秋葉原ヲタク白書90 女王メイドと貢ぎ豚
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナのためのラノベ第90話です。
今回は、アキバ系を名乗りながらも実は全く秋葉原と無関係な女王様が失踪し、貢ぎ豚から捜索を依頼されます。
調査の末、背後に大陸最強のサイバー軍の存在が浮上、さらに外交特権に守られた外交官キッズの影も…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 消えたメイド長
「ミルクさんから名探偵と伺って」
「探偵ではナイのです。えっと"推し"が行方不明だとか」
「名前はアイリ。地下アイドル通りにある御屋敷のメイド長で…もう4日も連絡がとれない!」
世界中の心労を全て背負ったかのような顔。
チラ見しただけで過労死が伝染しそうだょw
「ちょっち訳アリなんだ!直接アイリと会ったコトはナイ。御屋敷に御帰宅したコトはナイ。肉体関係もナイ」
「3密の世に3ナイですかwソレで…よく"推せ"ますね?」
「地下アイドルのコメント欄で知り合って個人的にチャットを始め、本名まで交換した。それが4日前から突然音信不通に!」
低目スレスレに1球投げてみるw
「まーさか、相手のスマホが料金滞納で止められてるとか?」
「絶対違う!実は、最後に話した時、問題を抱えていると悩んでた。詳しくは知らないが恐らく大惨事に違いナイ」
「詳しく知らない大惨事ってイメージ沸きませんが、ヤタラ自信満々なのが眩しいwで、国際ロマンス詐欺って御存知ですょね?ネットで親しくなった女性が、ある日突然お金が必要とほのめかしてくる…」
「絶対違う!実は、私から金を貸すと申し出たが断られた。とにかく、彼女のコトが心配なんだ。わかった!私に居場所を言わなくても良い!せめて彼女が無事かどうかだけでも調べてくれ」
散々まくしたてて依頼人?ボラレ氏は、肩を落としてお出掛けして逝く。
ミユリさんのメイド長仲間ミルクさん経由でマタも怪しいリクエストだ。
あ、ココは僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷。
光も到達不能領域の問題が持ち込まれる"事象地平面バー"と呼ばれる。
「とりあえず、地下アイドル通りの御屋敷に御帰宅してみる?」
「あ、無理です。アソコは"メイドヘヴン"だから」
「え?脳天に輪のある天使メイドが出て来てハッスルサービスとか?」
「バカ」
現場はレンタルカフェで、ロクに営業実績も無い御屋敷が多数ブッキングされてて、それぞれネット上で"アキバの御屋敷"を標榜w
つまり、実態の無い"ペーパーカンパニー"ならぬ"ペーパー御屋敷"の大巣窟なのだ。
「ソレに、アイリ@秋葉原メイドで検索かけたら、ズラズラ50人ぐらいヒットしちゃって」
「何か企んでる系だから20代後半から30代前半だろう。ソレで少し絞れば?」
「まだまだですね。もっと親身な御助言プリーズなのです」
「でも、この手の話は、ミユリさんも御存知のとおり、骨の折れる単純作業の積み重ねの先にしか答えはナイ。あらゆる可能性を1つずつ当たるのみだ」
「アキバ中のアイリを訪ねるのって、スゴく大変なのですょw」
「何百時間もの労働より、鋭い推理1つで解決出来れば、この世に苦労はナイ。その点で逝えば、僕達は聖地最悪の怠け者だ」
「わかりました。明日の朝から尋ねてみますね」
「お手伝いしたいのは山々だけど、昼のサラリーマン稼業が立て込んで…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日の昼下がり。
ミユリさんは新橋鮫に電話スル。
新橋鮫は、万世橋の敏腕刑事だ。
「あ、鮫さん?ミユリです。今、メイド長仲間からのリクエストでアイリってメイドを探してるの。でも、住所が不明で…」
「へぇ。でも、直接電話くれるなんて珍しいな。調べようか?」
「いいえ、大丈夫。多分、家は見つけたわ。管理人さんが入れてくれたの」
「それで?」
「誘拐されてる」
しばらくして、現場である浅草橋のマンションに警察が到着。
室内は…テーブルは引っ繰り返りイスは散乱の台風一過?だw
「9人目のアイリで偶然たどり着いたの。ドアのピッキングに気づいて、管理人さんを呼んだら中が荒らされてて、この状況ょ」
「ミユリの探してたアイリに間違いナイのか?」
「写メを依頼人に確認してもらったわ」
「盗まれたモノは?」
「本人wバッグの財布とギフトカードの束はそのママ。この蒸気な面白い小物は、本人の手作りみたいだけど放置」
「スチームパンカーか…なぜ誘拐だと?」
「血痕に加えて外階段に靴跡が残ってるの。彼女は自分の足で歩いて出てる」
「なるほど。靴跡を見ると犯人はサイズ12の男。侵入して待ち伏せ、帰宅した彼女を襲った」
「身代金狙いならまだマシょ。それ以外だと女性はもっと悲惨だから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アイリは三兄妹の末っ子で、その日の夕方、長女と長男が万世橋に駆けつける。
新橋鮫の厚意に甘えて、取調べの模様をマジックミラー越しに見させてもらう。
あ、僕は鮫の旦那には色々貸しがあるンだ。
「身代金の要求は来てません。警察から連絡をもらうまで、妹が失踪したコトも知らなくて」
「仮に身代金の話が来てたら、私達兄妹で既に払っている。あ、決してウチは裕福な一族ではないがね」
「妹のスマホは、マンションになかったのですょね?追跡出来るのでは?」
「電源が切られたか壊されてます。妹さんを恨む者は?元恋人とか?」
「そんな者はおりません。高校の時にフッた彼氏は何人かいますが…みんな良い子達でした。暴走族だったけど」
「念のためリストを頂戴出来ますか?最近の仕事仲間や恋人が絡んでるのカモしれません。彼女の周囲に疑わしい人物は?」
「最近のコトは、良く知らナイんだ。妹は高校を出てから実家と疎遠になった。兄妹も避けるように…」
「年に数回だけ会って、一緒に食事に逝く程度だったわね」
「その時に、何か変わったコトは?」
「ここ数年、妹は頑なに食事代を自分で出すようになった。ソレも、毎回ギフトカードで支払うの」
「財布にもカードが沢山入ってた」
「とにかく、何でもギフトカードで払ってて切らさないの。出所を問い詰めたら、笑い飛ばされちゃって。怪しいコトに手を染めてナイと良いのだけど。カードの偽造とか」
鮫の旦那を取調室の外に呼び出す。
「間違いなく、アイリはキワドいコトをしてギフトカードを稼いでる。未使用のギフトカードが出て来たコト自体は、決して珍しくナイ。発行元は、ソレで儲けるンだから。でも、常時使ってるとなると…」
「テリィ様の仰る通り、常に切らさズと逝うのが気になります。加えて、アンリは美人。ソレでいて、収入源は不明。ソレと、マンションの部屋には、高性能カメラと三脚がありました」
「イケイケな勝負ランジェリーも」←
「うーん自撮り動画をネット配信して稼いでると?」
「あの世界は、視聴料金の支払いは、ギフトカードが一般的だ」
「視聴者の内の誰かがマンションを突き止めて誘拐したのカモしれません」
「わかった。とりあえず、サイバー班にギフトカードを調べさせる。メールでの送付分もあるからな。結果は知らせるょ」
第2章 アンリを追う者
馴染みの女サイバー屋に頼んで色々と調べた上で翌日、依頼人ボラレ氏を御屋敷に召喚。
「テリィ様から、今回の経緯を御説明致します」
「貴女の"推し"は、ギフトカードがお好きらしい。先月だけで50枚近く受け取ってる。調べてみたら、送り主は全員男性だ。最初は自撮りの配信をしてたのかと」
「絶対違う!」
「またかょw」
「彼女がネットで男に裸体を晒していたと?彼女は絶対違う!」
「誰も裸体ナンて逝ってナイ…ソレに確かに正確には違う。僕達が見つけたネット広告によると、アンリは"マリポ女王様"を名乗ってる。男を経済的に支配する女王様、いわゆる"フィンドン"だ。美女に金を貢ぐことで性的な興奮を覚える男を集め、高圧的に、しかし法的には合意の上、貢がせる。"フィンドン"は、お客のコトを"貢ぎ豚"と呼び、豚達との交流にビデオチャットを使う。ソコで男達を徹底的に脅し、辱めて金品を送るように仕向けルンだ」
「あくまで、合意の上でのプレイなの。だから…楽しかったでしょ?ボラレさん?」
「ぜっ、絶対に…うーん違わない。ホントに調べが早いな、君達はw」
「得意分野は特に」←
「で、だとしたら、どーナンだ?」
「万世橋は、貢ぎ豚の誰かが誘拐した、と見ている。貢ぎ過ぎて逆恨みしたか…何らかの理由でお金を取り返す気になったか」
「ぼ、僕は容疑者なのか?」
「貢ぎ豚さん全員が容疑者だけど、貴方は貢ぎ額が桁違いに大きいの。この2年で700万円近くょね?」
「で、でも、僕が犯人なら、なぜ貴女方を雇うンだ?」
「良い質問だ。依頼人でなければ、貴方は、今のヤリトリを万世橋で警察官相手にやってたハズだ」
「私が貢ぎ豚である事実を隠してたのは、妻や会社にバレると困るからだ。実際、アンリとはリア友で、無料でチャットもしてた。貢ぎ過ぎてもいない。彼女は、客が出せる以上の額は、決して求めない良い女王様だ」
「ソレは、貴方がボラレ過ぎてるだけだ。実際、彼女は他の豚を何頭かカード破産させてる。とにかく!土曜の夜10時頃、隣人が大きな物音を聞いてる。誘拐はその時だ。貴方は何処にいた?」
「その夜なら、日曜の内覧会の準備で残業してた。他に業者も沢山見てるよ。帰りは12時を過ぎた」
「ならば、他に情報はナイかな?アンリとモメてた豚仲間はいないか?脅してきた豚とか」
「1頭、話を聞いた。掲示板で誹謗中傷してきた豚がいるって」
「どんな内容?」
「うーんワカラナイ。彼女も、心配はしてなかった。東北の若い豚だ」
「名前は?」
「知らないが、やりとりをしてるサイトの名前は聞いた。"赤い錠剤"だょ」
「"赤い錠剤"?確かか?」
「知ってるのか?」
「サイトは知らないが、ソレは隠語だ。アンリにとっては不吉な隠語」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヨドバシアキバの1Fにはベーカリーカフェが2軒あるが、彼はパンが…不味いw方にいる。
「ルセンさん?少しお話を」
「話って?」
「お宅が運営する闇サイトの件だ。"インセル"御用達のサイト」
"インセル"。
すなわち"不本意な禁欲者"。
彼等は常に自問自答している。
「ナゼ俺は、メイドとつきあえないのか?」
「ソレは、メイドにモテる御主人様や、モテる御主人様になびくメイドがいるからだ」
「メイドが俺に性的な魅力を感じさえすれば幸せな人生になっていたのに!と考えるだけでカラダ中に憎しみが燃え上がる!」
「メイドが俺から幸せな人生を奪った。だから仕返しにメイドの人生も奪ってやる。ソレでやっとevenだ」
やれやれ。ホント困った連中だ。
ん?メイドどころかTOも憎い?
「あ、あれ?俺のサイトが…誰かにハッキングされてるw」
「だろう?否定しても無駄だ。アンタが管理者だと仲間が突き止めた。アンタのカード履歴から、このベーカリーカフェに入り浸って最近"アンガスメロンパン"にハマったコトも知ってるぞ!」
「お前達は何者だ?あのサイトはみんなが悩みを語り合う、大切な場ナンだ」
「問題は、君達が自分自身の性的な欲求不満を全てメイドのせいにしてるコトだ」
「投稿を見たけど過激ょねぇ」
「"赤い錠剤"って逝うのは、元来は極度の女性嫌いを指す隠語だ。ソレが…見ろ。婚前交渉したメイドのレイプを合法にせょとある。堕胎したメイドは性奴隷として国有化し管理すべきだ、とも」
「タ、タダの冗談だっ!」
「君達にとっては、そうだろう。ただ君のサイトは、大陸最強のサイバー軍総参謀部第3部2局61398部隊に目をつけられ、既に乗っ取られつつある。コメント欄での彼等の辛辣な言動に刺激された一部のサイト常連は、既に極右テロリストと化し、過激な行動を準備しつつある」
「こーゆー暴力と憎悪を煽るだけのヘイト系の掲示板は、大手ネットサービスでは禁止ょ。だから、貴方は闇サイトに潜ったのでしょ?」
「しかし、潜りが浅かったな…これからスル質問に答えナイと、当局に全て匿名で通報スル」
「わ、わかった。答える。とりあえず、店を出よう」
無視してミユリさんと彼のテーブルに座る。
「実はね。私達は、マリポって逝う貢がせ女王様を探してるの」
「お宅の常連が、大学資金まで彼女につぎ込んだ挙句に拒絶された。すると、別の常連が現れ、彼女の家を突き止めて誘拐を請け負うと申し出てるw」
「そして、彼女は実際に誘拐された。スレッドを立てた常連の名前を教えろ」
「悪いが投稿は全て匿名だ。ユーザ名もなくアイコン以外は管理者にもわからナイ」
「ところが、サイトに寄付すれば特殊フォントが使えて投稿可能文字数も増え、アイコンの下に金の星がつく仕掛けがあるょな?」
ソコまで知ってるのとウンザリ顔のルセン。
「さっきの常連にも金の星がある。彼のカード情報を渡すか、日本のグァンタナモへ行くかドチラかを選べ…おぉ聞き分け良いな。ルスピ?秋田在住?最終ログインは…今朝だ。しかも、アキバからじゃないか!」
「鮫さんに誘拐犯が分かったと伝えます。みなさーん。コチラです」
ミユリさんが大きく手を振ると、駐車中の黒いSUVのドアが開き、男達が続々と現れる。
「だ、誰だ?」
「NISC」
「ま、待て。バラさない約束だろ」
「大陸の手先になって、売国奴や第五列を育てる奴をハメるのは、ヲタクの義務だ。朗報もある。この先5〜10年は、負け犬達の世話をせズにすむぞ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
新橋鮫が現場に駆けつける。
裏アキバの妻恋坂の交差点。
「あいつがカウスか?」
「はい」
「アイリは?」
「いませんが見てください。刑事からの情報に基づき、交通課が奴の車を見つけて、停止させたら助手席から銃がw」
「発砲は?」
「未然に阻止出来ました。事前に頂いていた情報のお陰です」
「戦争でも始める気だったのか?誰を狙ってたンだ?」
「ソレが、ナビの目的地はカルチャーセンターの"相撲エクササイズ"の会場でして」
ソコへ取り押さえられたカウスが通りかかる。
「連中が通報したンだな?」
「連中?」
「"相撲エクササイズ"の女どもだょ。昨夜張り込みに行った時に気づきやがったンだろう」
「"相撲エクササイズ"を張ってたのか?お前…変態か?」
「天に代わりて不義を討つ、恐怖の天誅処刑人だ。しかし、女って奴等には、いつも先回りされちまう」←
「アイリは?彼女にも天誅は下るのか?」
「なぜアイリを知ってる?」
「誰かが彼女を殴って誘拐した。お前が掲示板で予告した通りにな」
「な、何っ?誰かがアイリに乱暴しただと?」
「トボけるな。お前だろ?」
「俺はそんなコトはしねぇ。"相撲エクササイズ"襲撃もアイリのためだ。俺の"女王愛"を示したかったンだ。頼むから、アイリを探してくれ。何でも白状する。彼女を見つけてくれ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
またまた新橋鮫の厚意で、カウス取調べの模様をマジックミラー越しに見させてもらう。
「アイリは?無事なのか?」
「悪いが、未だ行方不明のママだ」
「俺を即時釈放してくれ。手伝う。アイリのコトなら俺が1番良く知ってルンだ」
「お前は盗んだ銃を車に積んでた上"相撲エクササイズ"の襲撃計画も認めたんだ。当分釈放は無いぞ。手伝いたければ、先ず質問に答えろ」
「そ、そうなのか?」
「そもそも、お前が誘拐してナイと言う証拠はアルのか?狂信的な女性蔑視主義者"インセル"の巣窟サイトで、お前はアイリ誘拐を買って出てルンだぞ?」
「本気じゃない。あのサイトでは、誰もが辛辣で過激な男根至上主義者を気取ってルンだ」
「誘拐は土曜の夜だ。お前は何処にいた?」
「土曜の夜は、地元を走ってた。道の駅で払おうとしたらカードが使えず、クソ女が現金で払えと言ってきた。レシートがダッシュボードにある」
「レシートを探し、女性に話を聞こう」
「こんな色男を忘れちゃいないだろう」
「ん?お前、ホントに"インセル"か?自分の容姿にコンプレックスがナイなら、何で"インセル"になるンだ?」
「何ソレ?あの闇サイトは、アンリの情報を得るために絡んでただけだ。俺は、単なるアイドルヲタクで極右思想にも女性乱射テロにも興味はナイ。昨日憧れのアキバに着いたが、アイリはいなかった。前に話した時、馬鹿なコト言って怒らせたからだと思って、彼女を傷つけた連中に仕返しすれば、お詫びになると思いついたンだ!」
「"相撲エクササイズ"の女子がアイリを傷つけたのか?」
「そうだ。もともとアイリも受講生だった。ソレなのに、連中が料金を上げてやめさせたんだ。誘拐が土曜の夜だと言ったょな?土曜なら、彼女が旅から戻った直後だ」
「旅?アイリは旅に出てたのか?」
「各地を回ってた。秋葉原、国分町(仙台)、ススキノ(札幌)、中洲(福岡)、日本橋(大阪)、大須(名古屋)」
「萌えスポットばかりじゃナイか。しかし、彼女から行き先を聞いたのか?」
「いや。直接聞く必要はナイ。数年前、アイリのスマホにスパイウェアを送り、常に居場所を監視してルンだ!」
「威張るなwストーカー罪も適用決定!」
「わわ!去年も同じ都市を、同じ順で回ってた。だから、アイリが大須を出たのを見て、俺も上京した」
マジックミラーのコチラ側で、僕はミユリさんと作戦会議。
「このアイリの旅は気になるねぇ」
「女王様にも出張があったのかしら」
「年に1度のお得意様回りじゃね?デリヘルならぬ"デリ女王様"に違いナイ。便利な世の中だなw」
「ソレなら2年連続で同じ行程なのも頷けますね」
「でも、依頼人のボラレ氏に聞いてもカウスが言う都市の客は知らナイと答えるだろうな。アイリが直接豚と会うハズはナイと固く信じてるから」
「それで!今、女王様の訪問地と日程をPCで調べてみました!」
「アイドルのアリーナツアーだったとか?」
「想定外でしたが、ある種のツアーみたいです」
「最後は、またアキバに戻ルンだね」
「明日お邪魔してみましょう!問題は普段着で逝くか?コスプレして逝くか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
スチームパンクの見本市だw
全国縦断のコンベンション。
「"蒸気発明フェス2020"か。コロナ下で、よく開催出来たなw仕事でなきゃ楽しめそーだったのに」
「レトロフューチャーな発明家や擬似科学オタクの集いって、意外と面白いンですょね。テリィ様の飛行船長、素敵です」
「ミユリさんの大正浪漫メイドもね。きっと、アイリは手作りガジェットを出品してたンだ。問題は、誘拐の原因がこのフェスで見つかるかどうかだね」
入場者の列を眺めてたら、遠くから…
フランケンシュタインが絡んでくるw
「おや?君、いいバイザーだね。僕は、人造人間だ。列の横入りは禁止だょ」
「アキバのメイドでミユリと申します。主催者の方とお話をしたいのですが」
「え?僕は主催者の1人ですけど、何か…え?アイリ?参加3年目ですが、彼女のガジェットは、センスが良いから、いつもバカ売れしてました…えっ?誘拐?ま、まさか」
「彼女の周囲で、何か問題はなかったですか?しつこい客とモメてたとか?」
「アイリは美人ですし、時々変な客もいましたよ。でも、客だけじゃない」
「と逝うと?」
「シノワって出展者が、彼女のブースに入り浸ってた。彼はナルシストで、女性関係も派手だった。かなーり押しも強い」
「今日はいますか?」
「そのハズでした。彼は、鍛冶職人で刀や短剣やおしゃれ包丁も作る。実演販売もしてて、客ウケは抜群でした。でも日本橋の後、急に消えた。時々そーゆー出展者はいますけど、アイリの誘拐を考えると…彼も調べたもらった方が良いカモしれません」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、ミユリさんは新橋鮫に電話スル。
「あ、鮫さん?ミユリです。今、シノワってナルシストを探してるの。でも、住所が不明で…」
「へぇ。でも、また電話くれるなんて嬉しいな。調べようか?」
「いいえ、大丈夫。多分、家は見つけたわ。管理人さんが入れてくれたの」
「それで?」
「誘拐されてる」
第3章 マスターキーとの再会
超高級マンションだw
アキバじゃナイけど都心の何ちゃらヒルズ高層階のワンルーム。
窓の外に広がる、関東平野の先に夏空を背負った富士山の雄姿。
こんなトコロに1人で住んでるの?シワノ?
「テリィたん、久しぶり。アキバ案件だから貴方と会いそうな気がしてた。ミユリ姉様も御機嫌よう」
あ、2人住まい?メイドと?御見逸れw
彼女は"マスターキー"。あらゆる電子錠を解錠する総参謀部情報部の精鋭スパイだが…メイド服を着てるwヲタクなんだ。惜しい←
で、僕は彼女に色々と貸しがアルw
「マスターキー、久しぶりの東京勤務で大はしゃぎだな?例の北海道全土を買収スル"赤い北海道作戦"はどーしたの?頓挫?」
「う。実はコロナの影響で…」
「マスターキーのメイド服、可愛い。で、札幌"ゆるぷわ"のキャラちゃんには顔出してくれてるの?私の顔、潰さないでね?」
僕とミユリさんのワンツーを食って、思わずヨロメくマスターキー。
ところで、ワンルームの壁と逝う壁にはアイリの写真が貼ってアルw
全部、女王様スタイルだょ壮観←
「コレだけ派手に外貨を使いまくるシワノはマサカ中国雑技団のナイフ投げナンカじゃナイょな?政府高官の御曹司系?豚だけど」
「豚?」
「貢ぎ豚ょ。ダメじゃない、マスターキー。御主人様が夢中のメイド服なんでしょ?女王様なんかに浮気されないよう、御主人様の相手は貴女がしなさいょ」
うなだれるマスターキー。
精鋭スパイの見る影ナシ。
まぁ彼女に罪はナイのだ。この手の外交官キッズの放蕩ぶりは大陸の国に限らない。その度に北の大地から呼ばれる彼女も被害者だ。
下界からパトカーのサイレンが響く。
どうやら新橋鮫がやっとお出ましだ。
僕はマスターキーに急ぎリクエスト。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
終電間際の地下鉄。
ドアを1つズラして、示し合わせたように飛び乗って来る2組のカップル。
夏だと逝うのに、全員が頭からフードを被りサングラスに大きなマスク。
この時刻に都心へ向かう路線は空いている。
フードを被ったママ、お互いを見つめ合う。
やがて、男と女が進み出て隣同士に座る。
残された男と女は、距離を置いたママだ。
「おいおい!最後にちゃんと寝たのはいつ?大丈夫?あ、顔は上げズに答えて」
「貴方は…誰なの?」
「アキバのヲタクでテリィと申します。プリペイド携帯のSIMカードは処分してくれたかな?あ、ホントに顔は上げナイで。君は意外に有名人ナンだ。SIMカード…」
「もちろんSIMカードは、折って処分しました。誰にも尾行されてナイし、チップも追跡出来ない。安心して」
「元気そうだ」
「うそ。ヒドいのょ、私の顔」
「えっ?」
すると、ヤニワに彼女…アイリは、座席から立ち上がって連れを振り返る。
そして、サングラス越しだけど、恐ろしい形相で、彼をユックリと指差す。
「私に近づかないで!」
彼女の声が響く。
「貴方が悪い。私もバカだった」
彼女がサングラスとマスクを投げ捨てる。
ややっ?顔に殴打と打撲の痕だ。痣と傷w
「でも、コレで終わりょ。さよなら」
イアリング、ネックレスを千切り取るように投げ捨てて…わぉ!服も脱ぐ←
見る間に黒ブラとパンティだけになり、全てのプレゼントを彼に投げ返すw
慌てて僕は、自分のシャツを脱ぎ下着姿で仁王立ちの彼女に羽織わせる。
いつもならブラボー!と叫ぶシーンだが、トテモそうは逝えない雰囲気。
「テリィたん、次の駅で降りて。女王様を頼むわ」
今まで、控えてた僕の連れが逝う。
「え?マスターキーはどーするの?」
「私は、シワノと話がある」
「わかった」
第4章 "彼シャツ"事件の顛末
「結局、シノワとは?」
「折り合いがつきました。thanks。彼は、総領事の息子で、女王様を独り占めしたくて誘拐したようです」
「ソレを、マスターキーが見つけ出して奪還したワケか」
「蛇の道は蛇。中華社会のツテで簡単に見つかりました」
「政府高官の息子に恥をかかせて、また北京から干されるぞ?」
「ちょうど上手い具合に61398部隊が作戦中だったので、対日工作に支障が出るとのロジックで抑え込みました。だから、復帰したら女王様には今まで以上に頑張って日本の青年達を堕落させてもらわないと」
「やれやれ。内気で気弱な"インセル"のコトは、少し放っておいてくれないか」
「やっと見つけた、この国のアキレス腱です。そうは逝かないわw」
「あのなー」
「…またまたアキバのみなさんには、御迷惑をおかけしました。結局、シノワはね。自分じゃナイ何かになりたかったの。"誰か"になりたかっただけなのょ」
「そう考えだしたら、アイリを手放せなくなったワケだ」
「何ゴトも、最初の一歩を踏み出すのが難しい、というお話ね」
「ヲタクになる価値もない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さて、今回も最後の最後にジグソーパズルのピースが出揃って全体の絵が見えて来る。
アイリ自体は、実はアキバの名を借り女王商売をしてただけでヲタクでも何でもナイw
この手の"女王様"は、昔は秘密クラブにいたモノだけど、今では全てがテレワーク。
実際のセックスを、必ずしも必要としない女王商売は"テレワーク風俗"の優等生だ。
コロナ下の成長株として伸び代を感じるw
一方、セキュリティの問題は深刻で、今回シノワは"外交特権"で61398部隊の助けを借り難なくマリポ女王様の正体を暴いている。
そして、こうしたネットの暗部には、各国諜報機関と共に、様々な非公然勢力が暗躍している事実をも、今回、僕達は垣間見るのだ。
シノワには密造銃売人の顔もアル。
45口径のフレーム。フルメタル。セミオートのM1911A2拳銃。
優れた3D技術で完コピされた彼の銃には、実は製造番号がナイ。
俗に"ゴースト銃"と呼ばれ、足がつき辛い上に、巷では1丁10万円程度。
使い捨てケータイがよく犯罪に使われるが、コチラにも同種の需要がアル。
で、シノワが"ゴースト銃"の売人であるコトが暴かれたのも、実はアイリのお陰だ。
彼女は、刺青を見る。
"ゴースト銃"を収入源とする大陸系マフィアは全員腹にドラゴンとガンの刺青がアル。
今回、ヤタラと関係者は増えたが、シノワの腹を見たのは…サスガにアイリ女王様だけ←
もし、女王様が死んだら間違いなく終身刑。生きてれば"ゴースト銃密売"で15〜20年。
しかし、シノワが罪に問われるコトはナイ。
"外交特権"に守られ彼は無事に出国スルw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最後に今回のささやかな"余波"の御紹介。
実は、僕は出社前に麻布の小学校でジャズを教えてルンだけど、翌朝、いつものように朝練に顔を出したら保護者様から声がかかる。
「センセ。昨夜、女の人に"彼シャツ"を着せて歩いてたンですって?」
「え?"彼シャツ"?いえ、誰かの見間違いでは(彼じゃなく僕のシャツだしw)」
「おかしいですねぇ。ウチの子が塾の補習の帰りにセンセを見かけたって言うンですのょ…」
危ねぇw
「…ってコトがあったンだょ。参ったな」
「おお。テリィ様の"彼シャツ"。私も着てみたいな、なんて」
「でも、ミユリさん。メイド服を着る以上、御主人様の心を掴むんだょね?ねぇねぇ。どんなコスプレでもしてくれるってコトだょね?ホラ"彼シャツ"とか"水着エプロン"とか…」
「バカ」
その夜の御屋敷で、僕とミユリさんとの会話は、何処かギコチない。
ふと会話が途切れた弾みにミユリさんが思い出したように口を開く。
「あ、コスプレの御希望は…"女王様"?」
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"女王様"をネタに、フィンドン女王様と貢ぎ豚達、似た志?の"インセル"達と"インセル"取込みに躍起な第五列、ハメを外した外交官キッズと事態収拾に北京が派遣した凄腕女スパイ、スチームパンクイベントの主催者などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を秋 葉原(のヲタク達)に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




