1 旅立ち
よろしくお願いします。
気まぐれで書くので、投稿ペースは不安定ですが…。
突然だが俺、鬼灯神楽は今これまでにないくらい緊張している。なぜ緊張しているのかは、この現状を見てもらったほうが早い。
目の前には、俺らの世界を管理するためだろうか、たくさんのモニターと椅子、そして前にちょこんと立っている老人だった。他の管理者は椅子に座り、モニターを見ている。お互い口を開かないので静かな間が続く。
この沈黙を先に破ったのは、老人の管理者だった。
「この度は、誠に済まなかった。」
どうにもならないことは察したのでこちらも無言で頷く。
老爺は頭を上げると、こうなった経緯を語りだした。要約すると、以下のようになる。
・まず、この世界への転移は誰かが起こした歪によって起こった出来事である。
・帰還手段は見つかっていない。例え「能力」を使って戻ったとして帰還直後に再転送されてしまうだろう。
・そのため、俺が以前住んでいた部屋の荷物などは取ることが不可能に近い。
・以上の点から、管理者の代表として詫びさせてもらった。
ということだった。
「話したいことは大体わかった。それじゃ、本題に入ろう。」
老爺の身体がぴくりと反応した。その意図を読み取った俺は語弊があったな、と笑って弁解する。
「別にあんた等を裁こうとか考えてるわけじゃない。俺は三つの質問に答えて欲しいだけだ。」
「我々は、出来る限りのことをさせてもらうつもりじゃ。なんでも質問してくれ。」
「わかった。じゃあ最初に…俺はどこの世界に行くんだ?まずはそれを知りたいんだ。」
「幻想郷、というところじゃ。自然が綺麗で、お主のおった世界ならば田舎の部類に入るじゃろう。
へぇ、と呟くが心の中では嬉しさで死ぬところだった。そこなら知っている。音楽を聴く程度だが、その世界についての知識なら、同じ学年で負ける気はしない。
「おそらく、言語は俺らと同じ、そしてたまに異変が起きる…。」
思わず呟いた言葉を老爺は聞き逃さなかった。目を見開き、こちらを警戒するような目で見る。
「な、なぜそれを…。」
「そんな予感がしただけだよ。そして、俺の能力は?」
これなら管理者も察しがつくだろう。
鬼灯神楽はこの世界を知っている、と。
「干渉する程度の能力じゃよ…。」
声を震わせながら教えてくれた老爺に礼を言い、この星に俺がいたことをなかった事にしてもらう作業を見た。泪も出ない。それが一番悲しかった。
「さて、やりたいことも終わったし、そろそろ行くかな。」おもむろに立ち上がり、周囲を見渡す。これが俺の現世での最後の景色か。
「そうじゃな」老爺も立ち上がり、俺の足元に魔法陣を描く。
「んじゃ、行ってくるよ。」
「ああ、行ってこい。」
その言葉を最後に世界が白くなった。
ちょっと前置きが長いですね。
次は、本編に入っていきます。