日本へ戻るためにパナマ運河を通過するのだが幅の成約があって怖いな
さて、イタリアに続いてナチスドイツの降伏により枢軸国が消滅したことで、俺達はようやく日本本土奪還のために日本へ向かう事ができるようになった。
「ようやく日本へ帰ることができそうだな」
俺がそういうと美月君が嬉しそうにうなずいた。
「イギリスも悪くはありませんが、やはり日本が一番ですからね。
食事とか寝具とかお風呂とか飲み水とかその他諸々含めて」
美月君のその言葉に俺は苦笑してうなずく。
「確かにな」
もっともイギリスやフランスなどはナチスドイツに変わって、ソ連帝国と引き続き戦わないといけないので、日本へ向かうのは俺達だけだが。
そして戻る方法としてはこちらへ来たときのように、エジプトのスエズ運河経由で紅海からインド洋を経由して行く方法もあるのだが、今回はパナマ運河経由でハワイを目指すことにした。
「パナマ運河経由のほうがおそらくは早いし安全だろう」
俺がそういうと美月君はうなずいた。
「大日本帝国政党政府は東南アジアや太平洋の島々のほとんどを制圧してしまっているようですしね」
「アメリカがイギリスへの支援を優先したとはいえやはり日本の軍事力は侮れんからな」
ソ連は講和した日本に対して直接中国を攻めることはさせず、インド方面からのアメリカやイギリスの中国国民党への物資の補給路を断つように命じたこともあって、日本陸軍は東南アジアからインドに向けての進軍を行ってビルマを占領し、エナンジャウン地方の油田を得たがそれをうまく生かせているとは言えない状況でもある。
一方、イギリスほかヨーロッパ各国の窮地もあって欧州戦線の優先や、日本海軍の戦力が予想以上に強力であったこともあって、アメリカはミッドウェイ島やハワイ諸島を失陥し、アメリカ西海岸での防衛を余儀なくされていた。
だからミッドウェイ島やハワイ諸島の奪回を手助けするのが俺達の役割だ。
そして急がないとパナマ運河が攻撃を受けて運河の航行が不可能になる可能性もある。
巨大潜水空母をもってパナマ運河を攻撃! などということをしなくとも通常の空母の艦載機で攻撃は可能だからな。
とは言え日本海軍にとっても今までは自軍が優勢であってアメリカの東海岸を占領するためにと、無理にパナマ運河を壊す必要はなかった。
だが、ナチスドイツの降伏によってアメリカの大西洋から太平洋への戦力移動が確実となった今ではそう言っていられないだろう。
俺達は英領バミューダの基地で補給を行った後にパナマ運河に進むが、パナマ運河を通航することができる最大の船舶サイズは幅が32.3mまでだから双胴船など巨大船は無理だし、大和級と長門級も幅がでかすぎて通れない。
”アメリカには大和と同じ大きさの戦艦は作れない”といわれアイオワ級戦艦でも32.971mなのはそう言ったことが理由で、ソ連や日本などの超大型艦艇との戦いは分が悪い状態でもあった。
もちろん空母は赤城や加賀ならばパナマ運河も通過できるし、戦艦でも金剛型や扶桑型であれば戦艦も大丈夫だが最近はでかい船に乗りなれているせいで、いささか不安ではある。
と言っても遠回りをするわけには行かないので、パナマ運河通過に際しては金剛型戦艦2隻に加賀型空母4隻で行くことにし、金剛型に関しては対空機銃や高角砲、対空ミサイルなどで対空能力を上げることにした。
運河の狭い地域を航行中に空母からの爆撃機による急降下爆撃を受けても困るからな。
そして予想通りガトゥン関門へ抜ける水路の途中で敵航空機による攻撃があった。
「烈風グリフォン改を至急発艦!
迎撃させよ」
「烈風グリフォン改、至急発艦してください!」
そして危惧したとおり大西洋をガトゥン湖に登っていく水路の幅が一番狭く身動きが取れない状態での航空機攻撃を受けたが、幸いなことに大日本帝国正統政府軍の航空機は零戦系統や97式、99式などの俺たちから見れば旧式な機体がまだ主力でさほど強力ではなかったので、烈風グリフォン改などをもってすれば叩き落とすのはさほど困難ではなかった。
そして艦載機を失った空母部隊は我々が太平洋に出る前にハワイに撤退したようだ。
「無事パナマを通過できてよかったですね。
司令」
美月くんが笑顔でそう言ったが全く同感だった。
「ああ、最悪干上がった水路で身動きが取れなくなるなんて可能性もあったことを考えればぞっとしないな」
大日本帝国正統政府軍にせよソ連帝国軍にせよ、空母の艦載機に関して今の所そこまで怖くはないが、戦艦に関して言えば結構注意が必要だろう。
それはともかくハワイを早く奪還しなければな。




