表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
籠の小鳥たち  作者: 猫林かおる
16/21

最悪な夜


 夏休みに入って、マユは塾が終わると駅前の母が働いている手作り弁当の店を頻繁に訪れた。


 そんなある日、

 

「手伝ってくれて、ありがとう、マユ。でも、何で最近、お母さんのこと迎えに来てくれるの?」

 

「べつに……暇だし……」


 マユは母にそう言いながら頭の中ではある事を考えていた。


「もしも、もしも、若君とお店で会えたら、『これからご飯ですか?よかったら、うちに来て一緒にご飯食べましょう!』て誘って、それから一緒にデザート食べて、楽しくおしゃべりして、時間が過ぎて『遅いからうちに泊まっていきませんか?』てお誘いして。あ、もちろん何にしない。で、仲良くなって……」


 マユがそんな楽しい妄想をしていると店の自動ドアが開いた。


 そこにいたのは、マユが待ち焦がれた王子様和歌子ではなく、大嫌いなアントワネットことリリカがだった。


「あ、アントワネット……」

 

「あ、こんばんわ……えっと……」

 

二人はそれ以上言葉を交わさなかった。


 数分後、注文した唐揚げ弁当を受け取ったリリカは店を出た。


 すると店の前にリリカの母が現れた。

 

 長い旅行から帰って来たばかりで大きなスーツケースを引いていた。

 

 リリカの母はCHANELの大きなサングラスの奥の派手に化粧した目をパチクリさせて

 

「リリカ!何してるの?それは何?」

 

「晩御飯の唐揚げ……」


「そんな物食べちゃダメでしょう!まったく!豚じゃあるまいし!」


 リリカの母はリリカの手から唐揚げ弁当を取り上げて車道に投げた。

 

 弁当の白い袋が宙に舞い、車に轢かれ、破け、唐揚げと白いご飯が飛び出して潰れるのが見えた。


 あまりの出来事にリリカは驚愕して身動きできなくなった。「殺される」そう思った。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。もう食べないから許して……」


「ほら、帰るわよ!」


 リリカは母に服を鷲掴みにされて、引きずられるように帰って行った。


 マユは一部始終を見ていた。話も聞こえた。


「そんな物って……お母さんが作ったお弁当を豚のエサ扱い?許せない。酷過ぎるよ。リリカなんか大嫌い。母親も最悪……許さない!」


 マユは怒りに震えた。


 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ