路地裏にて
♦
「やめなさい、警察だ」
路地の裏で、天使の若者が、悪魔の母、子に牙をむいていた。
残ったクロノはそこに割って入った。
「路地裏に住んで、金を恵んでもらうしかない薄汚い悪魔を糾弾してなにが悪い?
この都市からでていけ!、そしてスラムへ帰れ!」
若者はそう捲し立てた。
これがこの世界でよくある、典型的な悪魔差別の実態であった。
母、子ともにとてもおびえた様子だ。
ー激高している若者を刺激して、母、子に危害がおよぶことは避けたい
クロノはそう思った
「その人達があなたになにをしたのか?決してそのようなことはないはず。今一度落ち着いて-」
「おぉ、おまえも悪魔じゃねーか、警察などどうやって、、、、」
若者は少し驚きを見せた。
-隙を見せた!
クロノはその瞬間、腰にさしていた小型の銃のようなもの、
”トリガー”を取り出し、若者に向かってはなった!
「くっ」
若者は唸った。
若者は無数の光りの線によって手足を拘束され、まるで網をかけられたように動けなくなっている。
トリガーとは相手の動きを拘束するための警察の道具だ。時間がたてば拘束は解ける。
そのまま、悪魔の母子を若者から引き離し、更に入り組んだ路地に母子を案内した。
「もう大丈夫です。」
悪魔の母子にクロノがそう声をかける。
「有り難うございます」
母親が震える声でお礼をいい、子供は恐怖をこらえていたのか泣き出した。
「更に奥の路地に悪魔の集まりがあります。そこには、天使とつながっている行商の悪魔がいます。そこに行けば安全です。」
「しかしどうして大通りにこのような場所に?大都市では悪魔差別が横行していますし、危険だ。」
クロノは母子に尋ねた。
「はい、私達は最近天使の夫を失いました。それまでは夫が、周りの人たちと良好な関係だったために、悪魔の私たちもこの都市に住めていたのです。わたしたちはあまり表に顔をださず静かにくらしていましたから・・・目立つこともなかったのです。」
母親はそう答えた。
「まさか・・・」
クロノは驚いた。天使と悪魔が夫婦になるのは並大抵のことではない。この世界では禁断の愛とさえされていた。
「夫は差別主義に反対の者でした。スラムにも何度か訪れ、子供達に食べ物を恵むような人でした。」
母親はクロノの驚いた表情に気づきそう返した。
「なるほど・・・、ひとまず悪魔の集まりまで案内しましょう。」
クロノは二人を深い路地まで案内した。