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34. 三日月と旋風

 三日月は旋風に乗り、白と紫の衣装を翻して颯爽と現れた。彼は銀色の仮面をつけてしたので顔は見えなかったが、遠くからでも麗しい香りが感じられるようだった。

 これが噂の三日月か。

 人々の目はその姿にくぎ付けになり、ラクダ券を買いに走った。

 

 ただ死ぬまでにラクダ競争を見たいと言っていたナガノの姿はどこにもなかった。若さまのために衣装を誂えたのはナガノだったけれど、とても観戦に行く勇気がなかった。体調がよくないことを理由に部屋に残り、百本の蝋燭を立てて、「どうぞ怪我だけはしませんように」と立ったり平伏したりの苦行を続けていた。


 今年のラクダ競争の参加者は三十二人、女子は今年もサララひとり。

 ラクダレースの一着予想は、例年ならサララが九十パーセント以上なのに、今年は三日月と五十パーセントずつ。訳のわからない三日月という新人と互角に予想されたので、サララのプライドが傷つけられた。


「風潮とはそういうものですよ。そんなものは、サララ姉さんが勝てばもとに戻ります」

「ふん、おもしろくねー」

 サララが仏頂面をして、両腕を組んだ。


 リクイは敵の様子をみに行くと、三日月らしき若者がラクダのそばで逆立ちをしていた。柔軟体操のつもりなのだろうか。とても柔らかい身体をしていて、想像していたよりも若く、華やかな雰囲気があり、彼は男子なのだろうかと思ったくらいだった。


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