幕間⑥-2:どんな未来がこちらを覗いてるかな。君の強さと僕の弱さを分け合えばどんな凄い事が起きるかな?
と、言うわけで幕間⑥後編です。
恐縮ではございますが、もう少しだけ、世知×亜里紗におつき合い下さいませ。
※今回も地味にR15指定な気もしますけど、どこまで攻めていいのかわからないので手探りになっていますw
住み慣れた駅のプラットホームに降りて、振り返って今降りた水色ラインの電車に軽く挨拶する。
「ふうっ。帰ってきたな!」
「おかえり亜里紗。」
私の彼氏が笑顔で答えた。
と言うか、今日1日ずっと一緒だったのに「おかえり」と言うのも少しずれてて笑ってしまった。
「ふふふっ。世知もおかえりなさい、だな。
あ、世知はもうひと駅先が最寄りだから
少し違うのか?」
「まぁ、同じ市内だし地元だし、
俺もただいま!って気分かな。」
彼氏の柔らかい微笑むがまっすぐ私を射抜く。
―――うっ!!!
世知と恋人になってもう3ヶ月以上経つのに、いまだに真正面から浴びる世知スマイルの破壊力にたじろいでしまう。
……我慢だ。
まだ早い。
スイッチをONにするのはまだ早いぞ亜里紗!
つとめて心を冷静に保ち、世知の手を引いて駅構内を出る。
「…………あれっ? まだどこか行くの?」
本来なら駅前をまっすぐ進めば私の家なのだが、私は世知の手を引きながら右に曲がり西口公園へと進んでいく。
おそらく世知はこのまま私を家まで送り届けるつもりだったのだろう。
今日1日、私のコースプランで横浜をデートしてきたが、そのデートそのものを誕生日プレゼントと思っているか、はたまた誕生日プレゼントの存在を失念しているか、、、
あるいは無言で表に出さずに私からのプレゼントを密かに期待しているのか、世知の真意はわかりかねるが、当然愛する彼氏に贈るプレゼントを用意してある。
現在の時刻は22:24。
まだその瞬間までは1時間半余りある。
なんせ、私と世知が彼氏彼女になって、初めての彼氏の誕生日なのだ。
そりゃもう、気合い入れまくって今日を迎えた。
「虫が鳴いてる。もう秋だね。」
私に手を引かれながら西口公園を歩く世知が口を開く。
「……2人で迎える初めての秋だな。」
「それ言ったらこの夏もそうだったね。
さっきも言ったけど、こんな楽しかった夏は、
俺、初めてだったよ。ありがとう亜里紗。」
「私だって。とても楽しかった!
こんなの生まれて初めてだった!!
好きな人と過ごす日々がこんなに満たされるとは
本当の本当に思わなかった!!」
「ははっ。俺もだよ。」
……また熱く語ってしまった。
世知も肯定してくれたものの、やはり少しだけ気はずかしい。
「これも繰り返しになるけど、明日から学校って
やっぱりちょっと億劫になるね。」
世知も同じことを思っていたのだろうか。
あまりに充実していたため、終わってしまう夏休みが名残惜しく感じてしまったようだ。
「……まぁ、学校が始まったら始まったで、
体育祭やら文化祭やら、忙しくて楽しいぞきっと!
おまけに私たちは生徒会役員だしな。」
私の返答を聞いて、世知が、はた、と立ち止まった。
「ねぇ亜里紗。文化祭のあと、いまの生徒会解散して
総選挙して代替わりするじゃない?
来期どうする?」
それを聞いて私はくすっと笑いをこぼすと、再び世知の手を引いて歩みを進める。
「そんなの聞くまでもないだろうに。
世知だって心は決まってるだろう?」
私たちは西口公園を出て、赤く舗装された商店街を北に歩いていく。
「……うん。決まってる。
と言うか、もっともっとやりたいって思ってる。」
「ふふっ。私もだ。
……まぁ、当選すれば、の話だがな。」
世知の返答に私は満足げに頷いた。
私たち2人は転校していった高橋先輩の穴埋めで加入したので、通期ではなく半期しか活動していない。
それでも世知と一緒に生徒会役員として活動したこの5ヶ月弱は、言葉にならないほどに充実した日々だった。
それこそ、所属している弓道部がおろそかになって幽霊部員になってしまうほどに。
こういった会話の流れになる前に、私としては既に来期も世知とともに生徒会役員として活動するつもりでいた。
―――だからこそ。
だからこそ、世知には、もっと
壁の向こう。カテゴリーの向こう。
自分で引いた枠組みの外へと、
目を向けて欲しかったというのもあった。
生徒会活動を、やるやらない関係なく、
世知本人のためには、私が足かせになってはいけなかった。
ただでさえ、世知は留学を蹴って私の横にいてくれているのだ。
これ以上私が世知の足を引っ張るようなことは到底あってはならないことだった。
そんな強い意志で、私は今日、世知と向き合った。
確かに、彼氏が私のことを最優先にしてくれて、その他の女性を歯牙にもかけない態度は、彼女である私としたらこれ以上にないほどの幸せなことだ。
極上級の扱いを頂いていると言ってもいい。
しかしながら、その時に私が感じる"幸せ"とは、ただ単に心が満たされる程度のもので、優越感や自己肯定感とさして変わらないものではないだろうか。
父の墓前で誓った「2人で"幸せ"になる」という思いのそれとは、また違ったベクトルではないだろうか。
世知が取る東堂先輩への態度が素直に喜べなくなっていた私自身の違和感が、お盆の墓参りで明確な回答に帰結したのだ。
―――このままでは、世知はほんとうの意味で"幸せ"になれない。
ただ耳障りの良い言葉や態度で馴れ合う薄っぺらな関係ではなく、私と世知は生涯添い遂げることを誓った、いわば運命共同体ともいうべきかけがえのない人だ。
ならば、2人で"より良いと思える"道を進んで行くべきなのだ。
夕暮れ時の観覧車で、私の偽らざる思いを素直にぶつけることが出来て本当に良かったと思っている。
非常に勇気が必要ではあったのだが、タイミング的にも彼氏の誕生日前日なんて出来すぎではないだろうか。
「……着いた。」
上手く表現出来ない充実感と達成感に包まれていた私は、世知とともに目的の場所へ到着した。
「……………………え、ありさ、、、
もしかして、ここ?? えっと、入るの??」
「もちろんだ。アニバーサリーだからな!!」
私は世知に胸を張って答える。
確かに、恥ずかしくないと言えば嘘になる。
しかしながら彼氏の誕生日を迎える瞬間をその場で祝いたいという期待感と高揚感、そしてその彼氏を在るべき道へ導けた達成感が私の羞恥心を麻痺させていたのかもしれない。
そう。
俗に言う、ラ…ホテル、という場所だ。
「えっと、俺ら、高こ……だし、入れるの?」
「どうだろうな。無理だったら諦めればいい。」
何事もやってみなければわからない。
間違えたらやり直せばいいのだ。
「とりあえず誰かに見られる前に入ろう。」
世知の手を引いて自動ドアをくぐる。
ここら界隈には何軒かそういったものがあるが、事前に内部をネットでリサーチして、私たちが入ったここが1番内装がオシャレで可愛いという結論に至り選択したのだ。
「「…………………………。」」
そう広くないエントランスに入ると、壁に部屋の写真と番号が描かれたパネルが敷き詰めてある。
「……この部屋可愛いな……。
世知はどこがいいとかあるか?」
「…………えっと、ごめん亜里紗に任せる……。」
「なら申し訳ない。この部屋にさせてもらう。」
一応世知の意見も確認したということで、パステル調な浅葱色の内装が個人的にとても好みな403号室のパネルに触れる。
カコン
パネル一覧の下から403号室の鍵?だろうか、カードが出てきた。
「あ、亜里紗、慣れてない?
なんでわかるの?」
「え、なんとなく……?」
今日の私は怖いもの知らずだな。
未経験で初体験なことでも勢いで乗り切っていけそうなくらいだ。
幸いなことに年齢確認や身分証明なども特に必要なく、呼び止められたりすることもないまま(一応窓口のカーテンの向こうに受付が居るのだろうが)事なきを得た。
カードキーを手にした私は世知の手を引いてエレベーターに乗り込み4階のボタンを押した。
「…………わかってくれてると思うが、
こういう場所は私も初めてだからな………………。」
「うん……。頭では理解してるんだけど、
亜里紗があまりに堂々としてて……。
なんかシステムとかもよくわかるなって……。」
「なんとなくと言うか、わかりやすいというか……。」
チンッ
短い会話を交わしているうちに4階に到着し、エレベーターのドアが開いた。
薄暗い廊下の手前から数えて3番目の部屋の番号表示がチカチカ点滅していた。
「へー。こんな仕組みなんだ。間違えなくていいね。」
「うん。なんか誘導されてるみたいだな。」
指定された部屋のドアにカードキーを差し込み、ドアを開けて世知に続いて入室する。
バタン
ドアを閉めて、その横の差し込み口?にカードキーを刺すと部屋の照明が着いた。
……ガチャッ!
「「!!??」」
閉めたはずの扉から異音がしたので確かめてみると……、、、
「せ、施錠された……。」
「えっと……? どうやらもうお会計しないと
この部屋から出られないみたいだね。」
扉に貼ってある案内を読んだ世知が解説してくれた。
私も続いて目を通してみる。
3時間以内に5500円を端末で会計すれば解錠されるらしいが、3時間過ぎると8500円必要になるようだ。
その境目が、良く耳にする「ご休憩」と「ご宿泊」の違いなのだろう。
それよりも、だ。
施錠された、ということは、
この部屋は、もう密室なのだ。
外界から隔離された2人だけの楽園なのだ!
「ふーー。なんか緊張するね。
でも今日1日歩いたからけっこう疲れたねー。」
世知が部屋の奥に進み、ソファに腰掛けた。
と、思うとすぐ立ち上がり、辺りを色々と確認し始めた。
その落ち着かない様子から、本当に緊張しているんだろうということが見て取れた。
しかし、私はもうそれどころではない。
私の脳内スイッチが―――――
「あ。アメニティに緑茶とコーヒーあるよ。
お湯沸かして淹れよっか。」
戸棚を開けて中を物色していた彼氏に、私はダッシュして無言で抱きついた。
「わっ!!? びっくりした!」
世知はまだ理性があるようだったが、私はもう施錠された時点で限界を迎えていた。
「世知っ! せしるっ! せしるうううう!!!」
先ほどまで彼氏の世界だ視野だなんだと言っていたが、今ここはもう2人だけの世界なのだ!!
何者も如何なる物も邪魔は入らないし入りようがない。
遠慮も躊躇も何にもいらない!!
実はもう今日1日ずっと我慢していたのだ!!
今! 今こそ思う存分に世知を「ステイステイっ!」
無意識に世知のシャツを引っペがそうとしていた私の手を世知が掴んだ。
「と、とにかく落ち着いて?亜里紗。
俺、けっこう汗かいたからまずシャワ……!!??」
毎日丹念に筋トレを実施している私の彼氏だが、力で私に勝とうなんてまだ何年か早い。
掴まれた手首を素早く振り払い、逆に世知の手首を掴み返し、背後のベッドに押し倒しそのまま馬乗りになる。
「―――これ以上お預けはさすがに無理だ……。」
「……えっ? ちょっ! ありさっ、目が!
目が怖いって……、、むぐっ!!??」
15歳の世知とはこれで……納めなのだから、じっくり味わわせてもらう。
私はまだ何か言おうとしていた世知の唇を自分の唇で塞いだ。
とりあえず、1回戦めは終了した。
詳細は色々と問題がありそうなので割愛させてもらうが、お互いにとってのはじめてを頂くことが出来た。
今まで何度も致しておいて、今更何が「はじめて」なのかと言うと、私はお月さまが割と重い方なので、産婦人科からお薬を処方してもらっている。
つまりは、世知が「けじめ」と称していつも使用している例のものを介さずに、今日【はじめて】致したわけだ。
最初は世知の抵抗は凄まじいものだった。
世知が私を「彼女」として大事に扱ってくれている証左である。その気持ちは嬉しい。とても嬉しい。
しかしながら、それとこれとは別なのだ。
詳細は省かせてもらうが、別なのだ!
身体と精神両方で世知をねじ伏せた私の気分は天にも昇るほどであった。
「―――――亜里紗には勝てないな……。」
なかばあきれながら世知がため息まじりに、私を腕枕している左手で私の頭を撫でた。
「ふふっ!! ありがとう世知っ!!!
私はいまどうしようもなく幸せだっ!!!」
私は自身の下腹部に手を当てた。
「……亜里紗。」
呼ばれて、隣で横になっている世知と目が合った。
世知は真剣な眼差しで真っ直ぐに私を見つめていた。
「俺、一生亜里紗と一緒だからね。死ぬまで。」
事が事だけに、世知は責任感を強く感じているように見えた。
私の独善的な我儘だったのだが、そんな彼氏を見てなんだか申し訳ない気持ち半分と、この上なく満たされる幸福感半分で、自分でも自覚出来るくらい頬の温度が上昇したのがわかった。
「……離れたいって言っても離れないからな。」
私も偽らざる素直な気持ちを口にする。
「「愛してる」よ」
私と世知の言葉がシンクロした。
少し照れくさそうにはにかんだ世知は私に軽くキスすると、ベッドから起き上がってバスローブを羽織り、ポットにお湯を沸かし始めた。
その横顔が想像以上に柔らかい微笑みを浮かべていたので、私も更にまた心が踊った。
「亜里紗は緑茶でいいよね?
俺はコーヒーにするけど……。
……あっ、そうだ。お風呂にお湯も張っとくね。」
「あっ、うん!」
私も浴室に興味が出て、同じようにバスローブを身に付けて彼氏の後を追った。
「……わっ。すごい…………。」
さすがにすりガラスで仕切られていて、良く聞くような丸見えのお風呂ではなかったが、照明機器の充実ぶりは目を見張るものだった。
スポットライトやイルミネーションなどのスイッチがいくつも備え付けられていたのだ。
緋月家で何度か2人一緒に入浴したことはあったが、こういった華やかな場所で、となるとやはり私としてもテンションが上がってしまう。
期待に胸が高まった。
―――と、その時……
ピピピピッ ピピピピッ
規則正しい電子音が私の鞄から流れてきた。
―――来たッッッッ!!!!!!!!
私は風のように素早くソファへ移動し自分の鞄を開けた。
そして自身のスマホのアラームを止めると、同じく鞄に入っていたそれを取り出した。
「世知っっ!!
16歳のお誕生日おめでとうっっっ!!!!」
言うと同時に、綺麗にラッピングされた包みを世知に向けて両手で差し出した。
「……………………えっ?」
世知は目をいつも以上に大きく開いたまま固まっていた。
バスローブ姿で。
先ほど述べたように私もしっかりとバスローブを羽織っている。
致したあとにキチンと身につけたので2人とも全裸ではない。
……お互い下着は着けていないが。
「だから、誕生日おめでとう!世知!!
日付が変わるタイミングでアラームを
セットしていたからな!
世界で1番早く世知におめでとうが
言いたくてなっ!!!」
そう言いながらぐいぐいと世知にプレゼントを押し付ける。
バスローブ姿で。
……どうやら、プレゼントの存在を完全に失念していた、というのが正解だったようだ。
「あっ……ありがとう……。
亜里紗、ありがとう……!!」
世知が震えながらそれを受け取る。
やはりだった。
やはり、大島さんから聞いていたように、日付が変わった瞬間のプレゼントは強烈なインパクトがあったようだ。
『……いきなりわりぃ宇都宮……。あのよ、、
ウチ、しん…相原と付き合い始めたんだけどよ………
しょーじき、付き合うとかどういう感じなのか、
ウチいまいちわかんねーから、いろいろと
話聞かして欲しいんさ…………。』
花火大会が終わってしばらくしたある日突然、大島さんからRAIN通話があった時は正直驚いたが、私としても身近に交際している友人が他にいなかったため、意見交換する相手が出来たことがとても嬉しかった。
結果としては、こちらからはろくな情報は提供出来なかったのだが、逆に「たまに待ち合わせするとテンション上がる」とか「日付変わった瞬間に誕生日プレゼント貰えてとんでもなく嬉しかった」とか、なるほどと思えることをいくつも教わった。
『いや、そうはなんねーから。周りの目もあるしよ。』
『フツーは毎朝ピッピの家に迎えに行かねーだろ!』
『なんでまだ高校生でそんな家族ぐるみの
付き合いになるんだよっ???』
私の提示する体験談は大島さんにとってはまったく参考にならなかったのが、本当に残念でならない。
「……いま開けてもいいんだぞ?」
「あっ、うん……。じゃ、失礼して……。」
まだぽかんと両手でプレゼントを持ったままだった世知をうながす。
世知は繊細に慎重に丁寧に包み紙を外し、これまた丁寧に4つ折りに畳んだ。
そしてそれの外箱を確認する。
「…………これ、D-SHOCK…………?」
「そうだ。世知がいつもしてる腕時計、
なんかドョンキとかで売ってそうな、
すぐ止まってしまいそうなものだっただろう?
もしそれが気に入っていたのなら申し訳ないが、
彼氏にはもっと良いものを身に付けて欲しいと
思ってしまって………………。
め、迷惑だったら部屋にでも
飾っていてくれ「いやっ!!!!」
!!??
気付いたら私は最愛の彼氏にとんでもない力で抱き締められていた。
「嬉しいっ!嬉しいよありさっ!!
ありがとう!ありがとう!!!
大事にする!これずっと大事に使うからっ!!」
世知の言葉の最後のほうは震えていた。
「よ、喜んで、くれた、なら……!
よっ、よかっ………………」
彼氏のお礼に答えようとしたのだが、私を抱き締める余りの強力な圧力に息が続かなかった。
「ありさー!ありさありさありさーーーっ!!」
今度は私に思いっきり頬ずりしてきた。
バスローブ姿で。
ちなみに、いまだに私を締め付ける力は緩んでいない。
「ね、ね、付けてみるね?いま付けてみるね??」
今日1番の笑顔を見せながら、世知がこれまた丁寧にD-SHOCKが納められている外箱を開封し始めた。
同時に解放されたわたしの肺にやっと酸素が送り込まれた。
それにしても、ここまで喜んでくれるとは思わなかったので、私としても本当に嬉しかった。
私が選んだD-SHOCKは、バンドと本体が純白のカラーリングで、バンドは樹脂ではなくエナメル製の劣化しにくいタイプだ。本体のデザインもカラーがメタルホワイトで、文字盤がダークブルーをバックにシルバーで数字が刻印されていて落ち着いた華やかさを感じさせるものだ。
言うまでもないが、ホワイトとブルーは私たちのイメージカラーだ。
時刻も電波を受信して誤差を修正する機能がついており、バッテリーも太陽電池が搭載されていて日光に当てるだけで何年も使える優れものだ。
まぁ、バッテリーにも寿命があるので、劣化してしまったら新規に交換するしかないのだが。
「すごい!すごい!すごい!!
なにこれ!なにこれ!!かっこいい!!!」
自身の左手首に時計をはめた世知が嬉しさを振りまきながら小躍りしていた。
ふふっ。
普段落ち着いた感じで大人ぶっていても、この喜びようを見るに中身はやはりまだまだ年相応なのだな。
「……気に入って、もらえただろうか……?」
「もちろん!もちろんだよありさっ!!
嬉しいありがとう!!!」
私の問いかけにも食い気味に満面の笑顔で答えてくれた。
はだけ気味のバスローブ姿で。
「……いや、本当になにを贈ろうか、
いっぱい悩んだんだが、、、
私は世知と共に、ずっと2人で同じ時を刻みたいって
思ってて、それで時計にしたんだ……あっ???」
プレゼントを選んだ説明は、テンションが上がりきった世知の無言タックルによって遮られた。
そしてそのまま2回戦に突入した。
お互いに肩で息をしながら汗だくになった私たちは、今度こそはと入浴することにした。
メイン照明を消灯して、浴槽の底からのレインボー照明や天井に付いてる回転式のスポットライトなどキラキラを楽しみつつ、激しく泡立つ入浴剤をジャグジー機能でめいっぱい泡立たせたりして、私たちは小一時間ばかり夢中でお風呂を楽しんだ。
充分満足したところで、浴室を出て備え付けのドライヤーで髪を乾かながら壁時計を見た。
入室したのが前日の23時前だったが、もう深夜の1時を回っていた。
あと1時間弱で会計を済ませて退室しないと、料金が跳ね上がってしまう。
「……なんかやばいな。明日から学校なのに……。」
「まっ、まったくだ……。このままここに
泊まってしまいたいくらいだ…………。」
私の時計を見る仕草で、世知もD-SHOCKで今の時刻を確認したようだ。
遅くなった時間もそうなのだが、2人とも今が非現実的な楽しさで満たされていて、明日(日付的には今日)から再開される日常を認めたくなかったのかもしれない。
「貸して。」
ふいに世知が私からドライヤーを手に取った。
そして丹念に私の髪にドライヤーをかけ始めてくれた。
「ありがとう……!」
「ははっ。どういたしまして。
亜里紗の髪の毛はほんと綺麗だよね。」
ううっ。
彼氏にかけてもらうドライヤーの気持ち良さと言ったら筆舌しがたいレベルだ。
ちなみに、今日は髪も彼氏に洗ってもらっている。
「ふふっ。」
幸せ過ぎて笑みがこぼれてしまった。
「……亜里紗、この時計、
ほんとありがとうね…………。」
「いやいや。喜んで貰えたなら、
私も本当の本当に嬉しい。」
再三にわたる彼氏からの感謝の言葉に、私は素直に答えた。
「…………と言うか、その、私自身も、
デザインが気に入ってしまって………………。」
「??」
私は手元の鞄からそれを取り出した。
「じ、実は、同じデザインで世知にあげたものより
ひと回り小さい、baby-Dも、
一緒に買ってあるんだ………………。
だからペアウォッチというか、お揃いなんだ!!」
と、説明しながら自分の時計を左手首にはめた。
「――――――!!」
世知が無言で後ろから抱きついてきた。
右手で私の頭を抱き締め、自身の左手は私の左手に重ねてきた。
まったく同じカラーリングで同じデザインの、D-SHOCKとbaby-Dが並んで触れ合った。
「亜里紗、ほんとのほんとに愛してる。」
「世知、誰より何より愛してる。」
同時に愛の言葉を囁きあった私たちは、この日何度目かわからないが唇を重ね合った。
重なった時計がそうであるように私たちも、今もそしてこれからもずっと2人で同じ時を刻んで生きていく。
2人でそう決めたのだ。
「……亜里紗。」
「世知……!」
今の私たちの間には、もう言葉は要らなかった。
はい。今回も謝ります!
ごめんなさい!!
と言うのは、この幕間は今回でも終わらずに、
明日更新予定の⑥-3に続くからです!!!
後編とか言っといて実は中編でした!みたいなwww
なんで?ってお思いでしょうけど、なんですかね?
今回ありちゃんの内面メインでいちゃラブ書いたんですけど、
なんだろ。やっぱり最後は世知で締めたいんですよ。
だから今回そんなに長くなかったんですけど、
「えいっ」ってここで切っちゃいましたw
次回で本当に完結しますので、
どうか、どうか最後まで読んで頂けたらありがたいですすみません^^
(2025/11/05)




