共産主義を支持するクーデターで日本が共産主義者に支配されてしまった……
ソ連軍の列車砲による大湊への攻撃で東北の主要海軍基地である大湊は陥落した。
とはいえ俺たちが大型ホバー強襲揚陸艦を破壊したため東北への上陸は遅れているようだが。
俺たちは横須賀になんとか辿り着くと大型ホバー強襲揚陸艦を破壊した功績により新たな勲章を授与された。
「これはソ連軍の青森上陸を遅らせた英雄に対する国民の総意だと思ってくれたまえ」
「ありがとうございます。
一層の奮闘を約束いたします」
「うむ、今後の活躍を期待しているよ」
これにより俺は新たに戦艦の長門、航空戦艦の紀伊、空母の加賀、巡洋艦の利根、駆逐艦は特殊仕様の双胴駆逐艦に、航空機搭載可能な潜水艦の伊400への搭乗が可能になった。
「長門は速度も早くて大型砲塔が搭載できるし、加賀は航空機を80機積める、紀伊や利根も航空機搭載能力が上がっているし、だいぶ戦力は上がったかな」
美月くんは双胴駆逐艦の仕様書を見て首を傾げているが。
「しかし2艘の駆逐艦をつないだ双胴駆逐艦ですか……」
「双胴型ならば水面下の船体形状を細長く出来ることから巡航速度を高くすることができるし、積載量も増えるから悪いアイデアではないと思うよ」
「その代わりに旋回性能や燃費は大きく落ちますよね」
「確かにそうだな」
そんな事をしているときに日本の首都東京でソ連との和平派で共産主義に共鳴する若手将校がクーデターを引き起こした。
「貴族の重臣たちを皆殺しにしろ!」
「大衆へ政治参加を容認しろ!」
それに対し陸軍皇道派尚の荒木貞夫・真崎甚三郎弟で元海軍少将の真崎勝次などがクーデター鎮圧を図ったが失敗。
陸軍ではこの世界では殺害されなかった統制派の永田鉄山が政権を握り、515事件の実行犯であった古賀清志・三上卓などの海軍将校もそれに同調した。
彼らはソ連の五カ年計画による成功に刺激され社会主義国家を目指し、皇族、華族及びその勅任議員によって構成され、解散も選挙もない貴族院の存在に憤っていた。
このクーデターに対して皇族・家族たちは天皇家の海御座船として作られた”天鳥船”と”天地丸”を用いて東京を脱出することになった。
永田鉄山が首相となった後、政府はソ連に休戦を申し入れ、日ソ休戦協定が締結され、樺太と北海道の占領、賠償金の支払、軍備縮小などが定められた。
ソ連は中国国民党などの抵抗が予想以上に大きく中国南部での焦土作戦によって甚大な被害を出しており、これ以上の日本との戦争継続を良しとしなかった面が大きいようだ。
とはいえ協定は日本政府側にとってかなり過酷であったが、本州・四国・九州・沖縄台湾と朝鮮半島に関しての領土保持は認められ、主権国家としての日本政府の存続は達成された。
ソ連は朝鮮半島での日本軍の山岳部でのしぶとい抵抗に加えて中国に比べて貧しいこの地域を手に入れることに余り意味を見いださなかったようである。
そして横須賀を脱出した我々は同盟国であるイギリスに向けて進路を取ることになった。
まずはシンガポールへたどり着くことが目標だが”天鳥船”には工作艦・ドック艦としての艦船修理能力に加えて給糧艦としての機能もあるため長期の航海や戦闘に耐えられそうなのは助かった。
「我々は必ず日本へ戻るぞ」
俺がそう言うと美月くんもうなずいた。
「ええ、必ず戻ってきましょう」
長い旅路になりそうではあるが、我々は日本へ必ず戻ってくることを誓うぞ。