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籠の小鳥たち  作者: 猫林かおる
20/21

知られてしまった

「そろそろ行かなきゃ。」

和歌子が立ち上がった。

「塾あるんだ。勉強、ちょっと大変で。」

アリサとリリカも立ち上がった。

和歌子は祖父と二人暮らしの間、家事や祖父の介護に追われ、ほとんど勉強していなかった。教育に関して周りの大人から気にしてもらえるわけでも、うるさく言われるわけでもなく、本人も勉強が好きではなかったため、わからない事があっても、そのままで母親に引き取られる前の成績はかなり悲惨だった。だけど今は、ちゃんと勉強して『それなりの成果』を出すようにプレッシャーをかけられる。

母親からは「お父さんに恥をかかせないように、身綺麗にしてお行儀よくね。男の子みたいな汚い格好や言葉遣いしないで。勉強も最低でも十人並みの成績は取らなきゃだめよ。無理して引き取ったんだから…」と言われていた。


「あ、ごめん。忙しかったんだ!今日は塾休みだと思ってた。」

アリサが言った。

「授業は休みだけど、自習室にね…遅くまでいれるし。」

三人はそれぞれ会計を済ませて店のドアを開けた。

入り口の階段脇にマユが膝に顔を埋めて座っていた。

「え、マユ?なんで?」

和歌子は驚いて、そう言った。

アリサは、咄嗟にマユのそばに行ってマユの腕を掴んだ

「マユ、具合悪いのかな?家まで送ろうか?」

(なんで、ここにいる!?なんかまずい気がする…なんとかしなきゃ!)

アリサはマユにだけに聞こえるように小声で言った。

『大丈夫だから、ちょっと話そう。』

マユはアリサの話しを聞こうとせず、いきなり手を振り解いて立ち上がった。

(わ!!マユ、何?なんかやるつもり?やめて!!リリカになんか、やる気?殴る?)

アリサは、素早くリリカのところへ行き、身構えた。

マユはその場に立ち尽くし、泣きながら言った。

「なんで、その子ばっかり?嫌だよ。ずるいよ。アリサ、酷いよ。若君に言うなんて!友達だと思っていたのに。三人で仲良く集まって、私のこと馬鹿だって笑ってたんでしょう?」

和歌子とリリカはマユの剣幕に押されて、その場に立ち尽くした。

何が起きているのかよくわからないといった様子で驚いている。

アリサは、なんとかマユを落ち着かせようとできるだけ優しい声でマユに話しかけた。

「マユ、何言ってるの?ほら、ちょっと落ち着いて…」

「やめて、触らないで。裏切り者。靴箱で見たこと告げ口したんでしょう?上靴泥棒って。」

それを聞いて、和歌子は怒りに震えた声で言った。

「え、何?マユが、やったの?リリカの上靴隠したり、嫌がらせしたの?酷いことしたのはマユなの?」

マユは驚いて、アリサを見た。

「え?アリサ、話してないの?ほんとに?」

アリサは、うなずいた。

和歌子はマユを見ながら真顔で静かに言った。

「最低だよ。マユ…嫌がらせなんて。」

その言葉を聞いたマユは絶望した。

(もうやだ、ここにいたくない。いられない。消えたい。助けて。)

マユは泣きながら店の敷地から外へ飛び出して行った。

「危ない!マユ!」

道路に出たマユに向かってアリサが叫んだ。

車のブレーキ音が響き、マユが倒れた。


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