6・道具屋に力を見せましょう
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コウキ・オクムラ
SP10
『所持スキル』
【全体効果付与】Lv1
ターゲット:ポーション(消費SP5)
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スキルに変更はないか……ん?
SPが10になっている。
どういうことだ。
迷宮内でポーションを一つ【全体効果】付けてやったので、SPは残り5のはずだった。
時間経過でSPが回復するのだろうか……。
まあ一回こっきりの使い切りより、そう考える方が自然か。
SPを回復させるのに効率的な良い方法はあるのだろうか?
後でホレスにでもい聞いてみよう。
次はハイポーションの情報を見させてもらおう。
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ハイポーション
区分:回復薬
効果:対象を中回復させる
スキル:
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とはいっても、通常ポーションとほとんど変わりはないか。
小回復が中回復に変わっているだけだ。
「じゃあやるか……」
迷宮内でやったように、スキルのところに触れてみて【全体効果】を付与させてやる。
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ハイポーション
区分:回復薬
効果:対象を中回復させる
スキル:【全体効果】
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お、上手くいったようだな。
もしかしたら、【全体効果付与】は『ポーション』にしか効かないかもしれない、と思ったんだが。
どうやらポーションシリーズは一通り、『ターゲット:ポーション』のところに含まれるらしい。
そんなことを考えると、
《【全体効果付与】のLvが2に上がりました》
こんなメッセージウィンドウが現れた。
レベルが上がった……?
「スキルオープン」
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コウキ・オクムラ
SP15(MAX20)
『所持スキル』
【全体効果付与】Lv2
ターゲット:ポーション(消費SP5)
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ぬおっ!
SPが二倍にもなっているじゃねーか!
これは朗報である。
ポーションに四つも続けて【全体効果】を付与させることが出来る、ということもさることながら、スキルレベルを上げればSPも上がっていくという事実が分かったことである。
いくら【全体効果】を付けてやっても、ポーションはポーションである。
大量生産しなければ、生きていくだけのお金を得ることは出来ない。
……と思う。
「これで【全体効果】のスキルが付いたハイポーションが出来たはずだ。見てくれないか?」
「は、はい」
この時、まだホレスは半信半疑といったような顔をしていた。
ホレスは俺からハイポーションを受け取ると、見る見る内に瞳の瞳孔が大きくなっていった。
「な、なんと……! 本当に【全体効果】のスキルが付いたハイポーションが出来ている!」
「期待に添えたかな?」
「期待以上です……! これまた面妖な……果たして【全体効果】があるポーションをポーションと言っていいのか……」
ホレスはポーションの液体が入った瓶を、底から見たり目を細めて見たりしている。
ふう……。
良かった。
ちゃんと出来たものの、「あっ、そんなものですか」と失望されたらどうしようと思った。
どうやらホレスのような(見た目で判断しただけだが)有能道具屋店主にとっても、俺のスキルは珍しいものらしい。
「素晴らしいスキルを得ましたね。これだったらアイテム職人としてもすぐに名を馳せるはずですよ」
とホレスは優しげな笑みを浮かべた。
「質問があるんだが……」
「なんでしょうか?」
「【全体効果】を付与させてやったアイテムを使うと、『全体』に効果が現れるのは分かった。だが——その『全体』ってのはどこからどこまでが含まれるんだ?」
迷宮のことを思い出す。
あの時、イアン一人が飲めばジェリーやマルコム、そしてローランドにも効果があったようだ。
しかし反面、俺には効果があったように思えない。
ならば俺はイアンの『全体』には含まれていない、ということになる。
「ああ——そういえば《異人》の方でしたね。《絆の刻印》はお知りにならないのですね」
「《絆の刻印》?」
なんだそりゃ。
新しいワードが飛び出してきたぞ。
俺の質問に、ホレスは嫌な顔一つせず、
「《絆の刻印》を結んだ者同士の間でパーティーを組んだ、と見なされます」
「見なされる? ということは、指輪……だったり、なにか共通のものを持ち歩くということなのか」
「う〜ん……少し違いますね。《絆の刻印》は手の甲に彫られることになります。あっ、とはいっても物理的に彫るのではなく、魔法によって手の甲に表出させるだけなんですが」
「魔法——ということはイアン達はその……魔法的ななにかで《絆の刻印》を結んでいる、ということなのか」
首を縦に動かすホレス。
手の甲か……。
そういや、注目していなかったな。
イアンやジェリーは同じ《絆の刻印》を手の甲に結んでいる……ということなのか。
「つまり《絆の刻印》を結んだ者同士——そのパーティー同士なら、【全体効果】が得られるということなのか」
「そういうことですね」
「【全体効果】が得られる、というのが《絆の刻印》のメリットなのか?」
「いえ……それは副次的なもので。というより【全体効果】のスキルがあるアイテムなんて、この世で片手で数えられるくらいしかないですよ」
「片手……!」
「ええ。少なくても私はまだお目にかかったことがありませんね」
なんということだ。
なら【全体効果】のアイテムを大量生産出来る俺は?
……あの神様。
ユニークだけではなく、チートなスキルを授けてくれたみたいだ。
ホレスの説明を聞いてそう思った。
「なら《絆の刻印》のメリットは?」
「モンスターを倒した時に経験値の分配……ですね。本来、トドメを刺したものしか経験値を得ることが出来ません。それが《絆の刻印》でパーティーを組んだ者全員に分配されることになります」
「それは凄いじゃないか」
「ええ……ですが、四人ならば経験値が四等分されることになります。なので無闇矢鱈にパーティーを組む人数を増やすのは、一人一人の得られる経験値を減らすことになってしまいます」
「ああ——だからさっき、パーティーの人数を無闇矢鱈に増やすことは経験値稼ぎの非効率になる、って言ってたのか」
「理解が早いようで助かります。その他にもパーティー同士なら、お互いの場所が分かる……というメリットもありますね」
あの時、俺がイアン達のパーティーに入ると言ったら《絆の刻印》を結ぶことになったのだろうか。
経験値分配の話はともかく、お互いの場所が分かるのは俺にとってはまずい。
一人で隠れて旅行に行けないじゃないか!
気紛れに旅行に出掛けたり、美味しいものを食べに行ったりする。
それが俺の考えていたスローライフなのだから。
やはりパーティーに縛られることは俺にとっては良くない。
「ちょっと待てよ……」
経験値分配の話を聞いて、一つの懸念事項が浮かんでくる。
「経験値が分配、ということは【全体効果】も等分されるんじゃないのか? 四人パーティーの一人が【全体効果】のポーションを飲んだとして、効果も四等分ってなったら微妙じゃないか?」
「う〜ん……そればっかりは検証してみないと分かりませんね。イアンさん達に聞けば良かったですね。まあ知り合いの冒険者の方にでも試してもらってみます」
ハイポーションに視線をやって、そう言うホレス。
例え等分されたとしても、この世界では希少な【全体効果】のポーションなんだ。
どちらにせよ、役に立つことは間違いないか。
「成る程な……ありがとう」
「いえいえ——それでこのハイポーションを買い取りたいのですが?」
「買い取り? ああ、金か」
お金は重要である。
スローライフをするにしても、お金がなければ金策に走り回ることになってしまうだろう。
それは俺の考えていた理想的なスローライフではない。
異世界に来てちょっとしか経っていないしな。
ここは有り難く、ハイポーションを買い取ってもらおうとするか。
「どれくらいが相場なのかな」
「私が値を付けてもいいのですか?」
「ああ、そこはイアン達の紹介だから信頼するよ。ただし、その値は取り敢えず今回だけにしてもらいたいがな」
信頼しているとはいえ、長き社畜時代のせいで疑い深い性格になっている。
もしここで不当な値を付けられても、次から違う値段で売ればいいだけのことだ。
そう言うと、ホレスは顎を撫でながら一頻り考え、
「そうですね……先行投資の意味合いも含めて、これなら1000万ホープってどうでしょうか」
「それってどれくらいの価値なんだ?」
「ああ……そういえば、《異人》の方でしたね。1000万ホープあれば、平均的な一人暮らしな方なら四年は過ごすことが出来ると考えられます」
「こっちの四年ってのはどれくらいの期間だ?」
「一日二十四時間。それが一年間で三百六十五日ありまして。それが四回ですね」
「そこらへんは俺の世界と一緒なのか」
四年……。
一人暮らしならば、月20万はあったら生活していけるだろう。
ならば……ざっと一年間で250万円といったところ。
それが四年で1000万。
……ふむ。この世界の貨幣価値は、
1ホープ=1円
といったところか。
……。
へ?
「い、1000万円!?」
なんということだ。
たかがハイポーションに【全体効果】のスキルを付けてやっただけで、1000万円にもなったぞ。




