アメリカの反撃はオレンジ計画通りという感じだな
さて、日本の超大和型である紀伊級を撃沈したことで、俺達もそれらの船を建造できるようになった。
双胴船に比べれば搭載能力はともかく旋回性能などでは格段に良くなる。
そしてハワイを奪回したアメリカは反撃に出てミクロネシア連邦などの島々を奪回してグアム・フィリピン・台湾・沖縄と橋頭堡を確保して戦線を押し上げる予定であるようだ。
もともとアメリカはオレンジ計画で、将来起こり得る日本との戦争へどのように対処するかという戦争計画を立案していて、西太平洋におけるフィリピン、グアムなどを要塞化して、陸軍と海軍の兵力を前方に展開する案もあったが、要塞化に莫大な費用がかかることや、兵力の前方展開によりアメリカの行動によって日本との関係が悪化するであることはアメリカにとって好ましくないことから破棄された。
その次はカリフォルニア基地とパナマ運河への攻撃に対しての防衛をすることが重視され、即時にグアムとフィリピンのアメリカ軍を救援するために、西太平洋に出動し、日本海軍との決戦のために真北の日本列島近海へ進み、日本艦隊と決戦を行い、日本の艦隊を消滅させて制海権を握ったアメリカ艦隊が日本本土を海上封鎖し、日本を降伏へ追い込むというもの。
これはアメリカの軍部内の一部から熱烈に支持され続けたが日本軍の大幅な軍備拡張によって、アメリカ艦隊が来援するまでフィリピンなどが持ち堪える公算が少なくなり、この案も破棄される。
そして、最終的には一度は陥落する西太平洋のフィリピンやグアム、ミクロネシア諸島などを、ハワイを起点にして飛び石伝いに占領しながら反攻していき、グアムとフィリピンを奪回するという兵站重視の長期戦案が最終的に残った。
もっとも、潜水艦の発達によって通商破壊が容易くなるとともに、戦艦を攻撃機や爆撃機などの航空機でかんたんに撃沈できる様になるということ、更に超兵器の出現まではまったく予測されていなかった事もあって、日本の空母機動部隊と超兵器戦艦がアメリカ太平洋艦隊に壊滅的な打撃を与えたことでアメリカはカリフォルニア基地での防衛を余儀なくされていたのではあるが。
「可能であれば即座に日本本土へ向かい無益な戦いを続けるのをやめさせたいところではあるのだが……」
共産主義を良いものとする統制派軍人連中さえ倒せば、天皇陛下の玉音放送で日本を降伏へ導くことはできそうな気がする。
俺がそう言うと美月くんは苦笑した。
「でもそれは難しいとおもいます。
今までアメリカ相手にずっと勝ってきていますからね」
「たしかにそうだな」
問題は大日本帝国正統政府の今までの勝利によって日本に共産主義が素晴らしいと思うものがどのくらい広まってしまったかではあるだろう。
そしていずれにせよマーシャル諸島やトラック泊地を放置して日本本土に向かい、ハワイを再び占領されても困るから南方作戦に参加するのは当然なのだがアメリカの対日方針が陸軍と海軍で食い違っているのも頭が痛い。
日本本土へ直行されると陸軍にはほとんど出番がなくなるがそれによって発言権がなくなるのは困るからフィリピンなどをきっちり取り戻す必要があると陸軍は言うわけだ。
単純に考えて海軍的には潜水艦を多量に製造して日本の輸送船に対しての通商破壊を徹底すればそれで済む話なのだがそれでは”ゲーム”として盛り上がらないことこの上ないので、アメリカ海軍がそういう提案をすることもないけどな。