4 寺子屋
寺子屋に着き、職員室の様な場所に案内される。
簡単な説明を受け、後は模範解答の用紙を見てくれと言われた。
「さて、よろしく頼む。」
そう言って慧音も向かいの椅子に座り添削を始めた。向かい合うように添削を始める。
「ここの生徒…なんていうか…個性的な子が多いな。」
24+47の和を求める問題の解答欄に名前が書いてある。
次の解答欄にも。
「素直にバカと言ってくれて構わない。」
慧音の声がした。あなた本当に先生?とか思っていると
「あいつは自分が馬鹿というのを分かっていない。今月で何十回頭突きを食らわせたことか」
今月って、まだ10日にもなってないよな?誰か大体予測は付くがここまでとは思っていなかった。
でも辛そうじゃないな。やっぱり先生ってのは凄い。
「どうした?手が止まってるぞ」慧音先生に咎められた。
「あっ、すまん。ちょっと考え事をしていたんだ。」
無限ループにはなりたくないので、ちゃんと添削しながら応える。
「そうか。手伝ってくれるからには早く終わらせよう。私も宴会にはいきたいのでな。」
どうやら慧音先生も宴会に行きたい様子。
「それじゃ、頑張りましょう。」
そう言って、俺は間違い多めの解答用紙に向き合った。
「もうちょっと掛かるかと思ったんだがな…。」ため息をはきながらも嬉しそうな慧音。
「二人でやればこんなもんですよ。」満足気な俺。
俺らは今、甘味処にいる。思っていたよりも早く終わったので慧音がお礼として連れて行ってくれた。
「やっぱりここの団子は美味しいな。お茶とよく合う。」
「確かに美味しいです。」
お茶を飲んで、ふぅ、と息をつく。
「けーね先生!こんにちは!」
元気そうな子供の声がした。
「おお、カイ君じゃないか。こんにちは。」
慧音先生の生徒だろうか。俺も挨拶をしておく。
「こんにちは。」
「お兄ちゃんだれ?あ、もしかして先生の彼氏?」
カイくんがとんでもない勘違いをしたぞ~!
「えっ、そ、そういうのではない!え、えーと…。」
先生、顔真っ赤です。誤解が広まるのは勘弁なので、代わりに俺が話すことにした。
「僕は彼氏なんかじゃなくて先生のお手伝いさんだよ。ねえ、慧音先生の事は好きかい?」
「うん!けーね先生は怒ると怖いけどいつも優しくて大好き!」
カイ君は元気よく答えた。店に響く声。
「今日も慧音先生は愛されてるねぇ。」
「慧音先生、いつもありがとう。」
店のお客さんたちからの声に慧音は顔を赤くしながらでも頭を下げる。
その間に俺はカイくんにこそっと耳打ちをした。
「だったら、君が慧音先生の彼氏になってあげなよ。」
「えっ!?…僕が?」大きな声で反応されてこっちも驚いた。自分の口に人差し指を当てると、小声で聞き返してきた。
「そう。君が大きくなったら。もし、君が大人になってまだ慧音先生が好きだったら想いを伝えるといい。分かった?」
「うん!あ、僕行かなくちゃ。じゃあね、お兄ちゃん!」
手を振ってカイ君を見送る。ばいばーい。
「…神楽。頭突きをさせてくれ。」 慧音がこちらを睨みつけてくる。
「へっ?何っ言ってうわなにをするやめ」
視界が真っ白になった。
寺子屋…?はっ、宴会!
「すまん…重ね重ね侘びを言う。」
「へっ?」
起きたら慧音に即土下座された。そして時計を見て、胸を撫で下ろした。
「よし、慧音。宴会に来てくれ。俺は一足先に行ってるから。」
「いいのか?」
「むしろ来い。今日は教えて欲しいことがあるが宴会で教えてもらいたいんだ。」
「…分かった。では、後に参るとするよ。」
それじゃ、と寺子屋を出て博麗神社に向かう。
一回干渉したものには無意識で干渉できるらしくすらすらと昇り降りができた。
「霊夢、ただいま。」
「あら、早かったわね。おかえり。」
霊夢はお茶の入った湯呑を持ってお萩を食べていた。
美味しそうだが、俺は既に甘味処で団子を頂いている。
「宴会の準備だ。」
この小説を書くときは、いつも東方アレンジの曲を聴いている気がします。いい曲が多いですよね。
お疲れ様です。