航空戦艦紀伊を使いシンガポール沖でソ連軍の追手の戦艦を撃沈したよ
さて、日本で社会主義を目指す統制派によるクーデターが成功してしまい、日本はソ連と和睦したことで北海道や樺太、クリル諸島は失ったもの、本州・四国・九州・沖縄・台湾と朝鮮半島に関しての領土保持は認められ、主権国家としての日本政府の存続は達成されたのはまだマシと言うべきであろうか。
そのころナチスドイツはオーストリア併合後ドイツ系住民保護を名目にチェコスロバキアに進軍しこちらも事実上併合した。
ハンガリーは独伊同盟に参加し、アドルフ・ヒトラーはさらに、ポーランドへ軍を進めてあっという間にポーランドの首都を陥落させ、ヨシフ・スターリン率いるソビエト帝国とポーランドを分割して占領した。
この時まではナチスドイツとソ連帝国の仲は悪くなく技術協力なども行われていたのだが、お互い元々は不倶戴天の敵とみなしていたアドルフ・ヒトラーとヨシフ・スターリンは北欧を巡って対立しデンマークやノルウェーをナチオスドイツが占領下においたのに対しソビエト帝国はフィンランドに侵攻したが、伝説のスナイパーのシモ・ヘイヘが史上最多の確認戦果1542名射殺の記録を残した活躍などもありソ連はフィンランドを獲得することができなかった。
これはソ連の中国大陸での戦闘が思ったよりも長引きしかも、大きな損害がでて長引いていたことも大きい。
実際に史実の”日中戦争”でも南京占領までの日本側の戦死者はおそらく2万人程度でそれほどでもなかったが最終的には44万の戦死者が出ている。
無論中国側の損害も大きく300万人以上の戦死者がでたとされるし、非軍人にも700万人の死者が出たとされる、ただしこれはゲリラなども含まれるので完全な民間人とみなしていいかどうか微妙でもあるのだが。
しかし、ソ連帝国の兵力は大日本帝国を遥かに上回ったことで中国側の損害は現状では更に大きいが、ソ連の兵力や兵站にも大きな打撃を与えた。
中国軍は黄河や揚子江など堤防を爆破させて自国の人民ごとソ連軍を水で押し流そうとし、堅壁清野での焦土作戦で都市周辺一帯が焦土化されるとなると、さすがのソ連兵も戦っている相手が普通でないことに気がついたが後の祭りである。
さらにソ連兵を悩ませたのが中国のゲリラ兵と疫病である。
山岳を根拠地とする農村ゲリラ戦術はソ連兵を悩ませ、それを一般の農民が支援することで山岳地から勢力を拡大して都市が中国側に奪回された場所もありそれをまた取り戻す事を繰り返し、更に中国南方の伝染病にソ連兵は免疫を殆ど持っていなかったこともあって兵士はバタバタ倒れ、ゲリラと伝染病のダブルパンチにソ連兵は疲れ果てていた。
それでもソ連は中国政府を押しつぶしつつあるように見えるという状況である。
一方我々は同盟国イギリスを頼って現在シンガポールへ向かっている。
日本の社会主義化を進めたい統制派であっても皇族へ刃を向けるのは流石にためらいがあったためなのか、我々の日本からの脱出はスムーズに行ったが、ソ連海軍が我々を放置してはくれないだろう。
そしていつものごとく唐突にコンソールが開いてミッションが提示されたのだ。
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【ミッション】ランクD
目標:超弩級戦艦ペトロバブロフスクを撃沈せよ
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それとともに非常サイレンが鳴った。
「美月くんソ連海軍の追手が来たのか?」
俺の言葉に美月くんがうなずいた。
「はい、北方より戦艦・航空母艦を含むソ連艦隊がこちらに接近中です」
俺は少しだけ考えすぐに指示を出した。
「天鳥船と天地丸に連絡しあちらとは離れ、我々でソ連艦隊を迎撃するぞ」
俺の言葉に美月くんはうなずいた。
「了解です提督!」
敵が戦艦だけならば戦艦の長門で迎撃するのだが、敵に航空母艦を含むとなると長門型同型艦の航空戦艦仕様である紀伊の方が良いか。
航空母艦の加賀は80機の航空機が搭載できるのでたしかに強いが接近されるとやばい。
そしてソ連戦艦の速力が遅いとは限らないという問題もある。
俺は駆逐艦”島風型”の駆逐小隊から航空戦艦”紀伊”へ乗艦を変更した。
まずいつもどおりエンジンとボイラーを強化して速力は27ノットまで引き上げる。
武装は主砲45口径41cm連装砲2基を45口径43.2cm砲連装砲2基に交換し
残りの
50口径14cm単装砲9門
40口径12.7cm連装高角砲2基
25mm連装機銃10基
はそのままでもいいだろう。
強化パーツとして
艦橋機能も強化しつつ音波探信儀、電波探信儀、電波照準儀、急速前進と急速旋回の強化パーツも装着。
紀伊は後ろ半分が航空甲板になっており、加賀の半分で龍驤と同数の40機航空機を搭載できるので零戦五四型20機、天山一一型と彗星一二型を7機ずつ、瑞雲を6機搭載して敵艦隊の迎撃に出ることにした。
あちらの主砲が本来の性能であれば、主砲の打ち合いでこちらのほうがアウトレンジから攻撃できるはずだが……これはあまり甘く予想しないほうがいいかもしれない。
「よし速やかに出港せよ。
両舷前進最大戦速!」
「両舷前進最大戦速!」
「偵察機の彩雲を発艦させよ」
「了解しました。
偵察機発艦します!」
そしてしばらくして無線での報告が入ってきた。
『テキカンタイミユ、コウクウボカン1、センカン1、ジュンヨウカン2、クチクカン16』
「どうやら敵艦隊は以前と同様の編成のようだな」
俺がそう言うと美月くんはうなずいた。
「そのようです」
「では残りの航空機も戦闘機・爆撃機・攻撃機の順に順次発艦せよ、目標は敵戦艦・航空母艦とその搭載機!」
「零戦五四型より発艦開始してください!」
航空甲板からカタパルトで零戦が射出されていき編隊を組んで敵艦隊向けて飛んでいきそれに爆撃機・攻撃機も辻瑞していく。
『ワレセイクウケンヲカクホセリ』
という無線に続いて
『ワレ、テキコウクウボカンヲゲキチンセリ』
という無線も入ってきた。
しかし流石に戦艦はしぶといらしい。
「目標、敵戦艦!
敵艦が射程に入り次第、1番2番主砲、撃ち方始め!」
「てっ!」
”ズドォッン!!”
45口径43.2cm砲連装砲2基が火を噴き、その砲弾は敵戦艦へ命中して、すでに魚雷攻撃でダメージを受けていたらしい
「敵艦への着弾を確認。
敵戦艦撃破しました!」
「ふむ、今回は一方的に撃破できたな……」
「はい、よかったですね。
提督」
そして敵の旗艦である戦艦と航空母艦を撃沈したことで敵艦隊は撤退した。
「これでシンガポールへ寄港できるか」
俺がそう言うと美月くんが嬉しそうに答えた。
「そうしたら久しぶりに陸で過ごせますね」
「ああ、たまには陸の上でゆっくり休みたいからな」
イギリスまでの道程はまだ遠いがしばらくはソ連軍も手出しはしてこないだろうか。
もっともソ連に協力する国の艦艇やドイツの艦艇と戦うことにはなるかもしれないが。