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鬼伝シリーズ  作者: 春ウララ
人鬼伝~INTRODUCE~
15/29

EX

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 ______私に大層な言葉はいらねえよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 福岡県のとある神社。

 上鬼柳瑠花かみおにやなぎるかはその神社の瓦屋根の上でタバコをふかしていた。東京からバイクをノンストップで飛ばし日の変わる前にどうにか着いた神社は夜間の一般開放はされておらず、瑠花るかは足音をたてず一足飛びで屋根に上り、侵入に成功したのだ。

 上鬼柳瑠花はタバコを屋根に揉み消すと、ひとりでに話し出した。

 

 「出てこい、田霧たきり上鬼柳瑠花かみおにやなぎるか"様"が来てやったぞ」

 

 瑠花は、暗闇へと命じる。しかし、何も起こらない。

 誰も答えない、発した言葉は澄んだ空気に流れる只の音となって風に流れる。

 

 ______久しいな、化物。まだ生きておったのか

 

 「相変わらず嫌味な女だ」

 

 誰もいない、何もいない。"何も現れないのに"。

 されど上鬼柳瑠花は後ろを振り返り、屋根の一点を見つめ言葉を続ける。

 

 「時代遅れの着物だな」

 

 ______女神じゃからなぁ。わらわは

 

 「そうかよ」

 

 ______ 化物。何故わらわの国に来たのだ?

 

 「テメェに教える筋合いがあるか?」

 

 ______堂々廻りじゃな・・・・・・はて? 人間の色恋沙汰は退屈せん、故に。化物が人間の、童子を気にかけるとなると殊更に気味がよさそうじゃのう

 

 「"視る"んじゃねえよ、耳年増が。幾つの女子だテメェはよぅ 」

 

 ______貴様らを創世した時より居るわらわに向かってなんと口の聞き方か。にしてしまおうか?

 

 一迅の風が吹く。瑠花るかを圧す様な突風が吹くも、瑠花は微動だにせず、屋根に胡座をかいている。

 

 「出来るものならな、田霧たきり。私は"抵抗"するぞ」

 

 瑠花が、右手を軽く払うと。逆に風が吹き、瑠花を圧していた風は引き裂かれ、消える。

 

 ______変わらんのう、化物。大陸の神より得た力を私欲のために振り回す。お主は大地獄いきじゃのう。

 

 「サタンに、借りがあるから平気だぜ。おっとお前らの国では閻魔大王か?」

 

 ______して、化物、鬼の女。何故大和にきた?

 

 「探し物だ」

 

 ______"母上"に無断でか?

 

 「てめえの"母さん"の許可がなきゃ入国も出来ねえのは、500年も前の話だろ?」

 

 ______貴様は例外じゃ、それにまた良からぬモノが大陸より入り込んできてよる。

 

 「"母さん"の力も落ちたな」

 

 ______それは同意じゃ、日ノ本の国となり、わらわたちへの信仰心が薄れてきておる、嘆かわしいことよ。

 

 「"白蛇"の封印は?」

 

 ______それで来たのか、化物。

 

 「それだけじゃねえがな」

 

 ______貴様の心配には及ばぬ、

 

 「そういって、結局私と、黒姫くろひめの力で封印してやったのを忘れたのか? 女神様」

 

 ______そやつは一月も前に訪ねてきよったぞ。貴様と違い、土産を持ってなぁ

 

 「その簪か、何千年生きようが若づくりな神さんだのと」

 

 ______あやつは殊勝な子じゃ。わらわの戯れに付きおうてくれよる。次はいつぞに来ることか、わらわの心を離してくれぬのじゃ。

 

 「楽しそうで何よりだ、元気にやってくれ。そうすりゃ多少はこの国の流れも良くならぁ」

 

 ______珍しい物言いじゃな、鬼。

 心変わりの所以は件の童子か? 貴様の気にかける童子とは。わらわも会ってみたいのぅ。

 

 「・・・・・・ざけんなよ」

 

 ______ちーと、遊んでやろうか。その童子と。わらわの"風"にあてられて息があらばだがのう。

 

 「"人間"を舐めんじゃねえ・・・・・・!」

 

 瑠花は突然に、屋根の瓦を剥ぎ取り、前方めがけて投げつけた。

 投げた瓦はそのまま、屋根を転がり、地面へと落ちていく。

 

 大きな音と衝撃に、周囲がざわめき出す。

 何事かと叫ぶ声、屋根の上を見て叫ぶ声。

 そんな声が全く聞こえないかのように。瑠花は髪を逆立てて、屋根に鎮座し続ける。鬼のようにつり上がった目で、前方を睨みながら。

 

 ______いずれ、また会おう。化物・・・・・・貴様がそやつを巻き込むかどうかは、貴様の信仰心次第じゃ______


 大きな警報音が鳴り響く。

 

 「チッ、クソ女神が。こっちに来たらぜってえ殺すぞ! その着物も、簪も握り裂いて! 全身に骨が残らねえほど叩き殺してやるぞ! 田霧たきりっ!!」

 

 瑠花は、上空へと声を荒げて叫び吠えた。

 そのあまりの鬼気に、人々は恐れ、自分達の手では負えぬと110とコールする。

 

 まもなく駆けつけた警察部隊は、屋根に仁王立つ女を見つけ拘束するのであった______

 

 

 

 

 

 

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