綾音のお掃除大作戦 その2
「どうしたの、お兄ちゃん?私はここにいるよ。そんな怖い目で見ないでよ……」
そうだ。僕は今、怖い目つきをしているんだ。だって、何もかも信じられないから。目の前にいる女の子が佐々木綾音であること。佐々木正が現実に生きていて、今この瞬間、佐々木綾音と話していること。世の中の事象は全て不確定である、と誰かが言っていたっけ?ということは、現実と夢が混ざるってこともあるのでは?そうだ。これはきっと夢なんだよ。綾音は失踪したきり、二度と僕と会うことがない。だって……。家出の原因は僕にあるのだから……。
「ごめんなさい」
僕はまず謝ろうとした。だって悪いのはこの僕だから。綾音はもう既に、誤った人生をスタートさせている。修復は出来ない。その原因は、きっと僕である。
「何でお兄ちゃんが謝るの?」
綾音は不思議そうに質問をする。僕は、その問いには直接答えないで、ひたすら、ごめんなさい、と言い続ける。何も意味がないことなど分かっている。きっと神様は言うだろう。今更遅い、と。形のない罪を背負うよりかは、形のある償いをする方が簡単だ。綾音にしてきたことを一生かけて償い続ける……。謝ることしかできないけれど……。
「僕にはこれくらいのことしかできないからだ。本当に申し訳なく思っている。あの時、もう少し綾音のことを考えていれば、こんなことにはならなかったはずなのに……」
綾音は、少し遠くの記憶を思い起こそうとしたが、それは意味のないことだと思って直ぐに止めた。
「話を戻そうか。お兄ちゃん。私はもう行くから。このことは誰にもしゃべっちゃ駄目だからね」
喋る相手何かいないさ。僕は君としか話さないんだ……。
「さっきの口止め料ってやつのことか?」
僕は一応聞いてみた。そもそも何を口止めするのかよく分からないので、確かめたかった。
「そう。私がこれからやろうとすることについて、誰にも言ってはいけません。分かるでしょう。私はお兄ちゃんの素晴らしい将来を築くために、色々やらなければならないことがあるの」
さっき言っていたことか……。
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止めてくれとストレートに伝えたら止めてくれるのだろうか?
ダメか?
綾音は誰を殺そうって言うんだ?
これは夢だよな?
「私、お兄ちゃんを虐めた奴を消すからね!」
そうか、あの同級生たちが殺されるってわけか……。僕が死んだら彼らは笑うだろう。彼らが死んだら僕はどうなるのだろう。笑うのだろうか?それとも……。
「また明日会おうね。お兄ちゃん!」
綾音は非常に陽気だった。幼い頃の綾音にそっくりだった。
そうだよ……。何も変わっていないんだ。少し冗談が上手くなったんだ。僕のことを気にかけてくれているだけのこと。でなかったら、これは夢ってことにしないと非常にまずい……。