母の家族と
8月になってすぐに和歌子は母のもとに身を寄せた。
母の佐和子は6年前に田中と言う医師と再婚し二人の間には5歳になる娘がいた。
妹は無邪気で可愛く和歌子にすぐに懐いた。
佐和子の話によれば田中はとても良い人で、佐和子が「独りぼっちになった娘を手元に引き取りたい……」と相談した時にすぐに快諾してくれたそうだ。
新しい家で和歌子は綺麗な自分の部屋を用意してもらい、初めて塾にも通えるようになった。
以前は年金暮らしの祖父に遠慮があり塾には通っていなかった。
食事の準備も洗濯も佐和子がやってくれる。お小遣いも以前よりたくさんもらえた。
和歌子はアリサに「新しい生活は何の不自由も不満もないよ。心配しないで、アリサ。私は大丈夫。」とLINEを送った。
「私、心配しすぎたわ。なんか、バカみたい……人は時間が経つと変わるんだね……和歌子のお母さんも変わったんだね。よかった。」アリサは、ほっと胸を撫で下ろした。
それから……
夏休みが終わり二学期が始まった。
毎朝、一番早く家を出て登校する和歌子は一人で朝食を食べた。
夜は夜で、部活と塾で一番遅い帰宅になり一人で夕食を食べた。
休日になると佐和子夫婦と義妹の三人は和歌子を家に一人だけ置いて頻繁に田中の実家に遊びに行った。和歌子にとっては血のつながりの無い親戚の家。和歌子も行きたいとは思っていなかった。
和歌子は新しい家族の役に立ちたい、もっと仲良くなりたいと思い、何かあればすぐに母や義父の手伝いをしようとしたが、その度に佐和子に優しく断られた。
そんな日々を送るうちに和歌子は、一人で祖父の家で暮らしていた時より孤独を強く感じるようになっていった。