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なろうラジオ大賞1

小さな穴

作者: 高山小石

「最初は小さな穴だったんです」

 男は狭い取り調べ室に聞こえるくらいの声で話し始めた。

 机を挟んだ目の前に尋問官が一人座り、部屋の隅に記録係が一人座り、出入り口に見張りの騎士が一人立っている。

「うさぎ穴かなにかだと思って、中を棒で探ってみたら、なにか刺したような感触がありました。取り出してみると、パンが刺さっていたんです。何日も食べ物を探していた私はすぐに食べました。温かくておいしかった」

「不思議に思わなかったのかね?」

「後からは思いました。その時の私はとにかく空腹だったので、まだないかと、また探りました」

「またパンが刺さっていた?」

「いいえ。今度は果物が刺さっていました。水分が欲しかった私はありがたく食べて、もっとないか、さらに探ってみました」

 その後も棒には、生で食べられる野菜だの、焼いたばかりのような肉だのが刺さり、男はそれを夢中で食べたと話す。

「革袋に入った飲み物が出たあたりでおかしいと思いました。誰かがここに隠していた食料かと思っていたのに、入れてすぐの味だったので」

 温かいパンも焼きたて肉もおかしいだろ、と尋問官は思ったが、余計なことは言わなかった。

「満腹になると疲れもあり、その場で寝てしまったんです。どれくらい寝たかわかりませんが地面が揺れたように感じて目が覚めると、すっかり元気になっていた私は家に帰りました」

 男は出稼ぎ帰りに食料がつきて倒れそうなところを、穴の食料に助けられたのだ。

「穴の話を妻子にすると食べ物をお返ししようということになり、翌日、食べ物を持ってみんなで穴に行き、お礼を言いながら食べ物を入れました」

「それを誰かに話したかね?」

「はい。私たちはすぐに出稼ぎ先に引っ越すのが決まっていたので、穴のことを伝えておけば飢饉で困った時に役立つかもしれないと思い、村のみんなに話しました」

「…………」

「あの、これで大丈夫ですか?」

「ああ、よくわかった。話してくれてありがとう」

 男はほっとしたような笑顔を残して帰って行った。

「誰かが欲を出したんだろうな」

「せめて管理してくれれば、ここまで育たなかったし穴からも出てこなかったでしょうね」

 純朴な男は知らなかったのだ。

 ダンジョンと呼ばれる穴には魔物がいて、倒すとなにかしらドロップすることを。

 村のあった場所が、今では穴から出た大型魔物の巣窟になっていることを。

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