第7話
男は梟の事もあり何かと不安だったので女の厚意に甘えしばらく休ませてもらう事にしました。
しかしふと疑問に思い女に尋ねるのでした。
「君は一人でここに住んでいるのかい?」
何故ならこんな森の中で一人で暮らすにはあまりにも危険ですし、家の周りは綺麗に開かれており女の力だけでは到底難しいと思ったからです。
女は胡桃の樹皮で作られたカゴに入れられたタオルを一枚ずつ取り出し丁寧にたたみながら男の話を聞いていました。
ひと段落した所でゆっくり男の顔を見上げると少し困ったような顔をし答えます。
「えぇ、今は一人で暮らしているの。」
男は女の表情が少し曇ったので些か聞いてはいけない事だったのかもしれないと思い慌てて話を変えました。
「少し外の空気を吸いたいんだ、出ても大丈夫かい?」
女の頷きを確認するとイスに掛けてあったジャケットを手に取り男は扉を開けました。
するとどうでしょう、昨日入った森と同じとは思えないほど周りの樹々は青々と茂り幹と幹の間からは爽やかで清々しい風が吹いています。
きちんと手入れされた花壇には女に良く似合う色鮮やかな花々が誇らしげに咲いており見ているだけで明るい気持ちにさせます。
男は森の中が恐ろしく不安だったのでこんな場所があり女と知り合えた事をとても喜びました。
そして一人で暮らす女の為に何か力になりたいと考えたのです。
家の周りをぐるりと一周すると何かを思いついた男は急いで部屋へ戻り女に馬の毛がないかと尋ねました。
女はちょうど新しいブラシを作るのに用意してあった馬の毛を取り出すと男に渡して聞きます。
「馬の毛で何をするの?」
「それはまだ秘密さ。」
男は笑顔でそう答えるとまた外へと向かいました。