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My dear Benjamin!  作者: 木野晴香
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4 おじいちゃん

うちのおじいちゃんは、週2回デイサービスに出かけることと月1・2回通院するほかは、ほとんど家から出ることがない。

起きてご飯を食べ、テレビを観たりラジオを聴いたり、ナンプレに悩んだりして、ヒマを持てあますと自室に戻りベッドで眠る。

家事や身の回りのこと一切を2歳下のおばあちゃんに任せ、何一つ手伝わない。

任せている割には食べ物着る物の文句が多く、おばあちゃんを困らせている。

だけど半世紀を専業主婦として生きてきたおばあちゃんは、それに毎日付き合っている。

暑い日も寒い日も、昼食の「イカの刺身」を買うために片道20分かけてスーパーに通ったり、買ってきたズボンのゴムを緩いものに通しなおしたり、老人なのに頑張っている。

それを苦しく思いながらも、仕事があるせいにして積極的に手伝えない私は、本当に苦しく思っているのかと自問してしまう。

わたしもわがままだ。おばあちゃんは私のわがままにも付き合ってくれていると、うすうす解っている。


おじいちゃんの毎日の悩みはウンコが出ないことである。(大便と書きかけたが、こっちの表現の方がよさそう?)

親指の先ほどしか出ないと嘆く。医者で出やすくする薬を処方してもらい、毎日飲んでいる。

だけど病気じゃない。

単に食べる量が少ないから出ないだけだと、私は思っている。

「便が出ないからおなかがポンポンで食べれない」とおじいちゃんは言って、最近は好きだった白米も一口しか食べないし、おばあちゃんがせっかく作ったおかずも、高いお刺身も平気で残してしまう。

手つかずの煮魚の上に、食後に口周りを拭いたティシュを平気で捨てる。

おじいちゃんのお皿には食品サンプルでも載せておけばいいのにと、腹が立つ。

それでもおばあちゃんはおじいちゃんの食事に悩み、労力を費やしている。

戦時中の生まれだから何でも大事にするかというとそうでもなく、物や家族の気持ちを大事にできるかどうかは、本人の持って生まれた資質によるのだろうと思うことがある。

あんな少ない食事で下剤を飲んでも、老廃した腸壁くらいしか出てこないのではないか。

わたしだって、調子が悪くて腸が空っぽになった後は、食べても数日なにも出てこない。

食べないと出ないのだと、毎日出したいのなら毎食たくさん食べなさいと、おじいちゃんが納得するようにお医者様から言い聞かせてもらえないものだろうか。

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