なまでの強度でノックするであろう。
ドン、ドン、ドン、〇△◇〇(あなたの戸籍上の氏名、敬称無し)今すぐ出てくるように!
これを3回繰り返してもあなたがドアを開けない場合、MP隊員は実力行使のフェイズに移る。
具体的にはカットオフバレルのショットガン(通称壁抜き)でドアそのものを破壊し、あなたは連行され、以下の流れは前述の通り。
え?どゆこと?なんでそんな風に他人の思考が解るの?
答えは、従軍経験者は例外なく、入隊時に身体強化のためにマイクロマシンを血液中に注入されるから、である。戦闘時の止血を促す、傷の悪化を遅らせるその他いろいろ重宝さんな機能を持ったマイクロマシン群さんなのだが、その一つに、ウィルスにとっての宿主とでも言うべき被施術者の脳内思考パルスを読み取り、各軍管区の特定のAIに発信する、というものがある。思考そのものではなく。統計的に有意なデータから抽出された思考内容のパターンをキャプチャするのである。その主たる目的は、作戦行動中の反乱或いは利敵行為、または積極的な戦闘行為の破棄等、軍という戦闘集団にとってネガティブな行動に伴って、当該行為者の脳内に発生する、高強度な情動のパターンと表現すべきものを特定することにある。
平ったく言えば思考警察さん的な何か、である。勿論、非戦闘状況の平時体制にある本国内においてはその様な思考パターンサンプリングは、ごく短い期間(約1マイクロ秒)ランダムに(約1万人に一人の割合で)実施される。まあ、今時(2037年世界での)のAIの演算能力を持ってすれば、サンプリング可能な人間の総数は歴然であるのだが。
賢明なる読者諸氏にはもうお分かりであろうが、これってオーヴァーテクノロジ-である。人によってはエリア41とかいう(西)米軍秘密基地内に保管されているエイリアンクラフトからリバースエンジニアリングによって得られた地球外の技術体系の産物と言われるかもしれない。
ところがギッチョン!
発祥地は旧日本国の新潟県新潟市!、しかも時は2024年10月8日!!
すごいぞ新潟!
みよや新潟の実力を!!
発端は、新潟市内にキャンパスがある新潟県立柳都工科大学の伊織俊、当時若干26歳の若き天才物理学者が全く新しい粒子を発見した事である。
その粒子は、いかにも人間の意志に反応する様な、それでいて何か意味不明の極めて混沌とした振る舞いを見せた。
伊織博士はその粒子の運動を不思議な混沌(Strange Chaos)名づけたが、それを思いついた瞬間、天啓とも言うべき考えが脳内に閃光のように走ったと、その3年後のヌーベル物理学賞受賞の際の談話で述懐している。
「この粒子を利用すれば、常温核融合以上に効率的で、なおかつ核汚染リスクの存在しないクリーンな動力を得る事が可能なのではないか?」
事実上の永久機関の発明が為された、人類を次のステップへと導く極めて貴重な瞬間のことである。
いや、マジで永久機関なんだこれが。
だってこの粒子は、虚数空間からエネルギーを引っ張ってくるんですもん。
もちろんこの自称にもパラレルリアリティが関わっている。
伊織博士の論文によれば、隣り合う並行世界間には、浸透圧の様な力が存在しており、この粒子はそれをエネルギーとして放出しているらしい。
つまり無から有が生じている訳ではなく、複数(てか無限大)のパラレルリアリティ全体でそのエネルギーが循環しているために、帳尻が合っている、つまりエネルギー保存の法則は成立しており、矛盾は無い、ってことらしい。
まあちょっと見、トンでも学説なのだが、実はこれ、1940年代に当時の天才物理学者エイゼンシュテインが「秘伝奥義相対性理論」で予見していたことであったらしい。
らしいの連呼はどうか見逃して欲しい。だって私ってばホラ、文系のヒトですから。
この発見により既存の技術体系は、より高度なたものへと上書きされ、この応用技術研究に対して全面的にあらゆる国家規模のリソースを無制限に伊織博士を中心とした研究チームに提供することと引き換えに旧日本国はこのほんまもんのオーヴァーテクノロジーに関するあらゆる情報の海外移転を違法化し、新技術体系を独占、つまり事実上地球人類文明の覇権を握ったのである。いや、本当に。
こんなすんげえ強い、強いよ強いが過ぎる技術をですよ、いっちゃん最初にどこに応用するかって言えばそんなもん軍事力強化い決まってるじゃないですか。一択ですわ正味の噺。
だから私先に言いましたよね、日本帝国軍すげえよって。
だって旧日本国時代から下地作ってましたもん。
武装もすごいよ。入隊訓練で使われるアサルトライフルなんか使う局面なんか皆無ですって。あれっておもちゃみたいなもんですから。ニアリーイコール水鉄砲ですから。
だって軍の正面装備って人型起動兵器ですよ。
どっちかと言うと機動戦士ゲンダムよりもゲームソフト「ミッション・アット・フロント」てか、
「フルアーマードCPU」寄りの、あ、そうだ「装甲騎兵ダウナーズ」的なロボですよ、ロボ。
きっと軍の偉い人の中によっぽどソレ系が好きなヒトが居たってか居るんだろうね。
だって陸海空宇宙四軍すべての正面装備がこの戦闘ロボですもん。
正式名称か戦闘用機動ユニット(Battle Manneuver Unit)で、略称が英語の頭文字BMU、日本語でビームって言うよね皆してね、あ、ランチタイム娘。の曲にあったなセクスウィイビー-ム(関係ないか)
その様な超ルール違反的に強力な軍備と覇権を新世紀日本帝国にもたらし、天才物理学者伊織俊にはヌーベル賞の栄誉を差し上げたその粒子の名前は、リューティ二ウム(Ryuti Nium)。柳も都、柳都と謳われた新潟市にちなんだ名前で、通称RN粒子。そのエネルギーの発行色はターコイズ・ブルー。
RN粒子応用のエンジンはRNドライヴ。勿論稼働中はターコイズ・ブルーの光を放つ。
RN粒子によって発振される破壊性放射線がRNビーム。これはまだ実証実験中で、完成実装の暁には、起動兵器ビームが破壊光線ビームを撃って来るという冗談みたいなホントの話が一丁上がり、である。
そして敵兵は、都市伝説よりもリアルな噂話を交わすのだろう。
「戦場で蒼い光を見たら、生きて還ることはできない。絶対に出来ない」と。
とここまで話して来た所で、唐突にですが、私はある重要な点に気づきました。
いかにして私がThe RYUTist支持者になったのかを語る上で、グレーター上海での作戦行動に関わるある体験が不可欠である、と言いましたけど、あの作戦自体がEXクラスの軍事機密情報で、記録上では「無かった事」になってるんじゃなかったっけ?
私がのほほんと体内マイクロマシン群の思考警察を機にせずにあれやこれやをお話して来たのは、その機能が、ゲートを潜りぬけて来たこの2024年世界では無効化されているからなんですよホントにね。
では、初回限定CDセット得点ボーナストラック的なヤツだけ、以下に記すことにいたしやしょう。
The RYUTistメンバーのその後、というか2037年現在の活動状況を記してみよう。
先ずはメインボーカリスト、ダンスリーダーの五十嵐夢有さん。
所属する芸能事務所柳都アーティストエステートでスクール講師として後進の指導と育成に邁進しているうちに、プロデューサーとして覚醒。
ポストThe RYUTistとして、自身がファンであったスターダスト芸能の「私立タラバガニ中学」の成分がかなり濃いアイドルグループ「Blandnew RYUTist」を育て上げる。
5人の10代女子で構成されるBlandnew RYUTistは、四半期ごとに定期ライブを新潟市民会館大ホール(キャパ3,500人)を行っているが、2036年3月の初回公演から直近の2037年12月の第8回公演まで、総てSoldOutとなる人気ぶりで、国内ヒットチャートの常連である。
特に、2036年12月にリリースした4thシングル「伝説」は、The RYUTistの人気曲のリバイバルカヴァーだが、ダブルミリオンの大ヒットとなり、今や「SPR47」、「ランチタイム娘。」と並び立つ三大アイドルグループのポジションを盤石にしており、妹分アイドルグループ「Courtesy of Southern Waves」が2038年3月デビューの予定で、こちらのグループは、新潟県屈指のご長寿アイドルグループ「Kyabetucco」に音楽性が近いのではないかと噂されている。
The RYUTistメンバーのその後、2人目は、ボーカルリーダーこと宇野友絵さん。
そう、世界的ポップアーティストの、あの宇野友絵さんである。
The RYUTist在籍当時からウェブマガジンにエッセイを執筆したり、グループのマスコットアイテムを自作したり、とそのアーティストとしての才能の片鱗を垣間見せていたが、代表的キャラである岩石モチーフの「ろっくん」が、2025年初春、西アメリカ公国はロサンゼルスのチャイナタウンで大人気となり、そこから瞬く間に「トモエ・ウノのTheRockn`」のキャラクター商品が全米(つまり東アメリカ合衆国と南アメリカ諸国連合も含む、北米大陸に位置する、揃いも揃ってやや斜陽気味の三大国)を席捲。
アーティスト「トモエ・ウノ」の名声は米国からの逆輸入の形で日本に還流した。
2025年当時、宇野友絵さんはエッセイ著書「ともちいのポニーテールは今日も青空の下で躍動するのです」が30万部を売り上げる、という新人作家としては異例の活躍を見せ、エッセイストとして頭角を現してきた折も折、日本芸術展(日展)に応募したオブジェ「踊る岩」(「ろっくん」のバリエーション)が、高名な芸術評論家である安部天氏をして「鬼才の誕生する瞬間に我々は立ち会っている」と唸らせ、宇野友絵さんは同日展において文部科学大臣賞を受賞、ネオポップジャポニズムのアイコンとしての名声を世界に轟かせることとなる。
なお、近作は音楽界の名エンジニアである佐々木信義氏とのコラボ「ろっくん録音中、同時配信もしてるよ」であるが、このキャラクターをもとにしたTVアニメ制作が決定している。
The RYUTistメンバーのその後、3人目は、かわいいリーダーこと横山美郁さん。
こちらも、地上波バラエティ番組で見ない日はない、という八面六臂の活躍を見せている。
レギュラー番組13本のうち、東京テレビの旅情報番組「地方都市を探検し隊んです!!」では探検隊副隊長ことメインアシスタントを務めている。
また、JHK教育テレビの番組「建築資材今昔トーク」ではリケジョの才能を遺憾なく発揮し、MCとして、近現代の建築資材の特徴を一般人にもわかり易く解説してくれている。2037年6月15日放送の「ナノカーボンファイバー」の回では、近未来における軌道エレベーター構築の可能性と、関連する主要プロジェクトの現状について語られており、感銘を受けた。
横山美郁さんはまた、ソロアイドルとしての活動も再開しているが、こちらもワールドワイドな大活躍になっている現状であるのだが、後述する。賢明な読者諸氏であれば、2024年世界での
10月上旬ごろにおいて、このような可能性に繋がっていくのでは?との推測も難しくはないと思う。
きっかけは、2025年に「オルカとゾンビ」の歌って踊ってみた動画を、ANTAtubeに投稿したところ、これがバズりまくり再生回数が1億回を突破。全日本国民が「だれ?この綺麗なお姉さんは一体だれ⁉」と血眼状態と化し、「千年に一人の女神様」「日本が世界に誇る新潟の至宝」として見つかっちゃったのである。
事実海外でも「ミクチャン」の美貌は大人気で、2026年に行われた世界ツアーはベルリンを皮切りに、パリ、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス、グレーター上海、ネオ長野は総動員数40万人の大盛況となった。
以降2028年と2031年にもワールドツアーが行われているが、最近は情報番組のコメンテーターと食レポのお仕事があまりに忙し過ぎるらしく、国内も含めコンサートは開催されていない。
それでも3か月スパンでシングルリリースを続けているのは流石としか言い様がない。
2037年2月14日リリースの最新31stシングル「Trust Me(iku)」もサブスクチャート3位とその人気は健在である。
なお、 The RYUTistは2034年9月に期間限定で再結成している。(2035年2月まで)。
ある意味において、この10年にわたる活動休止期間は、メンバー個々がさらなる高みを目指すためにそのスキルを研鑽するための「充電期間」として位置づけられるのではないか、と言うのが、終わりなき暫定的にしてそれゆえ最終的な「結論」である。
その証左として、と言えばいいのだろうか、2037年に存在している「The RYUTistヲタ」がこの目でしかと見届けた事実として以下に記そう。
この短期間再結成は、華々しい成果を上げ、The RYUTistは日本(それが、旧日本国であれ、新世紀帝国であれ、日本として認識される国家)のアイドル界に偉大な「爪痕」を刻んだと言っても過言ではない。いや言い直そう、The RYUTistは日本アイドル界に「修復不可能な大打撃」を与えたのである。
駆け足になって申し訳ないが、その経緯をかいつまんで。
2034年9月18日、再結成したThe RYUTist(参考までに、ごく少数だがこのユニットを「RE:The RYUTist」と呼称している向きもある)が、その変わらぬホームグラウンドであるライブハウス柳都カーマインスタジアムでのパフォーマンスで魅せた、往年に劣らずキレッキレのダンスと美しいハーモニーの歌声は10年を経てなおも健在で、ライブ参戦者ならずネット配信で観覧したポップスファンのド肝を抜いた。その視聴者数はおよそ30万人と言われている。
同年10月、人気コメディアン大泉陽がMCを務めるJHKの人気音楽番組「The Japanese Music」で「伝説のアイドルグループリターン!!」として45分特番が組まれるとこれが更なる決定的なダメ押し的な大反響を帝国全土はおろか東アジア全域に巻き起こし、それを受けてThe RYUTistは、2034年12月、毎年恒例の地上波年末特番「日本CDサブスクリプション大賞」「日本歌唱大賞」「RGB歌合戦」の各番組に特別ゲストとして出演し、翌2035年元日、サプライズとして柳都市民記念ホール(キャパ3,000人)で凱旋ライブを敢行、このライブには2023年に惜しまれつつグループを卒業した佐藤野乃子さんも合流、正に伝説の4人編成のThe RYUTistとしてその可憐な姿をファン達の眼に焼き付けたのであった。
以上が、私が目撃した「The RYUTist」の総てである。
私は思う。
2つの現実世界をまたいでこのアイドルグループを追いかけた日々は、私に深い感銘を与えてくれた。
そう、私は幸せだったのである、と。
完
推しは尊い。
この言葉の意味が最近になってようやくわかる日が訪れるとは思っても見なかった。
なんでも、新潟にはご当地アイドル「リューティスト」というグループがあって、いわゆる楽曲派から熱烈な支持を得ているらしい。
今度そのグループのライブを観に行ってみようと考えている。
ライブ参戦については読者諸氏にも強くおすすめしたい。
リューティスト卒業公演開催予定は2024年12月1日、もう間もなくであるらしいから。