(1)アンダーワールド
「警察だ-!止まりなさーい」
一台の車が都市を猛スピードで駆け抜けていく。
なんだ、なんだと群衆が騒ぎ立つ中、もう一台の車がそのまえを逃げていく。
「ちっ、追いつかれたか、もっとスピードを上げろ!」
「はい!」
目にもとまらぬカーチェイスだ。車と車との間をくぐり抜け猛スピードで逃げていく。
「東に回り込め!」
車が狭い路地に入り込む、パトカーがスピードにより路地裏に止まれず停止する。
「しめた!このまま逃げ切るぞ!」
犯行一派は、路地裏をゆうゆうとぬけていく。
「あちゃー、このまま逃げられまスかね、、、」
一人の警官の青年が呟く。
「いや、大丈夫だ。」
「これで安心だ、もう追ってこれない」
パトカーを振り切り車内は安堵した様子だ。
そうして複雑な路地を抜けようとしたところでー
「警察だ!止まれ!」
パトカーが道をふさぐように横に停まり、待ち構えていた。
「ぐ、、、、」
後ろからもパトカーに囲まれ、逃げ場を失った犯人達は降伏するほかなかった。
「銀行強盗の罪により逮捕する!」
犯行グループはおとなしく連行されていった。
犯人逮捕の指揮をとったのは黒髪短髪でそして-
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「よくやったな、クロノ」
銀髪の男性が彼女に声をかけた。
「有り難うございます。上官。」
その姿を見た、他の警官達はざわめいた。
「悪魔で警察に上り詰めるとは、、、、、」
「しかもスラム育ちってほんとすか」
彼女は黒い羽を持った悪魔、そして警官達はみな白い翼を持った天使だ。
ここは、天使と悪魔という種族が混合して暮らす、アンダーワールド。
上流階級は天使達がしめ、悪魔出身は階級が低いとされていた。
悪魔差別が横行するこの世界で、警察という地位に悪魔が付くことはまれとされていた。
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警官達は任務が終わり署に戻っていく、ここはこの世界で最も大きい都市、メトロポリスだ。
そして、警官達は警察の中でも特殊な世界警察(いうなれば国家警察)であった。
「しかし、こんな都市規模の事件にかり出されるなんて、世界警察も暇になったもンですね」
髪が栗色の天使の青年がそう言うと、すかさず反論が入る。
「どんなことでも、事件は事件だ。世界警察だからひいきされるべきとは思わないが」
先ほどのマイル上官が部下の者を叱責する。
「マイル上官、では私たちは本署に戻りましょう」
クロノと呼ばれる少女の警官がそう声をかける。
「ああ、そうだな」
マイル上官はそう踵を返した。
この世界でも警察署というのは点々と存在している。
しかしながら、この大都市メトロポリスでには、総本部でありもっとも世界的で難しい事件を扱う本部がある。
それが、マアトと名付けられた警察達の本部組織だ。
そしてクロノ達はその中でも特殊な任務を遂行する部隊であり、署内でもその顔を見たことがある者は少なかった。
「では、帰ろう。」
マイル上官の指揮の下、栗色の髪の青年がついて行く。
上官は背が高く、逞しく短髪で銀髪の髪をしている。
「上官、さきに帰っていてください。後から戻ります。」
クロノは二人にそう声をかけた。
「わかった」
上官が返事をし
「気をつけてくださイね」
青年がそう言葉を残し二人は引き上げていった。