マユのお母さん
「マユ、明日、学期末で給食ないからお弁当でしょ?
一条さんちの和歌子ちゃんの分も作るから持って行って。」マユの母、裕子が夕食を作りながらそう言った。
「お母さん、ありがとう!若君にLINEしとく」
マユは嬉しそうに母親の背中に抱きついた。
「でもさー知らなかった。若君がおじいちゃんと二人暮らしだったなんて。この前、初めて若君の家に行ったらすごく古い家でボロボロでトイレに行ったら便座が冷たくて公園のトイレみたいだったんだよ。若君はお嬢様かと思ってたからビックリしたよ…」
「そうなの。やっぱり大変だったんだね。」
母親は小さなため息をついた。
「でね、春に転校して来たリリカっていう子も来ていたんだけど凄い高い服着てて手土産にラデュレのマカロンを持って来てて、びっくりしたー。あの駅前のマンションに住んでるんだって。なんか、やな感じだった。」
「はい。はい。あそこに住んでるの?良いわねーあんたマカロン好きだから食べられて良かったじゃない。人様のこと悪く言わないの!」
裕子にたしなめられたマユは小さな声で
「それは…確かに美味しかったけど…羨ましいよ。」と言った。
「ねえ、お母さん、夏休みは千葉のおばあちゃん所に行くでしょう?今年はディズニーに行けるよね?」
マユは甘えた声で尋ねる。
「しょうがないわね。うちは余裕ないんだから無理言わないの。お父さんに相談してからね。お父さん、あんたに甘いから結局、行くことになると思うけど。」
裕子は目を細めてマユの頭をなでながらそう言った。




