七不思議とかの伏線は出したくなるけど、きっと後で後悔するんだろうな。
宜しくお願いします。
浮かんでいる様な不思議な感覚。この感覚には覚えがある。
『聞こえる?』
『聞こえるよ』
念話とは違う。自分の中から発される声に応える。
『やっと話せる、変な事ばっかりしないで!』
『俺だって色々聞きたいんだからな、変って言われても、チュートリアル不足で無理ゲーなんだよ』
『質問は待って、先に私から話す。今やっているあの方法は直ぐに止めて、あんなにギリギリでやっていると、ダンジョンポイントがマイナスになるかもしれない』
『マイナスになると、どうなるんだ?』
『休眠する。休眠してる間は何も出来ないから、その間に攻められでもしたら、抵抗出来ないままやられてしまう』
『わかったよ、違う方法を考える、というか考え中だ。元々あれは妖狐の協力ありきのプランだからな、妖狐が嫌なら止めるしかない』
『良かった。そのまま続けそうだったから、怖かったの』
『攻められるって、冒険者達に?』
『それもあるんだけど、他のダンジョンから攻められる方が深刻よ』
『なんでダンジョン同士で戦うんだよ』
『決められているの、そして私たちの本能みたいなもの。先ずはダンジョンポイントを貯めて、次に他の・・ジヨ・を・・よ・と・・・』
声が途切れ途切れになっていくと、浮いた様な感覚が抜け背中や下半身の感覚で自分が横になっているとわかった。
頭がクリアになっていく、頭と体がつながり、手や足に意識が繋がっていく。試しに手を上に上げるとポヨンと柔らかいものに当たった。
「起きた?」
優しい声色に目を開ければ、銀縁のメガネ越しに柔和な眼差しが見下ろしている。頭は柔らかいものに載っているし、見下ろしている顔は逆向き。
「うなされてたからこうしちゃったけど、初膝枕は彼女が良かったかな?」
膝枕をされている。しかもとんでもない美人に。
「腕、胸に当たってるけど」
「ごめんなさい」
不思議と取り乱さなかった。
「減るもんじゃないから良いけどね。どう柔らかかった?」
「柔らかかったです」
「素直だね〜」
この人が医療室のさっちゃんだな。医療室にとんでもない美人がいる。学校の七不思議の一つとして聞いた。美人に治療してもらえるという憧れのシチュエーションは野郎達の妄想を掻き立てた。それが何故に七不思議なんて言われ方をしているかというと、この学校で医療室に辿り着くのは至難なのだ。
武器を振り回す授業があるくらいだから、医療室には頻繁にお世話になりそうなものだが、その前にヒーラークラスという高い壁がある。
怪我人が出れば、どこからともなく現れて回復を連発していく。ヒーラーといっても自分のギフテッドがよくわからないままにやっている者もいるから、素直に回復するとは限らない。怪我をした上で、ヒーラー達のオモチャになるリスクを考えると、とても挑戦したくないとシロウは諦めていた。
「特に何もしてないんだけど、大丈夫?」
「大丈夫です」
言ってから気がつく。問題がないのであれば、膝枕から身を起こさないといけない。頭が痛いとか言うべきだった。
「であれば授業に戻りなさい」
膝枕されて、胸も触った。シロウはさっちゃんが特別な人になるかもと思いかけていたがピシャリと言われ冷静になる。大人の彼女にとっては特別な事ではないのかもしれない。
「ありがとうございました」
お礼を言って医療室を出ると、珍しく楽しみにしていたカリキュラムがある事を思い出した。
今日のカリキュラムは、模擬戦とダンジョン論。ダンジョン論はいつも小難しい講義なのだが、今日は学校内にあるダンジョンに入る
体験講義なのだ。ダンジョン運営のヒントになる事があるかもしれない。
◇◇◇◇◇◇
医療室の扉が閉まると、紗奈はデスクに突っ伏した。
「変じゃなかったよね」
誰に言うでもなく一人ごちる。今日はダンジョン体験があるから、いつも紗奈の周りにいるヒーラー達が出払っていて、紗奈が対応した。紗奈は箱入りどころか宝石箱入りで育てられた為に、異性とは家族くらいしか話した事がない。
苦しそうに見えたから、思わず膝枕をしてしまったが、日頃の紗奈からは考えられない行動だったし、、胸も触られてしまった。ビックリしたがクールな対応が出来たと思う。これも日頃のイメージトレーニングの成果に違いない。いやもしかしたらもっと良い言葉があったかもしれない。先程の行動を思い返しながら、ひとしきり悶々とすると、デスクの引き出しからお気に入りのマンガを出して、1人の世界に没頭していった。
読んで頂きありがとうございます。
誤字や脱字、意味不明な文章に説明不足なところなどがあったら、是非教えて下さい!