序 ユギオ
これは小説“日韓大戦”の続編です。本小説を読む前に、第一部である“日韓大戦”をお読みになることをオススメします。
高麗連邦標準時 6月25日午前8時 高麗陸軍士官学校
鄭宇中大統領は校庭に並ぶ士官候補生たちとマスコミ関係者を前に壇上に立っていた。今日は6月25日である。韓国語では6をユック、2をイ、5をオと読み、6月25日をユギオと現す。それは1950年に北朝鮮が韓国に侵攻し、朝鮮戦争が始まった日を示す。
「諸君、今から65年前のことだ。我々は日帝36年の植民地支配から光復を果たしたのもつかの間、アメリカとソ連の超大国の都合により2つの国家に分断された。そして遂には同胞同士で銃を向けて、戦争をする事態までに発展したのである」
壇上で演説を続ける大統領を国軍の明日を担う若者達は何の疑いも抱かずに見つめていた。
「なぜそのような事態に至ったのか。それは我らに十分な力が無く、大国に翻弄されるしか無かったからだ。だがもはや高麗連邦はかつてのような脆弱な国家では無い。民族の祈願である祖国統一を果たして世界に名だたる大国となったのだ!もはや我々は他国に屈する事はありはしない!」
大統領の力強い宣言に皆が息を呑んだ。
「今、高麗連邦は日本と戦争をしている。日本が高麗連邦を貶めるべく進めている計略を打ち砕く自衛戦争であるとともに、我が民族の団結と意志を世界に見せつけ、我が高麗連邦を大国として認めさせるための戦いだ。我々はこの戦いに必ず勝利にしなくてはならないのである!」
聴衆は大統領の演説に呑み込まれていた。その内容は一方的で、ただ彼らに都合の良い代物であったが、その場に居た全員がそれを信じ、この戦争における高麗連邦の勝利を確信していた。
「高麗連邦万歳!」
「祖国統一万歳!」
「韓民族万歳!」
「忠誠!忠誠!忠誠!」
「万歳!万歳!万歳!」
絶頂に達した士官候補生たちは大統領を称え、万歳を繰り返した。彼らは別に愚かであったわけではないし、無能であったわけでもない。ただ純粋なだけであった。
というわけで、早速ですが日韓大戦第二部の連載がはじまりました。
本当はもっと話を練り込んで執筆を進めてから連載を開始しようとも思ったのですが、現実の日付も劇中の日付も折角、六月二五日を迎えるのですから、この期を逃すわけにはいかない!と。劇中日付が丁度6月25日になってしまったのは、意図したものではなくまったくの偶然でビックリしています。
ということで第一部以上に政治パートに重点が置かれる予定の第二部ですが、読者の皆様、どうか御付きあいしていただきたい。
(改訂 2012/3/23)
内容を一部改訂