第6話
フワフワと真綿に包まれているような心地の良い温もりにいよいよ天へと昇ったのかと目を開けると見知らぬベッドの上にいました。
窓から見える景色は青空が見え木々が少なく森の中とは思えない様子です。
男は微かに痛むこめかみと擦りむけた膝を見て自分が梟に襲われた事を思い出しましたがどうやってここまで来たのかは全くわかりませんでした。
そして命が救われた事を喜んでいるとドアの向こうから足音がだんだんこちらへ近づくのがわかりました。
慌てて 毛布を整えると扉がギィーっと耳につく低い音を立て開きそこには今まで見た事もないような美しい女が立っていました。
「気がついたのね、よかった。これも召し上がれ。」
女はベッドの横にある小さなテーブルにスープとパンを並べると男の顔色を伺いました。
「あなたが助けてくれたのですね、もしあなたが助けてくれなければきっと梟にやられていたでしょう。本当にありがとうございます。」
男は女にお礼を言うと美味しそうな匂いに空腹だった事を思い出し挨拶も済ませぬまま堪らずスープを口へと運びました。
その美味しさに男は女が見ている事も忘れ夢中でパンを頬張りあっという間に全て平らげてしまったのです。
あまりに早く食べ終えたので女は少し驚きましたが男の姿が面白く何だか放って置けないような気になりもっと男の事を知りたいと思いました。
男はスープのお代わりを済ませ満腹になるとすっかり忘れていたと言わんばかりに自分の話を始めます。
「危ない所を助けてもらったうえにこんなに美味しい料理までご馳走になってしまってあなたにはなんとお礼を言えばいいのでしょう。父の病を治す為薬となる花を探しに森へ入ったのですがなかなか見つからず空腹で歩けなくなってしまったのです。ああ、本当にあなたが助けてくれなければ今頃どうなっていたことか。あなたに何かお礼をしたいのだけれど私には何もない。どうすればお礼ができるだろうか。」
女は男の誠実な人柄がとても気に入りまた何かあってはいけないとお礼などいいから体の具合が良くなるまでしばらくここに居るようにと言い、男の手を取り優しく微笑んでみせました。