永遠はない
沈黙の時
人は何を考えるのだろう
お兄ちゃん………………
私は人を殺しました
どうしてって?
分からない……
お兄ちゃんのため?
きっとそうだよね
少し整理しよう
私はお兄ちゃんが好き
お兄ちゃんは私が好き
私たちは常に同じ気持ちを共有する
お兄ちゃんが痛い時は私も痛い
お兄ちゃんが嬉しい時は私も嬉しい
お兄ちゃんのことを思って苦しむのならそれは私の本望なの
人は人を傷つける
人は互いに傷を癒し合う
お兄ちゃんの傷を癒せるのは
私だけなんだよ
人は皆お兄ちゃんを痛めつける
お兄ちゃん優しいもんね
人は皆自分より下の人間を作りたがる
お兄ちゃんは底辺に生きているからね
ごめんね…………………
別に悪いことじゃないよ
有能と無能
確率って二分の一
神様の選別だから仕方がない
でもお兄ちゃんは特別なものを持っている
何よりも貴い
何よりも脆い
グチャグチャと頭がかき乱されていく
このままやめてしまおうか
二人で行こうよ
そうだ、もう決めたんだ!
もう一度最初からやり直そうよ
今度生まれ変わった時はきっと
優れた人になるのだから
かっこいいお兄ちゃんを見てみたいんだ
これって私のワガママなのかな?
ごめんね………
本当はきちんと確認するべきなんだけど
お兄ちゃんはもう人じゃないんだから
このへんてこりんな運命を変えられるのかな?
私がやればいいのかな………
今度は誰を殺せばいいの?
そんなに簡単じゃないよ
地球人を滅ぼすより難しいと思うの
ごめんね……
ごめんね……
お兄ちゃん
愛してるって言って?
もう何も言わなくていいから
抱きしめるだけでもいいよ?
ねぇ
お兄ちゃん
愛してるよ
私ってすごい真っ黒なんだ
知り合った人を皆地獄へ連れていく
みんな夢だと思ってるみたいだけど
これは現実?
破産?
自殺?
私いつも笑ってるんだ
人の不幸に支えられて生きていく
そのうち殺されるかもね……
そうしたらお兄ちゃんの気持ち
少しは分かるのかな……
痛い?
何も感じない?
よかった!
さよならって
言っちゃだめだよ……
静かに手を振って
いなくなっちゃダメだよ
そんな悪いお兄ちゃんには
愛のオシオキだよ……
泣いてなんかないもん……
お兄ちゃんの血が目に入っただけだよ
ほら
もう一回私のことを見てよ
もう一度最初からやり直そう
最初から
私が家出する前?
もっと前だね
お兄ちゃんが私に告白した日?
もっと前の方がいいよ
私が生まれた日?
そもそも私がいなかったら
お兄ちゃんは苦しまなかったね……
私はいいよ
怖くなんかない
私の願いはお兄ちゃんの幸せ
お空にいたって
見守ってあげる
そうだ!
太陽になってお兄ちゃんを温めてあげる
悲しいの?
ありがと
お兄ちゃん優しいね
それじゃあ……
お兄ちゃんが生まれた日に戻ればいいんじゃない?
そこからやり直そうよ
私とお兄ちゃんは双子
そうすれば最初からお兄ちゃんを守れる
私が秘密基地を作ってね
お兄ちゃんと一緒に住むの……
お兄ちゃんは何もしなくていいんだよ
私のことを見て
綾音って呼んでくれればいいの
簡単でしょう?
他のことは全部私がやるから……
それならいいでしょう?
「死んじゃったね!お兄ちゃん!」
綾音の可愛らしい瞳は、踏みつけられた卵のように歪んでいた。ほとばしる血の涙を一つ一つ丁寧にすくっては、はぁ……、と吐息を漏らしながら舌に絡ませた。