異の非7話 「はじめての非日常」
異能力者の非日常、7話目です。今回でやっと非日常っぽいことが起こる?というかあります。では、ごゆっくりどうぞ!
自転車をこぐスピードを上げることも下げることもなく、一定のスピードで俺は家へ帰ろうと帰路につく。すると、自分の家に着く前の道路にある信号機(歩行者用、自転車用の)が視界に入った。ここの信号を渡って言った先に俺の家があるのでここは必ず通るいつもの道だ。その信号はチカチカと点滅していて、よく見れば青信号だった。
「(スピード上げれば行けるか?間に合わないこともなさそうだけど)」と思ったのもつかの間、信号機の色が赤に変わったのが見えた。
「(あ〜あ、赤になっちゃったか。まぁいいか。別に急いで帰る必要もないし)」
と少し残念な気持ちを気にしないようにしつつ自転車を止めて信号機付近で止まり、俺はポケットから携帯を取り出して時間を確認することにした。
「(4時30分か。ぜんぜん早いな)」
いつもよりも帰る時間は幾分か早い時間帯だった。携帯をポケットにしまって、特に意味もなく顔を上げて前を見た。するとそこには、
「……ん?(あの後ろ姿。あれって遠坂か?)」
なぜ今の今まで気付かなかったのか遠坂レイナこと変人が4、5メートル前に立っていた。どうやら後ろにいる俺には気付いていないらしい。
目の前の彼女はひどく落ち込んでいる様子だった。それもそのはずだ。なぜなら彼女は今日、転校初日にあんな意味不明な発言をしたのだ。周りの奴らから見ても変人だ。
つまり、彼女は転校初日にクラスから浮いてしまったわけだ。ざまーみろとしか思えない。
え? 俺? 俺はすでにちょっとクラスから浮いているのでたいして周りの反応、態度は変わっていなかったよ。……悲しい。
あ、今更だがあの後あいつは転校初日の最初の授業に遅刻してめちゃくちゃ先生に怒られたらしい。俺は保健室で数時間寝て過ごした。
そんな、今日のことを振り返り思い出していると、目の前で信じられない光景が映った。
「(……え? あいつ何して……)」
そこには、「は?」
赤信号にもかかわらず道路を渡ろうと歩き出している彼女の姿があった。別にそれだけならそこまで驚かない。だが、それだけじゃなかった。
彼女の右方向からトラックが走行してきていた。
「(え?まじで?こんな状況ってドラマとかアニメでしか見たときないし、起こらないと思ってた!)」
目の前で誰かが事故にあいそうになっているなんていうとんでもない状況はアニメやドラマだけで現実ではまず遭遇しないと思っていた。
だが、いくらそんなことを考えても目の前で起ころうとしている出来事は変わらない。彼女はというと、下を向いていて、自分が今まさに死の危機に直面しそうになっていることにも気づいていない様子だった。トラックの運転手はというとやっと目の前にいる人の存在に気付き、慌ててブレーキを踏もうとしている。まあブレーキを踏んでももう手遅れだろう。
だが瞬間、時が止まった。
いや、正しくは時が止まったように見えた。
俺には自身の周りがまるでスローモーションにでもなったようにゆっくり動いているように見えた。
俺はただ「なんだこれ?」と口にした。
目の前の彼女に少しずつ確実に近づくトラック。
彼女はこのままだと確実に死ぬ。
そう俺は確信した。
俺は自分の日常を捨ててまで誰かを助けることなんてできないし、そんな勇気もない。
なのに、なのに……。
俺は何故か迷いなく地面を蹴っていた。
そして、迷いなく彼女の背中に手を伸ばしていた。なぜか、異能の力まで俺は使っていた。
「(なんでこんなことしてんだ俺?)」
と自分の行動に理解ができないまま俺は彼女の背中を押し、突き飛ばしていた。
瞬間、スローモーションで静かだった世界に音と動きが戻る。
そして、俺を右方向から鋭く、今の今まで生きてきた中で感じた時のない鈍い痛みが襲った。
「ゴキッ!!」という嫌な音とともに俺は道路に吹き飛ばされあっけなく意識を失った。
意識を失う直前、俺は自分がなぜ彼女を助けたのか?自分の行動の不可解さについて一瞬考えた。
どうでした?笑
非日常っぽかったでしょうか?
交通事故って非日常じゃないですかね?笑
でも、自分の目の前で同級生が事故に遭いかけるっていうのはかなり非現実的だと思って書いてみました。