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まずは偵察!

「うーん、転生っていっても……なんか原野に放り出されただけって感じだな」


 いざ転生したと言っても、異世界転生の実感があまりない。


 ドラゴンが空飛んでるとか、地形が明らかに地球と違うとか……。

 眼の前の風景にそういった変化はまるでなく、普通に地球と変わらなく見える。


 あからさまな変化があれば「おっ」ってなるんだけどなぁ。


「いや、オレがそういう要望を出したんだっけ。むしろいい仕事されたのか」


 周囲の様子は穏やかそのものだ。

 空はちょっと曇ってるけど、空気はほどよく冷たいし、過ごしやすい。

 いきなり変なとこにブチこまれなくて良かったと思うべきか。


「ん? なにか見られてるような……」


 ふと、空の奥に何かいるような違和感があった。

 俺は目を細め、灰白(かいはく)色の空と緑の平原の間を見る。

 が、そこには何もない。

 数条の雲が空に白線を描いてるだけだ。


「……気のせいか。」


 異世界に来たばっかりで神経が(たか)ぶってるんだろうか。

 すこし落ち着かないとな。


「ともかく周囲を偵察するか。神が資材を送ってくれてるはずだし」


 あの黒衣の神(?)は当面の資材を約束してくれた。

 きっとこの近くに何か使えるものを置いてくれてるはずだ。


「…………おっ?」


 周囲をアテもなく散策していた俺は、草むらで宝箱を見つけた。

 めっちゃベタなデザインの宝箱は、野外にも関わらずまったく汚れてない。

 もしかして、これがそうなのか?


「お、さっそくケアパケ発見! いや~助かるなぁ!」


 俺はさっそく宝箱を開ける。

 ガチャリと心をくすぐる音を立てた箱の中には――


 カロリー◯イトの徳用20個パック。

 そしてうっすいペラペラの寝袋とナップザック、水筒だけだった。


「こ、これがスターターパックですか……」


 普通に百均とホームセンターで売ってるような物しかない。

 そこは神の力で何かすごいアイテム入れてくれるもんじゃないの?!


 いや、まだだ、まだ何かあるかもしれない。

 そう思ってオレは箱を傾けたり、二重底じゃないか底を叩いてみるが……。


 うん。なーんもない。

 宝箱の中身はさっきの物ですべてのようだ。

 無慈悲すぎん?


「これだけぇ~!? 小中学生の遠足のほうが充実してるぞ?!」


 マズイ。このままだと、この野っ原で野宿コースじゃないか。

 野犬とか……そういうのに襲われる可能性もある。


 だが、手持ちの道具には火を付けるものすらない。

 これ……もしかしなくても大ピンチなのでは?


「やべぇ、やべぇよ……」


 このままだと危険が危ない。まったり散歩している場合じゃねぇ!!

 オレは歩速を早め、断固たる探索を行った。


 その結果、周囲の地形がある程度わかってきた。

 最初にオレが現れた場所は、ゆるやかな丘陵になっている。

 丘陵にはぽつぽつと岩石の塊がある。

 この岩の陰をシェルターに使えないかと思ったが、少し小さすぎる。


 丘の左右には森があるが、今入るのは躊躇(ためら)われた。

 武器もないのにモンスター(いるかわからないが)に出会うのは避けたいからだ。


「……あの岩、何か妙だな」


 丘の上にあった灰色の岩塊(がんかい)がオレの注意をひいた。

 遠目には岩のように見える。だが、他の岩とは少し様子がちがう。

 うまく言葉にはできないが、なぜかそう感じたのだ。


「もっと近くで見てみるか」


 俺はその岩に近寄ってみる。

 すると、岩の近くで足元にあった何かを踏んづけてしまった。


「わっ……。――これってまさか……?」


 オレの足が踏みつけていたのは、一本の真っ白な骨だった。

 大きさと太さをみるに、人間の……。


「いや、これは人骨なんかじゃない。きっと、たぶん……犬か何かのだ」


 気を取り直して、岩を見る。


 ……この岩は明らかに人工物(モノリス)だ。

 岩は全体的に灰色で、表面はとても滑らかだ。

 磨かれた墓石のようにも見える。

 しかし、石にしては少し妙なところもある。

 見る角度を変えると、空の色を写したように微妙に色が変わるのだ。


 台座のような部分は無事のようだが、その上の部分はダメだ。

 エジプトのピラミッドのようにも見える構造物が倒れて地面に埋もれてる。


 素人目に見ても、モノリスは高度な技術で加工されている。

 石の表面には継ぎ目のようなものが見える。

 だがそこに隙間はなく、紙一枚も通せそうにない。

 モノリスの造りは異様に精密だ。

 偏執的といってもよいほどの努力が払われている。


「……ひょっとして、これもスターターパックかな?」


 オレは壊れたピラミッド触れてみることにした。

 ひんやりとした表面に触れると、すこし気持ちいい。


「……?」


 遠くから耳鳴りのような音がする。

 いや、耳鳴りを発しているのは――眼の前の岩だ!


<オオオオォォォォォンッ!!!!>


「……?!」


 怪音は周囲の空間を歪ませ、爆発する。

 瞬間、オレの全身を針が通っていったような痛みを感じた。


「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!????」


 オレはたまらず絶叫し、目を閉じた。

 空気かガスかわからないが、何かが周囲に充満している感覚がある。

 頭がぐるんぐるんとまわり、宇宙まで蹴り出されたかのような吐き気を感じる。


「うぅ……おえっぷ」


 気がつくとオレは、岩のそばでぶっ倒れていた。

 ふらふらとしながらも、岩を支えに何とかして立ち上がる。

 

「……?!」


 驚いた。崩れて地面に埋もれていたはずのピラミッド。

 そいつが台座に乗って元通りになっていたのだ。


「なんだこれ……?」


 オレの疑問に答える者はいない。

 ただ、目の前のモノリスの表面が、(ほの)かに光った気がした。




モノリス☆覚醒☆


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