幕間⑥-3:誰の存在だって世界では取るに足らないけど、誰かの世界はそれがあって造られる
世知と亜里紗の夏休み最終日を描いた幕間も
今回で本当にラストになります!
しかもあっさり短めです!!
ここまでお付き合いありがとうございました!!!
結局、色々あって(詳細は伏せるけど)会計と退室が時間ギリギリになってしまった。
『ご利用、ありがとうございました。』
ガチャッ
電子音声とともに解錠された音がした。
「よし、世知今のうち急いで出よう!」
「いや、そんな急がなくても閉じ込められたりは
しないでしょ。」
妙に慌てている彼女に微笑み返して、その腰に手を当てながら優しく退室を促す。
バタン
扉が閉じられて、薄暗い廊下の灯りがなぜか現実感を感じさせた。
「……帰ろっか。」
「……うん。」
突然2人ともなんとなく恥ずかしくなって、お互い少し照れながらエレベーターの前まで歩みを進めた。
「あ、ねぇ亜里紗。」
「ん?どうした世知?」
俺はふいに彼女を呼び止めた。
「たぶんないと思うけどさ、万一エレベーターに
誰か乗ってて、更に万が一の万が一、
知ってる人とかだったら嫌だからさ、
下りだし、階段で行かない?」
「……は?」
いや、自分でも本当に変なことを言っている自覚があった。
でも、なぜだろう。
なんとなく。なんとなく嫌な予感がしたのだ。
「……ふふっ。わかった。そうしよう。」
彼女は軽く笑ったあと、俺に賛同してくれた。
「んじゃ。」
「ん。」
俺は亜里紗に右手を差し出す。
それを亜里紗が左手で握り返す。
「少し薄暗いから足元気をつけて。」
「ん。大丈夫。ありがとう。」
俺たちは今いる4階から、階段で1階へと向かうことにした。
なにより無機質で味気ない密室より、2人で共に歩みを進める階段を選んだ時点で、恐らく俺は今日が名残惜しかったのだろう。
―――きっとそうに違いない。
2人で階段を一段一段降りながら、会話を弾ませる。
「いやー、今日は本当にすごくすごーく楽しかった。
たぶん今まで生きてきて
1番楽しい1日だったかも。」
「ははははっ!世知はオーバーだな。
そこまで言ってくれるとは思わなかった。
私も最高に楽しかった! また行きたい!!」
「いやほんとだよ! 俺、横浜行ったの
初めてだったけど、凄い良かった!!
食べ歩き美味しかったし、ランドマーキングとか
一生の思い出だよっ!!!」
「私も実はまともに横浜楽しんだのは
初めてだったからな。今日は私のはじめても
世知に捧げられたってことだ。」
「えっちょっ、、、その言い方、ずるいって……。」
「ふふふふっ!!」
「わっ、笑ってる彼女も可愛い……!」
「!? いやっ! ここで不意打ちは卑怯だぞっ!?」
3階を通過する。
「あと何回も言って申し訳ないけど、
この時計ほんとありがとう!!
俺、こんなふうに物に執着というかひとつのものを
ここまで気に入るのって、
今までなかった気がするもん!
この誕生日プレゼントとんでもなく嬉しい!!
本当にありがとうっ、亜里紗っ!」
「えっ? そこまで?? いやっ、それは、嬉しい……。
ふふっ。そこまで喜んでくれたなら
私としても選んだ甲斐があった。
喜んでくれてありがとう世知っ!」
「だからありがとうはこっちだってばー!
しかも大好きな彼女とペアでお揃いとかさ、
俺、明日死ぬのかなww」
「待って私を置いて行かないでくれ(笑)
私はまだまだ世知と共に時を刻んでいきたいぞ?」
「俺だって亜里紗とこれからもいろんなとこに
行きたいしいろんなものを見に行きたい!」
「私も私も!私もすごくそう思う!
……あと、その、こういうとこにも、これからも
また何回も来たい…………。」
「う、うん……。いや、俺も、実は、
すごく良かった……。いろいろとすごく良かった。」
「うん。また来よう!! 他も調べてみる!!」
2階を通過した。
階層案内の蛍光灯が寿命なのか、
不規則に不快なリズムで点滅していた。
「……と言うか明日から学校だけど、
もうあんまり寝る時間ないよね……。」
「そうだな……。明日は始業式だけだけど、
私たちはその後生徒会もあって、夕方からは
みんなで世知の誕生パーティーだものな!!」
「ははっ。すごく嬉しいしほんとありがたい。
体力的には結構ハードだけど
俺、力尽きないように頑張るよ。
亜里紗も無理しないでね?」
「大丈夫だ!私は体力おばけだからな!!(笑)」
「あはははははっ!!」
「いや、世知笑いすぎ……。しかも声、
け、けっこう大きかったぞ……。」
「ごめんごめん。てか、2人とも徒歩で来たからさ
駅からタクシー乗り合いして帰ろっか。」
「うん。それはいい。そうしよう。
とりあえず駅前まで出ないとな。
世知の安全と平穏は私が護る!!!!」
そして、
俺たちは1階に到着した。
と、同時に、
―――チンッ
軽い電子音とともに、エレベーターの扉が開いた。
(……??)
(エレベーターに誰か乗ってたみたいだね。
少しここでやり過ごそう。)
(ん。わかった。知らない人でも恥ずかしいものな。)
俺と亜里紗はエントランスに入らず、
階段に留まることにした。
(しかし、本当に誰かと鉢合わせしそうになるとは。
世知の勘はすごいな……!)
(いや、なんだろ? なんとなく?なんだよね。)
(どんな人たちだろう……?)
(ちょっ亜里紗w 下世話だからwww)
小声で会話しながら好奇心からか、
エレベーターから降りてきた人物を確かめようと、
階段横の物陰から2人して顔を出した。
「…………ッ!!!!!!!????」
「シッ」
慌てて亜里紗の口を塞ぐ。
最初は、見間違いだと思った。
「あっ、ホラ先輩、ここ段差あっから
気をつけて下さいね。」
「大丈夫よ! もうっ! 和泉君は心配性ねっ!
私に過保護過ぎないかしら!?」
「ハハッ。そんなことないっすよ。
まぁ、いつも心配はしてますけど。」
「なによそれっ!? これでも私、
和泉君の先輩なのよ??」
「はいはい。わかってますって先輩!
明日は朝からオレと先輩で初日の
挨拶当番ですからね?
頑張って起きて下さいよ?」
「そんなの当たり前でしょっ!! もうっ!!!
生意気!生意気ーっ!!」
「ハハハハハッ! さぁ帰りますよ先輩ー!
あ、チャリンコ2人乗りって捕まるんだっけ?
ちゃんと家まで送るんで安心して下さいね。」
仲良さげにエレベーターから降りてきて、
楽しそうに会話しながら外に出て行ったのは、、、
「えっと、、、いや、言葉が出てこないや…………。
嘘だろ? マジでほんと信じらんない…………。」
「……あぁあぁ……。世知、世知っ、どうしよう……
私たち、大変なものを見てしまった気がする……。」
東堂先輩と、
俺の親友、和泉聖夜だったのだ…………。
お疲れ様でした……。
以上で第3章、世知たちの夏休み編は終了です。
書きたいものを「これでもか!」といっぱいいっぱいいーーっぱい、詰め込めた気がして個人的にとても満足です。
とか言って、これ以上ないくらいに微妙過ぎる引きで終わっちゃいましたけど、
幕間④で聖夜が東堂先輩を誘って
幕間⑤で亜里紗が朝から世知と出かけて
幕間⑥で世知と亜里紗がラブホで聖夜と東堂先輩を目撃するという、
そんな流れになっております。
これぞ多主人公形式オムニバスの醍醐味だと思いません?(誰も思わねぇよ)
……あとは何を言ってもネタバレというか無粋な気がするので、
敢えて何も語らないことにします。
これとほぼ同時に、2章終了後に書いたオマケみたいのも更新されたと思いますが、
今後の予定としては、年内はゆっくり休ませてもらって
年明けに最終章的な位置付けの第4章の執筆に取り掛かろうかと思っています。
ある程度構想は固まって来ているんですけど、
ひとつ迷ってることがありましてね。
得意の多主人公の交代方式で進めて行く事は確定しているのですが、
①聖夜・由美・藍 のローテ
②聖夜・世知 の1章と同じローテ
③メイン5人の3章形式ローテ
の、どれで行くかで悩んでおります…………。
もし良ければ参考までに、こんな愚作をお読みになって頂いた皆さまのご意見を頂戴出来たら幸いなんですが、、、
まぁ、ゆっくり考えて行くとしましょうかね。
改めて、続きは年明けから執筆し始めて、
2章・3章みたいに出来たらすぐアップ、ではなく
1章のように最後まで書いてから順に更新していくつもりで考えているので、
ふたたび皆さまに読んで頂けるのはかなり先になりそうな気がします。
それでも「読んでもいいよ」ってかたがもしいらっしゃったら、本当に嬉しいです。
とりあえず気を長ーくのんびりとお待ち頂けたらありがたいと思っています。
これから寒くなって行きますが、
どうか皆さまにおかれましても
お身体には気をつけて元気にお過ごし下さい。
それでは、また会いましょう。
(2025/11/05)




