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籠の小鳥たち  作者: 猫林かおる
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若君の家

一条和歌子が住んでいる家は中学校のすぐ裏手あった。


昭和時代に祖父が建てた家で黒い瓦屋根の木造造り。

一目でかなり古い家なのがわかった。

庭には松の木が数本と小さな古い池があり玄関の横には犬がいないボロボロな犬小屋があった。


4月下旬、中学二年生の四人が和歌子の家にやって来た。


学校で終わらなかったグループ課題の続きをやるためだった。


家の前に最初に到着したのはクラス委員のアリサ。

その後、少し遅れてマユとタケルがやって来た。


「アリサー!お待たせ。ここが若君の家なんだね。

なんか緊張する…アリサが一緒でよかったよー」

マユはソワソワした様子で嬉しそうにしている。

一目で気持ちを高ぶらせているのがわかった。


「一条の家ってここだったんだ。なんかイメージと違うな。」とタケルが小声でつぶやいた。


そこへ、リリカがやって来た。

リリカは三月に引っ越して来たばかりでこの街をよく知らない。迷子のようにキョロキョロ辺りを見渡して若君の家を探している。


「岩本さーん。こっちだよ!」

アリサがリリカを呼んだ。


リリカは、すぐにアリサの声に気がついたが特に急ぐ様子もなくゆっくりと三人の所へ歩いて来た。


そんなリリカをじっと見つめていたのはマユだった。

リリカのワンピースの裾がヒラヒラ風にそよいでいる。可愛らしいベビーピンクの色が色白のリリカによく似合っている。


「和歌子ー!来たよー」

慣れた様子でアリサは若君の家に上がって行った。


「あ、アリサ!座敷に上がって。」

家の奥から若君の声が聞こえた。


アリサに続いて残りの三人もゾロゾロと玄関の中に入りマユとタケルも家に上がったがリリカはモタモタして上がろうとしない。


「スリッパは?どこかな?」

リリカが言った。


「いいからぁさー。そんなの。岩本さん、そのまま上がって!」

アリサが少しイライラしながら言った。


リリカは少し戸惑いながら脱いだ靴を並べたあと玄関から上がった。


四人は玄関すぐ横の広めの仏間の座敷に入った。

座敷の中央には大きめのコタツがあった。

アリサは自分の家のように慣れた様子でコタツに入った。それにならって他の三人もコタツに入った。


「四月なのに、まだコタツあるのラッキー。なんか最近寒いよな。」タケルはそう言いながらコタツの上にあったお菓子を食べ始めた。


「タケル、勝手に食べたらダメだよ。」

マユは笑いながらタケルをたしなめた後、リリカに

「ねえねえ、岩本さん、その服、可愛いね。なんか、雑誌に載ってるの見た気がするんだけど…どこで買ったの?この辺じゃないよね。結構、高いよね」と尋ねた。


「え、これ?春休みに渋谷でママに買ってもらったの。ここの服、そんなに高くないしまとめて買ったよ」リリカは落ち着いた様子で言った。


マユは黙ってしまった。



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