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籠の小鳥たち  作者: 猫林かおる
3/21

リリカ

私の名前は岩本リリカ。


今日の帰りにクラスメイトの佐藤亜梨沙にまた怒鳴られた。

これで2回目。たぶん…佐藤さんは若君のことが好き。

学校にいる間いつも若君を見ている。


私は今年の三月、一年生の最後の学期にママと二人で東京からこの街に引っ越してきた。

それまでは東京の私立に通っていたけどこの街では公立の中学に通うことになった。

ママは泣いていた。

「苦労して受験して私立に入れたのに。

田舎に引っ越して公立なんかの学校に転校させるなんて…リリカがかわいそう。」


初めての公立の学校…私も最初はちょっと怖かった。

どんな子達がいて、どんな感じなのか想像できなかったから。

でも実際に通ってみたらママの言っていた話と違い元いた学校より穏やかな雰囲気でクラスメイトもおっとりした子が多くて優しかった。

東京から来たわたしが珍しいのか話しかけてくる子がたくさんいたけど、それも二週間くらいで、そのまま春休みになった。


新学年になってすぐの頃グループ課題をやるのに若君の家に集まったことがあった。

若君の家は学校のすぐ近くだった。


グループの子5人で家から何かおやつを持ち寄ることになった。


学校以外でクラスメイトと会うのは初めてだった。

ちょっとワクワクした。


「なかなか友達ができなかったけどこの集まりがきっかけで仲良くなれるかもしれない。」

そんなことを考えながら急いで自宅のマンションに帰って服を着替えた。


「おやつ、どうしよう…

ママ、これからお友達の家で勉強するんだけど、なんかお菓子ある?」


ママはリビングでテレビを見ながら爪の手入れ中。

キラキラ光る石のついた指先のネイルを乾かしている。髪も綺麗に巻いている。綺麗な綺麗なママ。

「今日も出かけるんだね…ママ。」

声にだしかけたけど心の中でだけつぶやいた。


ママは好きなアイドルが出ているドラマに夢中で私のことは全く見ない。

こんな時、私はいつも透明人間になった気分になる。


「昨日もらったマカロンがあるから。それ。まだ紙袋に入ったままだし…持っていったら…」


私は黙って紙袋を持って家を出た。

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