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続 日韓大戦  作者: 独楽犬
第二部 遅滞の章
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三四.攻勢は続く

ダム湖南 国道385号線沿いの第一中隊陣地

 南畑ダムの細長いダム湖の南端、その湖岸の線に沿うようにカーブを描いて国道385号線が通っている。自衛隊が陣地を築いたのはL字カーブの山側で、道路を見下ろすように兵士を配置している。第一中隊はカーブの正面で敵を迎え撃つ計画である。

 さらに最初の防衛線から第一中隊の正面に至るまで国道385号線は湖岸に沿って敷かれている。反対側は崖になっていて逃げる場所がない。ここを狙わない手は無いと、ダム湖の対岸には第三中隊から派遣された分遣隊が布陣し、迫撃砲や対戦車ミサイルで対岸の国道を狙っている。そして、その側面攻撃を突破した先に第一中隊が待っているというわけだ。

 桜井たちは新たな陣地に配置につき、武器を構えていた。すると爆発音とともに第一中隊の前の陣地があった付近から噴煙が上がった。

「敵とぶつかったな」

 古谷の呟きを聞いて皆の目が前の陣地の方向に注がれた。立ち上る噴煙は次々と増えていった。




ダム北側の陣地

 第一中隊が後退した後、この陣地を守っていたのは第二中隊だった。彼らは高麗軍主力を落とした橋の対岸で足止めしていたが、高麗軍の迂回部隊は既に第一中隊の陣地を占拠していた。迂回部隊は国道385号線を挟んで反対側の第二中隊と銃撃戦を展開していた。

 銃撃戦は高所に陣取る自衛隊側が優勢だった。高麗兵は道路の脇に伏せて銃撃に耐えなくてはいけなかった。89式小銃やミニミ機関銃の放つ銃弾がアスファルトやガードレールに当たり火花を散らす。

 すると空からヒュルヒュルというなにかが風を切るような音が聞こえてきた。

「砲撃だ!」

 その叫び声と同時に自衛隊員たちが陣地の中に引っ込む。



 道路の反対側でも高麗の兵士達が地面に伏せて砲撃が終わるのを待っていた。至近距離で対峙しているので、いつ高麗兵の陣取る場所に砲弾が飛び込んでくるかもしれない。実際、砲弾の破片が高麗兵の上にも降ってきている。

 そんな中でも高麗の中隊指揮官は部隊を掌握していた。

「第2小隊に迂回して進撃路を探すように伝えるんだ」

 中隊長の命令を聞いた第2小隊は匍匐で後方に下がっていった。それから自衛隊の築いた陣地を辿って別の進撃路を探すのである。

 一方、自衛隊の陣地を攻撃していた味方の砲兵は次第に散発的になった。対砲兵戦を開始した自衛隊特科部隊への応戦を始めたので、味方部隊への支援がまばらになったのである。



 高麗軍の攻撃は味方特科部隊の反撃でだいぶ軽減されたが、第19普通科連隊第二中隊の危機は終わっていなかった。敵の分遣隊が道路正面を迂回して山側を渡り、第二中隊の陣取る陣地の側面や後方を脅かし始めたのだ。

 第一中隊の陣地への配置を終えたとの連絡を受けた第二中隊長は後退を決意した。しかし敵軍が肉薄している状況では難しい。そこで第二中隊長は後退の時間を稼ぐために攻撃に打って出ることにした。

 中隊長は連隊直轄の重迫撃砲中隊と特科隊に支援を要請し、さらに指揮下にある軽迫撃砲小隊にも弾薬残量を気にせず撃ちまくるように命じた。

 それらの火砲が道路を挟んで反対側の高麗軍に向けて一斉に放たれた。数十の砲弾が一斉に爆発して木々を吹き飛ばし、地面を耕す。激しい砲撃に高麗兵は釘付けにされたが、長くは続かなかった。数分後には砲撃は終わった。

「突撃!」

 砲撃が終わると同時に第二中隊が一斉に陣地を飛び出し、道路を渡った。砲撃のショックから抜け出せない高麗軍は即応できず、道を渡る自衛隊員たちへの阻止射撃はまばらだった。高麗軍部隊は瓦解して、次々と後退していった。

「撃ち方止め!撃ち方止め!」

 中隊長がそう命じた頃には、戦場には高麗兵の死体だけが残されていた。自衛隊の銃撃が終わると、あとは沈黙だけが残った。勿論、戦場に倒れたのは高麗兵ばかりではない。

「戦死7、負傷9です」

 隊員達の点呼を終え、結果が中隊長に報告されたまた16名の隊員が失われたのだ。

「よし。撤収する」

 中隊長は隊員たちに陣地の後方に待機しているトラックに乗り込むように命じた。高麗軍はすぐに反撃を仕掛けてくる筈だ。急がなくてはならない。




ダム湖南 第一中隊の陣地

 桜井たちが戦場を観察していると、高麗軍の砲火に追い立てられるようにトラックの車列が前の陣地からこちらに向かってくる。

「援護射撃用意!」

 第一中隊の隊員たちが一斉に小銃を構え、第二中隊を追いすがる敵兵が居れば掃討する準備をした。桜井も狙撃銃を構える。

 結論を言えば第二中隊の援護は不要だった。高麗軍は落ちた橋を架けなおす最中であり、車両で逃げる部隊を追撃する手段はなかった。ダム湖の縁の一本道を走っているので高麗の砲兵に狙われればひとたまりも無かったが、高麗兵はダム湖を俯瞰できる観測点を持っておらず、砲撃の照準は甘くほとんど被害を与えなかった。

 無事に撤収した第二中隊は第一中隊の陣地の左翼について、山中を迂回してくるかもしれない高麗軍歩兵部隊に備えることになった。




久留米市中央公園 第12旅団司令部

 第12旅団は増援のヘリコプターを得て、ようやく1個普通科連隊の空輸能力を得ることができた。今はそのヘリコプター部隊を総動員して筑後川周辺に部隊を動かしており、司令部は川原に近い久留米の中央公園に置かれた。

 旅団司令部はただちに北方へ偵察班をいくつも出して、南下しているだろう高麗軍の居場所を探っていた。そして、偵察隊が鳥栖市内に終結しつつある高麗軍を発見した。高麗軍は公園や競技場、学校などの市内各地に待機し、更なる攻勢に備えているようだ。そして高麗軍が占拠した施設の中には陸上自衛隊鳥栖分屯地も入っていた。

「早く取り戻したいな」

 旅団長は心底からそう思っていた。

「問題はどちらへ向かうかだ。南か、西か」

 高麗軍には国道34号線ないし県道31号線を西へ進み、陸上自衛隊第4師団の後方を遮断するか、もしくは南へ向かった筑後川を渡るか。それに対して幕僚の1人が意見を述べた。

「敵はこちらの存在にも気づいている筈です。我々を無視して西に進み、側面を晒すようなマネをするとは思えません」

「そうだな。では迎え撃つとするか…」

 自衛隊側の方針は決まった。




鳥栖市民公園 高麗連邦陸軍第9旅団司令部

 一方、南下してきた高麗陸軍第9旅団司令部は鳥栖の市民公園に陣を敷いた。旅団の部隊が集結を終えた時、日は西に沈みつつあった。午前中に攻撃を開始してから、丸々半日戦い続けたことになる。

 第9旅団は既に筑後川周辺に陸上自衛隊が展開しつつあることを把握していた。それが彼らが突破すべき最後の防衛線である。それさえ突破すれば後は機甲旅団の仕事だ。無傷の彼らが九州を蹂躙し、自衛隊に徹底的な敗北を与えるのだ。その為に目の前の最後の防衛線を突破しなくてはならない。

「仕掛けるぞ」

 司令官の決断に参謀達が頷いた。そして詳細な計画の立案に入った。

「砲兵隊の方はどうだ?」

 旅団長が尋ねると作戦参謀は首を横に振った。

「砲兵隊は師団砲兵及び野戦重砲兵とも砲弾をかなり消耗し、大規模な砲兵戦を再度行うのは難しいかと」

 高麗軍は第二次攻勢に際して大規模な砲兵戦を行ったが、如何せん海を超えての侵攻であり、大量に砲弾を消費する砲兵戦を長く行い続けることは無理があった。高麗砲兵は日本に陸揚げし備蓄していた砲弾の多くを使い尽くしていたのである。

「どうしたものかな…」

 旅団長は司令部のテントを出て、空を見上げた。まもなく日が落ちようとしていて、空はだんだん暗くなっていた。

「夜襲をかける。敵が態勢を整える前に迅速に叩くしかない」

 大学の書店でジャック・ライアンシリーズ最新作「デッド・オア・アライブ」ゲット。前作で最後だと思い込んでいたので、思わぬサプライズ。

 F―XにはF-35が選ばれたという報道がありました。他の候補はF-18Eは迎撃機向きじゃないし、タイフーンはレーダーがいまだにフェイズドアレイじゃない在来型ですし、それに両者ともどう足掻いても第4.5世代ジェット機に過ぎないわけですから、大々的に軍拡を進める中国に対抗するには第5世代であるF-35を選ぶのは当然でしょう。アヴィオニクスも3機種の中では最も進んでいるようですし。

 問題は納入時期ですね。F-4退役に間に合うか。フェイズドアレイレーダー装備のF-15Eを中継ぎに導入して、F-15後継にF-35を導入というのがベスト、というのがF-22導入が不可能になった後の私の考えなのですが。

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