第三話 聞いてねぇぞこの野郎!
その日、俺は初めて学校に行った。少しわくわくしながら、期待を胸に小走りで。
これから変わるんだ。毎日がっ!
前の学校では、俺は何もせずそこにいるだけの存在だった。
適当に友達を作って、適当に遊んで。時には、適当に犯罪もした。
それを償えるのだから、俺は喜んで転校を望んだ。
「はいはーい。皆さん静かに、転入生の三鷹楓真くんです!」
先生の紹介のあと、俺は静かに教室に入った。
しかし、そこで見た一番最初の光景は。
「あっ、やっぱり楓真だ!!」
「と、富竹っ。」
思わず顔が引きつった。この場合どうすればいい。
漫画のお約束☆みたいになったらどーすりゃいいのか誰か教えてくれぇ!
「ラッキー!同じクラスじゃん!」
この金髪女をどうにかしてくれぇぇ・・・!←心の叫び
「そ、そうだな・・・ははは・・はぁ・・」
最後のため息は何に対してだろう。
とにかくこれで、俺はこのクラスの注目を浴びることになるのは間違いない。
どうしてくれる、かんな!
「じゃ、三鷹・・くんはここに座って。」
「はい・・・」
若干、先生の俺に対する態度が変わった。
多分かんなの知り合いだから不良だと思ったんだろ。
「はぁ・・・」
二回目のため息。ふと隣を見ると、にんまりと笑っている男子。
「なんだ・・・?」
「お前、富竹のダチってことは俺等と同じってことか?」
親指で後ろを差す。
振り向くと、柄の悪そうな奴等がこれまたにんまりと笑っている。
これは確実に勘違いされたな。俺は今まで喧嘩なんかしたことないし、どっちかと言えばパシられる方のはずだ。
「いや、俺は普通の・・・」
「おぉ!そうかお前、普通のヤンキーじゃねぇってのか!!」
「いや違くて・・・」
「おい、富竹〜、お前すごい奴と知り合いだな!?」
誰か、俺の話を聞いてくれー・・!!
乱闘が続くまま、俺は避難するような屋上に向かった。
(あ〜、俺はどうやらスゴいところに転入しちまったぞ・・・)
「あ、颯真見つけた!」
「・・・どうしたんだ。」
少し冷たかっただろうか。
ちらりとかんなの方を見ると、申し訳なさそうにこっちを見ている。
「・・・ごめんな。何か、私と絡んでるからって不良扱いされて。これから私が絞めとくから。」
いやいやいやいや!
絞めたら意味がないんだよかんな!?
「絞めなくてもいい。だからさ、その・・・できるなら友達作りたいから、その辺は配慮してくんないかな。」
キョトンとしてこっちを見るかんな。
なんだ。その目は。
「友達なら、私がいんでしょ?私じゃ嫌か?」
「嫌・・・ではないけど、そっちがからかわれるよ?」
「何が?」
・・・・あかん。これは三歳の壁だっ!
「俺とつき合ってんじゃないかって、変な噂流れるよ?」
「気にしないわよ!」
「俺がキスしても?」
「そっ・・・!!・・・・したいの?」
「襲ってもい・・・」
「ギャー!!!」
富竹は最後まで言わさずに俺の腹に見事な蹴りをヒットさせた。
「じょ・・・冗談・・・・。」
「言ってもいい冗談と言っちゃダメな冗談があるでしょ?!」
顔を真っ赤にさせて俺を見てるかんな。いやいや!こっちが恥ずかしいから。
「あたしがそういう男子が大っ嫌いなのあんた知ってるでしょ!?」
そういや、変態の多い男子のせいでかんなは不良化したんだっけ。
いや、女ってほんとに不気味だなおい。
「まぁ気持ちも解らないでもないけど」
「どっち。」
「解らないでもない。」
「はっきりしなさいよ!」
国語力なさすぎ・・・。
ありえないというような顔でかんなを見ると、かんなもこっちを見ていた。
もちろん目が合うわけだが、かんなの反応は普通の女子とは違う。
「なに、喧嘩売ってんの?」
「いやいや違うから。」
ああん?というようにこっちを見ているかんな。
「まぁいいけどさ、あんたも変なのに絡まれないようにね。」
今変なのに絡まれましたけど。
苦笑いをしてかんなの前から去る。
「ちょっと颯真!待ってよぉ!」
スカートを翻しながら俺の跡にくっついて歩くかんな。
これが普通の女子だったら俺はどれだけ嬉しいだろうか。
「富竹、お前俺なんかと・・・」
「かんなでいい。」
「・・・は?」
「かんなでいい。あたしも颯真って呼んでるから、颯真もかんなでいいの。」
命令・・・なのか?
おいお前、俺勘違いしてもいいか?
「かんな、俺・・・」
何か言おうとした、その瞬間。
「かんなぁ!そいつは誰だぁ!?」
恐ろしい怒号が聞こえた。
「おっ、お兄・・・!!?」
「お兄さん!?」
「貴様にお兄さんと呼ばれる筋合いはねぇはぁ!!!」
いやいや反射神経というものに感謝する。いきなり殴りかかってきた巨大な拳を、俺はギリギリのところでかわした。
「兄貴!何やってんだ!!」
兄貴だとぉう!?